フッカー
HO 清水健伸
今大会で感じたことのないプレッシャーを受けた、U20スコットランド代表戦。
スクラムに対するアジャストが遅れた。
「相手の1番の癖が強かったのですが、3番は重く2番は強いという、独特な組み方でした」
ファーストスクラムを組めば、相手は想定どおり重かった。これぐらいのプレッシャーはあるだろう、と理解はしていた。
だからたとえ最初に押せずとも、修正し適応していけば押せるようになる、というプランだった。
だが、一筋縄ではいかなかった。
ラインアウトも、亀井秋穂選手がメインジャンパーだということが見破られていた。
そこをスピード、そして後ろのジャンパーを織り交ぜながら乗り切ろうと挑む。
スチールを受けたのは2本。1本、オーバーボール。
オーバーボールは、サインミスだった。
「スペシャルサインだったんです。コーラーは(亀井)秋穂なのですが、ここはチャンスだと思ったら自分もコールしていました。前半残り5分、場所は敵陣ゴール前。時間を使い切って、悪い流れを断ち切るためにトライも取りたかった。なのでスペシャルサインのコールを出したら、そのサインを全員が同じように理解できていなかったんです」
準備してきたことはあった。
だが、それを発揮することが難しかった。
「スペシャルサインをしっかりと合わせたのは1日だけ。でもその1日でしっかりと練習したから、みんなちゃんと分かっているだろう、と思ってしまっていました。だけど違った。全員が同じ絵を見られていないと、ああいうプレッシャーがかかった時に忘れてしまうのだ、ということが分かりました。これからのラグビー人生に活かせる経験です」
所属する早稲田大学には、同じポジションに佐藤健次選手がいる。
日本代表合宿にも参加する佐藤選手だが、敢えて「目標にしない」と断言した。
「目標にしなければ、通過点にできる。佐藤健次さんを抜かす、という気持ちでこれからも練習します」
今大会のテーマ
『動揺しない』
4月に遠征した、パシフィック・チャレンジでのこと。
大久保直弥ヘッドコーチに「もう少し冷静になれ」と指導を受けた。
「感情的になりやすい所がありました。国際試合だとレフリングと合わないこともでてきます。そこを成長させないとダメだ、とのことでした」
だからスクラムでペナルティを受けても動揺せず、次のことを考えることを意識しグラウンドに立っている。
未来への誓い
『冷静に、熱く』
メンタルをもっと安定させて、冷静に判断できるフッカーになりたい。
セットプレーの要であり、フィールドでも重要な役目を担うフッカーだからこそ「冷静さを保ちつつも熱いフッカーを目指したい」
HO 螻川内晴也
左プロップとしての出場が続く、螻川内選手。
もともとはフッカー。
だが今季から、所属する帝京大学で1番の練習を積んでいた。
今年の4月、サモアで行われたパシフィック・チャレンジではJAPAN XVとしてフッカーに。
帰国し帝京大学へ戻ると、1番に打ち込んだ。
それでも時間にして、左プロップ歴は1ヵ月弱。
京都成章高校時代、京都府予選で1度だけ1番として出場したことはあるが、大舞台では今大会の第2戦目・U20サモア代表戦が初めてだった。
「千葉で行った直前合宿の時に、1番の練習をしっかりするよう大久保さんに言われていました。そうしたら、(1番の大塚)壮二郎が怪我をしたんで。『ほないこか』って」
試合に出たい。
試合に出られるのあれば、ポジションはいとわない。
「試合に出られなければ、得られるものは何もない、と思っています」
試合に出る準備を、ほないこか、の準備を重ねた今大会のパフォーマンスだった。
今大会のテーマ
『U20でも成長はできる』
帝京大学の諸先輩方から聞いた話がある。
「帝京大学にいる方が、成長するぞ」
だからこそ、U20日本代表に来ても成長はできることを証明したい。
「(U20に)行かなかったほうが良かったんちゃうか、と言われないようにしたいです」
ラスト1戦、もっともっと成長をしたい。
未来への誓い
『しんどい時に走れるプレイヤーに』
器用なことはできない。
愚直に、真っ直ぐに。
しんどい時にチームを勢いづけられるような存在で、これからもあり続ける。
HO 田中京也
大学1年生、18歳。
今大会、プレータイムはあまり得られていない。
だが試合に向けた準備に、前日練習の雰囲気。
3月に経験した、高校日本代表の時とは異なる世界大会という枠組みの中で、気持ちに大きな違いを感じている。
「僕は(主軸となる大学2年生に比べ)一つ下の代ですが、この経験ができていることはすごく嬉しいです。来年もチャンスがあるので、この気持ちを忘れずにチャンピオンシップに上がりたい」と意気込む。
U20スコットランド代表戦で、FWがかけた『鬨(トキ)コール』は、田中選手の発想から生まれた。
スクラムを担当する山村亮アシスタントコーチが「勝負の一戦を前に、何か用意しよう」とスクラムリーダーであるHO清水選手に相談を持ち掛けると、フッカーコンビで話し合う。
調べを進める中で、かつて戦闘開始の合図としてみんなで発した声を『鬨(トキ)』と呼ぶことが分かった。
だから、U20日本代表も。ここぞのスクラムで「鬨」と声を揃えることにした。
今大会中にだいぶ仲良くなった、という同い年のCTB白井瑛人選手とは「来年はチャンピオンシップに昇格したい」と話をしているという。
「来年も(U20トロフィー優勝を)狙えるメンバーです。12月からセレクションが始まりますが、ここで学んだことを忘れずにやっていきたい」
未来を向いた。
今大会のテーマ
『積極的に』
大久保HCから受けた「積極的に」というフィードバック。
U20サモア代表との試合では「ミスを恐れず積極的にいけ」と、残り時間15分で出場機会を得た。
「入ってすぐにボールキャリーもできたし、ラインアウトも2本、ミスをせずに投げられました」
ついてはラストゲームでも見事、ジャージーを掴む。
「積極的にやってきます」
未来への誓い
『世界と戦えるフィジカルを』
フィジカルやスピード、スキルがやはりまだまだ足りない。
来年のチャンピオンシップ昇格に向けて必要なことを、日本に帰ってからも考え続けたい。