1-4位決定トーナメント②
セント オーガスティンズ カレッジ(オーストラリア)22-29 桐蔭学園高等学校(神奈川)
桐蔭学園
「オーストラリアに勝ちました!」
試合を終えた藤原秀之監督は、笑顔を見せた。
肝は球捌きにあった。
「まだまだスキルは未熟」と言いながらも、ラックを作らず小刻みにボールを放し、繋ぎ続けた『今大会用の桐蔭学園ラグビー』。
継続してトライを取りきった。
12番・松本桂太選手は「ラックを作ったら取り切れないと分かっていた」と話す
狙いは明確だった。
FWはイーブンでいけるだろう。鍵はやはり、相手の10番と15番。
「いかにスタンドオフを自由にさせないか」と前日には入念な対策を練った。
相手の10番にパスを投げさせるか、シチュエーションによっては内側に切らせたい。
相手の長所を徹底的に分析し、相手がこれまで奪ってきたトライシチュエーションを生み出さないディフェンスを講じた。
前半に12点を奪い、2点のリードで折り返すと、桐蔭学園は後半からの戦い方を変える。
ブレイクダウンに人数を割かなくなった。
理由は一つ。グレーを白にしたかった。
「過去に戦った準決勝では、途中から笛が変わったんです。ジャッカルに入ればオーバーザトップを取られました。その時の反省点から、クリーンに行こう、と(藤原監督)」
これは国際試合。笛を吹ける要素を排除した。
パイルアップで守り切った一幕
No.8新里堅志選手も言う。
「レフリーから見たら、自分たちがボールにコンテストしていない、タックラーがどいていない、と功利的に取られていたのではないか」
でも、そこまでは想定済み。だからそのレフリングに合わせるため、ペナルティを取られる要素を出来うる限りなくした。
ラックを作らないこと。
ラックに入らないこと。
この2つの策が、桐蔭学園を初めての決勝戦に導いた。
◆
「あの負けは、自分たちを変えてくれる大きなものでした。今思い出しても、悔しい思いが込み上がってくる」と涙を堪えたのは新里選手。
あの負け、とは全国選抜大会の準決勝。
7-13で敗れた。
「グローバルアリーナに来る前のミーティングでは、『勝ち上がれば大阪桐蔭さんと試合ができる』との言葉が仲間から出たんです。それを言ってくれたのは、大阪桐蔭戦で怪我をし今大会のメンバーリストから外れた、中西(康介)。あいつがそういう言葉をミーティングで言ってくれたから、みんなのサニックスでの取り組みが一段階上がった」と快進撃の源を語った。
そして掴んだ、大阪桐蔭との一戦。
「自分たちが本当に待ち望んでいた、チャレンジする場所に来ました。ワールドユースの1位・2位を決める戦いでそれができることに、感謝しています。日本一の大阪桐蔭さんを相手に、世界一を懸けて戦える。自分たちは1ヵ月前に負けて、涙で終わった。今大会、サニックスのための戦い方も準備して、それが自分たちのラグビーの新しい形になって、新しいラグビーで大阪桐蔭さんにチャレンジできる機会を掴み獲りました。桐蔭学園史上初の決勝です。最後、60分間走り切って、立てなくなってもいいような戦いをして、マックスアウトして、自分たちが今できるラグビーで大阪桐蔭さんにチャレンジしてきます」
1ヵ月前。
日本のチャンピオンは獲れなかった。
だが、いまなら言える。
「世界のチャンピオンを、今回獲れると思います」
◆
同点であっても、トライ数差で決勝戦には進むことができた。
だが最後の最後、トライを狙べくプレーを組み立てる。
「勝ち負けももちろん大事。でもこの大会は、強い相手にチャレンジしに行く大会。同点で決勝に行くのではなく、最後トライを取りに行こうと全員で共通意志を持っていた」と7番・申驥世キャプテンは話す。
「僕たちは、関東新人大会における桐蔭学園の6連覇を止めてしまった代。先輩たちが築き上げた歴史を崩してしまいました。だからここワールドユースで、桐蔭勢初の決勝を決めて新しい歴史を作ろう」と言い続けてきたという。
学校史上初の決勝が、「自分たちの責任」だったのだ。