未来の自分へ ~世界への扉を開いたU20日本代表たち【FW第1列編】|ワールドラグビーU20トロフィー2024

フッカー

HO 清水健伸

今大会で感じたことのないプレッシャーを受けた、U20スコットランド代表戦。

スクラムに対するアジャストが遅れた。

「相手の1番の癖が強かったのですが、3番は重く2番は強いという、独特な組み方でした」

ファーストスクラムを組めば、相手は想定どおり重かった。これぐらいのプレッシャーはあるだろう、と理解はしていた。

だからたとえ最初に押せずとも、修正し適応していけば押せるようになる、というプランだった。

だが、一筋縄ではいかなかった。

ラインアウトも、亀井秋穂選手がメインジャンパーだということが見破られていた。

そこをスピード、そして後ろのジャンパーを織り交ぜながら乗り切ろうと挑む。

スチールを受けたのは2本。1本、オーバーボール。

オーバーボールは、サインミスだった。

「スペシャルサインだったんです。コーラーは(亀井)秋穂なのですが、ここはチャンスだと思ったら自分もコールしていました。前半残り5分、場所は敵陣ゴール前。時間を使い切って、悪い流れを断ち切るためにトライも取りたかった。なのでスペシャルサインのコールを出したら、そのサインを全員が同じように理解できていなかったんです」

準備してきたことはあった。

だが、それを発揮することが難しかった。

「スペシャルサインをしっかりと合わせたのは1日だけ。でもその1日でしっかりと練習したから、みんなちゃんと分かっているだろう、と思ってしまっていました。だけど違った。全員が同じ絵を見られていないと、ああいうプレッシャーがかかった時に忘れてしまうのだ、ということが分かりました。これからのラグビー人生に活かせる経験です」

所属する早稲田大学には、同じポジションに佐藤健次選手がいる。

日本代表合宿にも参加する佐藤選手だが、敢えて「目標にしない」と断言した。

「目標にしなければ、通過点にできる。佐藤健次さんを抜かす、という気持ちでこれからも練習します」

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今大会のテーマ

『動揺しない』

4月に遠征した、パシフィック・チャレンジでのこと。

大久保直弥ヘッドコーチに「もう少し冷静になれ」と指導を受けた。

「感情的になりやすい所がありました。国際試合だとレフリングと合わないこともでてきます。そこを成長させないとダメだ、とのことでした」

だからスクラムでペナルティを受けても動揺せず、次のことを考えることを意識しグラウンドに立っている。

未来への誓い

『冷静に、熱く』

メンタルをもっと安定させて、冷静に判断できるフッカーになりたい。

セットプレーの要であり、フィールドでも重要な役目を担うフッカーだからこそ「冷静さを保ちつつも熱いフッカーを目指したい」

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HO 螻川内晴也

左プロップとしての出場が続く、螻川内選手。

もともとはフッカー。

だが今季から、所属する帝京大学で1番の練習を積んでいた。

今年の4月、サモアで行われたパシフィック・チャレンジではJAPAN XVとしてフッカーに。

帰国し帝京大学へ戻ると、1番に打ち込んだ。

それでも時間にして、左プロップ歴は1ヵ月弱。

京都成章高校時代、京都府予選で1度だけ1番として出場したことはあるが、大舞台では今大会の第2戦目・U20サモア代表戦が初めてだった。

「千葉で行った直前合宿の時に、1番の練習をしっかりするよう大久保さんに言われていました。そうしたら、(1番の大塚)壮二郎が怪我をしたんで。『ほないこか』って」

試合に出たい。

試合に出られるのあれば、ポジションはいとわない。

「試合に出られなければ、得られるものは何もない、と思っています」

試合に出る準備を、ほないこか、の準備を重ねた今大会のパフォーマンスだった。

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今大会のテーマ

『U20でも成長はできる』

帝京大学の諸先輩方から聞いた話がある。

「帝京大学にいる方が、成長するぞ」

だからこそ、U20日本代表に来ても成長はできることを証明したい。

「(U20に)行かなかったほうが良かったんちゃうか、と言われないようにしたいです」

ラスト1戦、もっともっと成長をしたい。

未来への誓い

『しんどい時に走れるプレイヤーに』

器用なことはできない。

愚直に、真っ直ぐに。

しんどい時にチームを勢いづけられるような存在で、これからもあり続ける。

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HO 田中京也

大学1年生、18歳。

今大会、プレータイムはあまり得られていない。

だが試合に向けた準備に、前日練習の雰囲気。

3月に経験した、高校日本代表の時とは異なる世界大会という枠組みの中で、気持ちに大きな違いを感じている。

「僕は(主軸となる大学2年生に比べ)一つ下の代ですが、この経験ができていることはすごく嬉しいです。来年もチャンスがあるので、この気持ちを忘れずにチャンピオンシップに上がりたい」と意気込む。

U20スコットランド代表戦で、FWがかけた『鬨(トキ)コール』は、田中選手の発想から生まれた。

スクラムを担当する山村亮アシスタントコーチが「勝負の一戦を前に、何か用意しよう」とスクラムリーダーであるHO清水選手に相談を持ち掛けると、フッカーコンビで話し合う。

調べを進める中で、かつて戦闘開始の合図としてみんなで発した声を『鬨(トキ)』と呼ぶことが分かった。

だから、U20日本代表も。ここぞのスクラムで「鬨」と声を揃えることにした。

今大会中にだいぶ仲良くなった、という同い年のCTB白井瑛人選手とは「来年はチャンピオンシップに昇格したい」と話をしているという。

「来年も(U20トロフィー優勝を)狙えるメンバーです。12月からセレクションが始まりますが、ここで学んだことを忘れずにやっていきたい」

未来を向いた。

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今大会のテーマ

『積極的に』

大久保HCから受けた「積極的に」というフィードバック。

U20サモア代表との試合では「ミスを恐れず積極的にいけ」と、残り時間15分で出場機会を得た。

「入ってすぐにボールキャリーもできたし、ラインアウトも2本、ミスをせずに投げられました」

ついてはラストゲームでも見事、ジャージーを掴む。

「積極的にやってきます」

未来への誓い

『世界と戦えるフィジカルを』

フィジカルやスピード、スキルがやはりまだまだ足りない。

来年のチャンピオンシップ昇格に向けて必要なことを、日本に帰ってからも考え続けたい。

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