東海大学
「リーグ戦最終節。今まで積み重ねてきたことを出そう、と臨んだ」と話すのは木村季由監督。
流通経済の勢いに対し受けに回る時間も多かったが、勝ち切ったことが成果、と評した。
これでリーグ戦6連覇。13回目の優勝を果たした東海大学ラグビー部。
だが木村監督は「優勝回数は過剰に意識していない。毎年の積み重ね」と至って冷静だ。
一方、谷口宜顕キャプテンは、近年果たせていなかった全勝優勝が懸かる大一番だっただけに「勝ち負けよりも自分たちのチャレンジに注力した」と気を引き締め直した様をうかがわせる。
そんな姿を日々見聞きしているのだろう、木村監督は「(谷口主将は)僕よりしっかりしている」と報道陣を笑わせた。
東海には、今年立てたクラブ目標がある。
『愛し愛されるクラブ』
総勢200人近くいる部員数。どうしたって、試合メンバーに関われないグレードの選手たちは、日本一への道のり、そしてその達成感をAチームの選手たちと同じようには味わうことができない。
だから、クラブ目標を設定した。
「試合会場で観客の方々が近くで見るのは、試合に出ている僕たちよりも、一緒にスタンドから見るノンメンバーだと思います。だからノンメンバーたちは、どれだけ大きな声で校歌を歌えるか。どれだけ綺麗な姿勢で、試合を見ることができるか。そして試合に出る選手たちは、結果で示す。愛し愛されるクラブになるための『メンバーとノンメンバーの約束』です。」
集合写真には、東海大の部員だけでなくこの日応援に駆けつけていた東海大相模高の選手たちも納まった
ノンメンバーの中でも中心となってチームをまとめるのが、4年生の朴淳宇(パク スヌ)選手。184cm、104kgのロックだ。
「試合で表現できるのは試合メンバーだけ。ですが試合を見にいらっしゃる方が見るのは、ノンメンバーの姿だと思います。だからノンメンバーの姿勢で、愛されるチームを作りたい。」
試合前のジャージープレゼンテーション時には、谷口キャプテンから部員全員に向け同様の声が掛けられます、と説明した。
「そのためにはまずは4年生から変わろう、とシーズン当初話をしていました。それが表れ始めたのが、リーグ戦の中盤辺りから。ノンメンバーの練習態度含め、キャプテン任せにせず上級生がもっと発信しよう、という雰囲気が出てきたと感じています。」
上級生の結束力が、苦しかった時期を下支えした。
いよいよ迎える、21回目の大学選手権。
「大学選手権まで、あと1ヵ月。メンバー23人だけが頑張るのではなく、日々の練習でどれだけ全員がチームのために体を張れるか。優勝するためには、ノンメンバーが大事だと思っています。もしかしたら、メンバーよりも大事かもしれません。なので毎回の練習で気持ちを見せていきたいです。」
『愛す』とはなかなか口にすることではない。だからこそ、愛するために練習でノンメンバーの気持ちを表現する。
『メンバーとノンメンバーの約束』を果たすための1ヵ月半が、これから始まる。