明治大学
「悔しい。悔しいという気持ちが一番です」
試合後、1人スタンドを眺め続けたのは、この日紫紺の10番を背負った萩井耀司選手。
1年生ながら対抗戦全試合に出場。
開幕戦と最終戦では、先発スタンドオフを任された。
神鳥裕之監督は言った。
「自分の役割を遂行して、期待に応えてくれた。彼が出ている時間にゲームを作れたことが、それを証明したのでは」
讃えるそのゲームメイク力が光った。
萩井選手自身も「前半の入りから、チームとしても個人としても、良い形で入れた。思っている以上に僕も良いプレーができたかな」と振り返る。
もちろん、これが初めての国立競技場。
大いに緊張はした。
だが入場し、整列した瞬間にスイッチを切り替えることもできた。
「緊張が解けて、体も楽に動かすことができました」と大物ぶりを垣間見せる。
試合に出場していた4年生たちの影響も大きい。
この日、何度も仲間のもとへ足を運び、手を合わせたのは4年生たち。
「僕がミスしても、4年生がカバーしてくれた。4年生が80分間通して前に出て、ディフェンスでもしっかり体を張ってくれた。心強かったですし、ゲームメイクもしやすかった。本当に感謝しています」
4年生に感謝する1年生。
まだまだ、伸びそうだ。
怪我の功名
コーチ陣から声が掛かり、ウォーミングアップ場所からの移動を告げられると、満面の笑みでコートを脱いだのは20番・藤井達哉選手。
「出られることが嬉しかった。珍しく緊張はしませんでした。早く出たくて仕方なかったです」
後半38分、10点差を追いかける場面でトライを決めた。
ゴール前ラックからボールを受け取り、最後は体を翻しながら押し込む。
コンバージョンゴールも決まり、3点差。
明治大学としてのプライド、『前へ』を体現するトライだった。
「ゴール前で、取り切れる自信がありました」と話す藤井選手。
理由があった。
10月末に股関節を疲労骨折し、11月24日の大学ジュニア選手権・帝京大学戦で実践復帰。
その復帰戦で、ゴール前から2本のトライを奪った。
フィジカルの強い帝京大学を相手にトライを取れたことが、何よりもの自信となった。
また今季は、足の負傷に悩まされることも多かった。
しかしその度にウエイトトレーニングへ専念し、上半身を鍛えることに注力。
懸垂では40kgの加重を身に着けるまでになった。
怪我をしても腐らず、その分増量した筋力が、ゴール前での攻防で最後の一押しとなった。
間もなく迎える、大学選手権。
「今回は(大川)虎拓郎も利川(桐生)さんもけがをしていて、バックローがいない中で運が回ってきました。だからまずはメンバーに入ることが目標です」
培った馬力を武器に、大学選手権初出場を目指す。