2024年度の関東大学ラグビー対抗戦が開幕した。
各チームのラグビーが確立する秋、チャレンジの秋を追う。
試合概要
関東大学対抗戦Aグループ 第8節
【対戦カード】
帝京大学×早稲田大学
【日時】
2024年11月3日(日)14:00キックオフ
【場所】
秩父宮ラグビー場
試合結果
帝京大学 17 – 48 早稲田大学
Pick Up Waseda
明るくて陽気。グラウンドの空気を、その存在感でポジティブに変えることのできる、唯一無二のキャプテン。
第107代早稲田大学ラグビー蹴球部主将・佐藤健次が、戻ってきた。
高校・大学と同じ道をたどる、1年・城央祐選手は言う。
「僕が良いプレーをしたら、指をさしながら『イエ~』って言ってくれる人。僕みたいな硬いキャプテンじゃなく(笑)ひたすらプレーと態度でゲームを盛り上げるキャプテンです。1年生としてはものすごくやり易いですし、のびのびとプレーできます」
9月14日に行われた初戦・立教大学戦以来の出場となった、佐藤キャプテン。
幾分引き締まった体つきで試合後の記者会見場に表れると、真っ先に感謝の言葉を向けたのは、アカクロを着ることができない多くの仲間たちだった。
「今週勝てたのは、ゲームメンバーだけでなくBチームのおかげでもあり、C・D・Eチームの雰囲気づくりが勝利の要因だと思っています。試合に出られるのはAチームだけですが、Bチーム以下の選手たちが本当に今週、『自分たちが帝京と戦うんだ』という気持ちを持ちながら練習してくれていました。チームとしてすごく良い雰囲気で、1週間過ごせたのかなと思います」
帝京戦に向け、早稲田のSNSで公開されたキービジュアルがある。
フィーチャーされたのは、4人のルーキーズたち。
制作に携わったマネージャー曰く「たまたまの巡り合わせ」だったというが、結果的にこの日の大活躍を予言するかのような後押しになったことは間違いない。
7つのトライ全てを1年生が決め、1年生スタンドオフが空中戦を制した。
前半21分までにハットトリックを決め、試合終盤には相手のパスをインターセプトし独走トライで締めた、この日『5トライゲッター』14番・田中健想選手は、誰もが疑わぬプレーヤーオブザマッチに輝いた。
高校入学後2カ月で前十字靭帯に怪我を負った経験があるからこそ「継続すること、離脱しないこと。やり続けること」を目標に、怪我をしないようあえて100%を出し切らず、80%程度に抑えて練習を重ねているという。
試合でも、スイッチをオンにする瞬間のタイミングが相手の脅威となった。
対抗戦では2020年以来4年ぶりとなる帝京からの勝利に、笑顔を見せた早稲田の面々。
しかしチームが気を緩めることはない。
試合後、佐藤キャプテンが仲間に伝えたのは、夏の反省だった。
「夏合宿では帝京に勝った後の準備が甘くて、天理に負けた。ここからまた難しいリカバリーに調整となると思うけど、夏みたいにならないように。もう一回気を引き締めて、筑波戦へ向かっていこう」
荒ぶるへ向け、大事な2か月が始まった。
高校日本代表候補、のち浪人。今季4戦連続先発出場
「ずっとスタメンで出続ける」を今年の目標に掲げたのは、2年生の左プロップ・杉本安伊朗選手。
そのためにも「スクラムと接点のコリジョンで見せ続けないといけない」と奮起すれば、日本体育大学戦、青山学院大学戦ではトライも決め、ポジションを確立した。
狙いどおり、これまでの対抗戦4試合全てに1番で先発出場している。
生まれは大学3年生の年。2021年度の高校日本代表候補として、エキシビションマッチにも選出された経験を持つ杉本選手だが、1年間の浪人生活を送った。
1年遅れで入学した、憧れの早稲田大学。
アカクロをまとい、拍手に包まれる選手入場時には「幸せなことだな、といつも感じます」と口にする。
「あの1年があってよかったのかな、って思っています」
この日、スクラムでトイメンに立ったのは、日本代表合宿にも召集されている森山飛翔選手。
体が強い相手に対してどういうスクラムを組むべきか、前1列、そしてFW8人でのコミュニケーションを密にした。
Bチームの1年・前田麟太朗選手には『仮想・森山』としてスクラムを組んでもらい、対策も練った。
「今日は、自分たちがやろうとしているスクラムを組めました。感謝しています」
スクラムペナルティを取れば、雄叫びを上げ仲間とともに喜びを表した。
かつては115㎏ほどあった体重も、入学直後は80kg台まで落ちた。
現在は107㎏。動きやすい体に仕上げれば、アカクロに欠かせない一員となった。
「今日勝てたこと、スクラムで勝てたことは嬉しいです。でも目標は『荒ぶる』。もっと強化して、チームを勝たせられるスクラムを組みたいです」
ストーリーは、これからも続いていく。
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