京都産業大学
「笑っている人の方が強いと思う。」
入場時に空を見上げ、笑みを浮かべた理由を問われた三木皓正キャプテンの回答だ。
昨年は準決勝で1点差の敗戦。涙を呑んだ相手に、リベンジを果たした。
「去年の先輩たちには思い入れがあった。この試合に懸ける想いは非常に大きかったです。(三木キャプテン)」
自らの想いをチームへ伝染させた、ときっぱり口にした。
次なる相手は明治大学。大学選手権10度目となる、準決勝への挑戦が待ち受ける。
「必ず乗り越えていきたい。」
熱きキャプテンが、力強く宣言した。
***
この日、2人の1年生が大学選手権初出場を果たした。
80分間フル出場は、4番・石橋チューカ選手。
「この舞台でプレーできたことを嬉しく思います」と謙虚に言葉を紡ぐ。
フィジカルは「まだまだ」継続課題。
次の相手は重戦車を武器とする明治大学だが、そこはルーキーらしく。
「国立で明治と試合ができることに感謝して、1年生らしく体を張って頑張ります。」
一つひとつの経験を栄養分とし、まだまだ成長曲線を描く。
髪の毛を伸ばし中。「コーンロウにしたい」
後半26分にピッチに立ったのは、SH髙木城治選手。
春シーズンは先発を務めることもあったが、U20日本代表活動のためチームを離れていたSH土永旭選手(3年生)が戻ってきた夏以降は、出場機会がめっぽう減った。
久しぶりのAチームでの公式戦も「大学選手権という大舞台で自分的には良いプレーも出来たと思う。」
及第点を与えた。
次なる舞台は、国立競技場。もちろん初めて立つ場所である。
「相手は明治。でも、やります。」
恐れず、立ち向かう。
早稲田大学
試合後の記者会見。
伊藤大祐キャプテンは、めずらしく、マイクを持ったまま少し言葉を探した。
「自分たちのやりたいことが出せなかった。シンプルに(やりたいことを)出させてくれなかった京産の勝ちかな、と思います。」
その後の質疑応答でも「あんまり整理がついていない」を何度か繰り返した。
左手首に書き続けた『No.1』。
「僕自身がプレーで引っ張りたかった、という想いが今も強い。それが出せなかったのが悔しい。」
自分のプレーでチームをNo.1に、という想いが込もった証だった。
ノーサイドの笛が鳴る直前、最後の数分間は、自らの集大成であっただろう。
自身で蹴り上げたキックオフボールの落下地点に勢いよく駆け寄れば、タックルへ飛び込む。
40分を告げるホーンが鳴り、京産の選手がボールを外に出そうとするその瞬間も、全力でチャージに走った。
「コーチ陣、監督、4年生。上井草に残してきたメンバーもいる。ただただ本当に、もっとラグビーがしたかった。」
グラウンド上では見せなかった涙。
会見中、思わず目頭を押さえた。
試合後、観客席へのあいさつを終え、ベンチ前に戻ると、一人ひとりと握手を交わした。
「(佐藤)健次や矢崎(由高)が『ありがとうございます』って言ってくれて。僕を勝たせたい、と思ってくれていた。僕自身も、彼らともっと一緒にやりたかった。」
自身のプレーが勝利に直結していると理解しているキャプテン。
だからこそ、後輩たちから「勝たせたい」と思われるキャプテンになった。