東福岡「この結果が僕の成績」
粉雪が舞ったかと思えば、その数分後には太陽が顔を出す。
落ち着かない天候の中、全国選抜大会1回戦のノーサイドの笛は鳴った。
大会最多、6度の優勝を誇る東福岡。
予期していなかった結果に、膝をつく選手、涙を流す選手。うな垂れ顔を上げられない選手もいた。
グラウンドの一角で静かにクールダウンを終えると、藤田雄一郎監督は選手たちを集め、ごく小さな円を作った。
時間にして、1分ほどだろうか。穏やかな表情と声色で語り掛けた。
「これは、僕のせい。この2年間、自分が彼らに何もしてあげられなかった。この結果が僕の成績。彼らは悪くないです。」
そう、選手たちに伝えたという。
藤田監督の目を見る選手たちの中には、目頭を覆い、堪えられぬ涙を流す選手が多くいた。
体を当て続ける。ブレイクダウンにも圧力を掛ける。ディフェンスから仕掛け、ボールを取り返す。
それが当初のゲームプランだった。
もちろん、コンタクトでは戦えていた。だがボールを持った時、想像以上のミスが立て続けに起こる。
「自分たちのイージーミスが出た。チャンスを活かしきれなかったこと、チャンスの場面でのミスが敗因」と振り返ったのは、No.8古田学央キャプテン。
「精度高くできるようになるまで練習すること、その大切さを痛いほど知りました」と続けた。
今年のスローガンは『咲』。
黒地にピンク色で『咲』と描かれたチームTシャツは、今年の優しい、そして笑顔溢れるチームカラーを彷彿とさせる。
「僕たちは、土も肥料もない所から始まりました。今ようやく花壇ができたかな、という段階だったのですが、でも1回戦敗退。まだまだ、水もやれていなかった」と現在地を見つめる。
前日の集合写真撮影時には、両手で小さな『つぼみ』を作っていたが「つぼみもなっていないぐらい。花を咲かせるにはまだまだ程遠いです」と言った。
また古田キャプテンは、冒頭の「この結果が僕の成績。彼らは悪くない」という藤田監督の言葉を受け、こう切り返す。
「僕たちに経験がなかったことは事実です。ですがこの東福岡のジャージーを着たからには、やりきらないといけない。ジャージーを着たからこそ、しっかり上を目指すべきだと改めて実感しました。」
そして、つぶやいた。
「いやー、ヒガシのジャージーを・・・」
その後の言葉は、ぐっと飲み込んだ。
初めて全国大会の舞台で着た、グリーンのジャージー。
古田キャプテン曰く「めちゃめちゃ重い」という着なければ分からぬその偉大さを知り、いまようやくスタート地点へと立った。
「(花園まで)あと9か月ある。ワールドユース、全九州大会と大会は続いていきます。そのためにも、今日の負けを受けて、どう一人ひとりが明日の試合に向けて切り替えるか。それがチームの第一歩目」と、前を見据えた。