関東大学ラグビー 対抗戦Aグループの最終節が12月1日、国立競技場で行われ、早稲田大学が明治大学に27-24で勝利した。
早稲田大学はこれで、7勝0敗。勝ち点41を獲得し、6年ぶりの対抗戦王者に輝いた。
試合概要
関東大学対抗戦Aグループ 第12節
【対戦カード】
早稲田大学 27 – 24 明治大学
【日時】
2024年12月1日(日)14:00キックオフ
【場所】
国立競技場
早稲田大学
ノーサイドの笛が鳴ると、右手を天に掲げ、大きく叫んだ。
第107代主将・佐藤健次。
早稲田復活を託されたキャプテンは、その後、涙を零した。
「これまで3年間、毎年毎年苦しんで(対抗戦)3位、2位。早稲田に来て『こんなはずじゃなかったのにな』と思いながらいて。
今までの4年生の顔が、本当にフラッシュバックしてきました。長田さん(長田智希、現・埼玉パナソニックワイルドナイツ)の顔、昌彦さん(相良昌彦、現・東京サントリーサンゴリアス)の顔、大ちゃん(伊藤大祐、現・コベルコ神戸スティーラーズ)の顔が本当にフラッシュバックしてきて。『この人たちに成長させてもらった』と思いました」
先輩たちへの、感謝の涙が溢れた。
昨年の大学選手権準々決勝で、敗れた後の一コマ。当時の伊藤キャプテンに肩を抱かれる佐藤・現キャプテン
涙の理由は、もう一つ。
早稲田では、試合ごとに大きな紙へ寄せ書きを書くことが慣例。
背番号をもらった選手は、筆で決意を。ノンメンバーの選手たちは、それぞれの周囲に通常のペンで、その選手に向けたメッセージを書き込むものだ。
佐藤キャプテンは、その寄せ書きに今季は一貫して『想い』との2文字を書き続ける。
「全部員の想いを背負って戦いたい」との願いを込めた。
試合当日、ロッカールームに入れば目に入るその1枚。
『想い』の周囲に書き込まれた、部員からのメッセージは熱く、胸を打った。
『ケンジさんがキャプテンで本当に良かった』と書いたのは、1年生の島田隼成選手。
「それを見た瞬間に、僕だけのチームじゃないんだな、みんなの想いを背負っているんだなって。隼成の言葉だけで、涙が出そうになって。それぐらいみんな、いろいろ書いてくれていました」
他にも、部員の熱量高い言葉は並んだ。
『任せました』
『ケンジさんの笑っている姿をずっと見ていたいです』
佐藤キャプテンは言った。
「しんどい時は、ずっと部員席を見ていました。みんなに助けられましたね。試合に出られていない選手のおかげやな、と思いました」
キャプテンが見せた涙は、後輩たちにとっても感じ入るものが。
桐蔭学園高校の後輩でもある、14番・ 田中健想選手は言う。
「常に体を張ってくれて、しんどい時もずっとプレーで見せてくれた背中。それだけの想いがこみ上げる試合だったんだな、って。同じ高校の先輩としても、格好良く目に映りました」
早稲田大学に入学して、初めて手にした対抗戦優勝。
4年生で、キャプテンとして掴んだ、まずは1つ目の栄冠。
「嬉しいという気持ちが第一です。でもまだ、優勝していない(日本一になっていない)ので。最後もう一回、(大学選手権で)優勝した時にも『ケンジさんがキャプテンで良かった』と言われるように。僕はこれからもう一回、態度で示していきたいなと思います」(佐藤キャプテン)
早稲田大学は、41大会連続58回目となる全国大学ラグビーフットボール選手権大会を、第1シードで迎える。
対抗戦トライ王は1年生
試合を締めたのは、1年生・ 田中健想選手(14番)のタックルだった。
まずは10番・服部亮太選手がボールキャリアーである明治大学23番・海老澤琥珀選手の足に絡んだ後、田中選手が外へと押し出す。
「あの点差であの時間で、あのエリア。絶対失ってはいけない点数だったので、死に物狂いでタッチへ出そうという思いでタックルしました」
「トライラインを切らせないことは絶対」
「タッチラインは16人目の味方」
タッチラインを上手く使った日頃のディフェンス練習の成果は、絶体絶命のピンチを防いだだけでなく、100回目となる早明戦に終止符を打った。
だが、過度に喜ぶことはない。
「それまでの経緯は、自分だけの力ではない」と、仲間の頑張りに感謝する姿勢も忘れない。
この日の寄せ書きには『波』と記した田中選手。
「自分のパフォーマンスに良い波がきたら、それに乗ること。その日のコンディションに自分が合わせること。試合の成り行きに自分が適応すること」
良い波が来れば、それに乗る。
悪い時には、我慢する。
高校時代に度重なった怪我の経験から、悪い時に無理をしない大切さを学んだ。
この日は前半41分に、ゴール前スクラムからのサインプレーで仕留め切り、1トライを挙げる。
「みんなが注目しているトライに対しての貪欲さ、自分に対しての意識はありました」
これで対抗戦累計14トライ。
見事、1年生ながら対抗戦トライ王に輝いた。