公益財団法人日本ラグビーフットボール協会は、ラグビー日本代表の次期ヘッドコーチにエディー・ジョーンズ氏を選出。12月14日、東京都内で就任記者会見を開いた。
ジョーンズHCは開口一番「よろしくお願いします」と日本語で挨拶。
続けて「2015年以降、さらに飛躍し強くなっている日本の代表ヘッドコーチができることを光栄に思います」と話し、「私が前回HCをしていた頃に比べ、リーグワンはもとより、大学・高校ラグビーのレベルにおいてもレベルアップしていることは事実です。今の日本代表は2015年以前と比べ、強いだけでなく、より国民の皆さんに愛されるスポーツ、チーム、選手たちになっていると思いますので、私の役割としてそれをますます力強いものにしていきたい。強いチームとして、しっかりとしたアイデンティティを持つチームに育てていきたいと思います」と意気込みを語った。
キーワードは『超速』。
より速く動き、より短い時間で判断し、相手よりも早くリアクションする。体格で劣る日本人だからこそ、確実なスピードアップを実現させたいと話した。
ユース世代から一貫性ある日本ラグビーを
45分間にわたる会見の中で、何度も口にした言葉がある。
『大学ラグビー』。
「日本ラグビーの基本は大学ラグビー。若い選手たちの育成に力を入れて、彼らのポテンシャルを最大化してあげる努力が必要」と繰り返した。
だからこそ「もう少し大学ラグビーにスポットライトを当てて、学生たちが『もっと上のレベルでプレーしたい』と思わせるために何ができるのか、どう変えていけばいいのか。何らかの形で原動力をつけるような工夫が必要になる」と話した。
だが現状日本では、高校は高校、大学は大学、社会人は社会人、とぶつ切りの強化システムであることにも触れる。
「一貫性をもったフィロソフィー、考え方のもとで同じように育成していくことが大事。一つのシステムの中で選手の育成に取り組んでいきたい」と言及する。
「もちろんこれは片手間ではできません。早くシステムを作り上げて、高校から大学、大学からプロ、という形でうまく育てていきたい」。例として挙げたのが、アイルランド。人口500万人ほどの小さな国だが、可能性のある選手たちを発掘しまとめ、育てるシステムを参考にしたい。
目指す『超速ラグビー』を実現するためには「日本代表だけでなく、若い世代から日本代表が目指すラグビーができるよう教育していくことが大事」とジョーンズHCは繰り返し説いた。
「チェスリン・コルビは体重76㎏。雄牛のような強さとチーターのような速さと、忍者のような機転の利く戦い方。そういった戦い方ができる選手は大学にも、リーグワンにもいる。そういった選手を見て、育てていきたい」
遡ること12月上旬。熊谷で行われたTIDキャンプ(U20)で、U20日本代表のヘッドコーチを務める大久保直弥氏は「U20を出たらすぐに代表、となれば強化システムとして外から見ても分かりやすい。だから次期日本代表HCが誰になっても、そこの繋がりは出せるように協力したい」と話していた。
この日の就任会見に同席した土田雅人 日本ラグビーフットボール協会会長も「ユース世代、高校からU20、U23と一貫性のある育成を通じて、代表の選手層に厚みを持たせることが喫緊の課題」と危機感を口にする。
エディー・ジョーンズ新HC主導のもと、日本ラグビー界にカテゴリーをまたいだ一貫性あるフィロソフィーが生まれ、それを日本ラグビー協会によって縦のラインで強固に築きあげることができれば、日本ラグビーが目指す『ワールドカップ優勝』は現実味を帯びてくるだろう。
プロフィール
氏 名: エディー・ジョーンズ
出 身:オーストラリア(タスマニア州バーニー)
生年月日:1960年1月30日
現役時のポジション:フッカー
指導歴:
1994 ランドウィック (アシスタントコーチ)
1995–1996 東海大学 (アシスタントコーチ)
1996 日本代表 (アシスタントコーチ)
1997 サントリー (アシスタントコーチ)
1998–2001 ブランビーズ (ヘッドコーチ)
2001–2005 オーストラリア代表 (ヘッドコーチ)
2006 サラセンズ (テクニカルアドバイザー)
2007 レッズ (ヘッドコーチ)
2007 南アフリカ代表 (テクニカルアドバイザー)
2007–2009 サラセンズ (テクニカルアドバイザー)
2009–2012 サントリー (ヘッドコーチ)
2012–2015 日本代表 (ヘッドコーチ)
2015-2022 イングランド代表 (ヘッドコーチ)
2023 オーストラリア代表(ヘッドコーチ) ※11月25日まで