僕らは、プレッシャーと歩く。帝京大学ラグビー部の春、ルーキー融合の春。

ROOKIES ’25

三方を海に囲まれた秋田・男鹿半島。その雄大な自然の中で、ラグビーを覚えた二人の少年が、大学の舞台で再び肩を並べた。

この日、先発メンバーに名を連ねたのは、フッカー・三浦颯太選手と、フルバック・吉田琉生選手。どちらも大学1年生。ルーキーながら、堂々たる出場だった。

「僕たちは小学1年生から同じラグビースクールで一緒にプレーしていました」

そう話す吉田選手の笑顔には、懐かしさと誇らしさがにじむ。

「颯太がスタンドオフで、僕がセンター。ずっと一緒にボールを追いかけてました」


HO三浦颯太選手

ふたりの原点は、脇本おいばなラグビースクール。中学も同じ男鹿東中に進んだ。

だが高校では、それぞれ違う道へ。三浦選手は秋田工業、吉田選手は東海大大阪仰星。遠く離れた地で、それぞれが実力を磨いた。

「まさか大学でまた一緒にプレーできるとは思っていなかったです」

進学先を示し合わせたわけでもない。それでも、再び同じユニフォームに袖を通した。

「縁があるし、ストーリーもある。しかも、こうやって1年生から一緒にこういう大会に出られていることに、感極まっています」


FB吉田琉生選手

運命のような再会は、ピッチでも光を放った。

この日は、まさに“阿吽の呼吸”を感じさせる連携が随所に見られた。

「相手が何をしたいか、どこに動くか。感覚的に分かるんです」と吉田選手。

そんな吉田選手に、三浦選手は静かに応える。

「一緒にできるからこその嬉しさがあります。ルイの良いプレーに負けないように、僕も頑張りたい。お互いに、高め合っていけたらと思っています」

ひとつの楕円球がつないだ、幼なじみの絆。

雪のグラウンドで始まった物語は、いま、大学ラグビーという新たな航路に乗り出した。

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いま、この場所でできることを

高校時代、東海大大阪仰星で1年時から試合に出場していた吉田琉生選手。

ユーティリティバックスとしてあらゆるポジションを務めたが、しかし背番号15は「高1最初の練習試合と、公式戦でも1度ぐらい」だったという。

だが帝京大学のジャージーをまとう今、背負う番号は15番。

「高校時代、湯浅先生(東海大大阪仰星高校・湯浅大智監督)にいろんなポジションを経験させてもらいました。その中で、自分に合う場所を見つけられたことは大きいです。大学に入って相馬さん(帝京大学・相馬朋和監督)にフルバックに置いていただいた時、自分でもしっくりくる感覚がありました。やりづらさはないです」

どんな環境でも自分を発揮できる。そう言える背景には、先輩たちの存在がある。

「先輩たちの支えが一番です。僕のことを本当に生かしてくれて、のびのびとプレーできています。のびのびやるぶん、ミスも多くなるんですけど、それも受け止めて支えてくれる。感謝しかないです」

帝京ラグビーの代名詞ともいえる『コネクト』。その戦術理解と連携の中に、現在は自らをなじませる過程にいる。

「入学してまだ半年も経っていませんし、正直、浸透しきれていない部分はあります。でもその中で自分に何ができるのかをはっきりさせて、あれもこれもやろうとは思わず、自分の最大限を発揮できるように心がけています」

何段も上のプレーをしようとするのではなく、今いるステップで、精一杯のプレーをすること。そして、順応すること。

その大切さを知るルーキーだからこそのプレーが、大学1年のいま、見ることができる。

「グラウンド外でも、先輩たちとは本当にたくさん話をしています。『ここに来て』『こう動いて』と、練習中も自然にスキルを学べる環境を作ってくださる。本当にありがたいです」

目指すのは、ただの技術向上ではない。

人として、ラグビー選手として。

「1日1日を大切にして、少しでも良い影響を与えられる人間になりたいと思います」

停滞することなく、毎日を大切に。

ひたむきに、良い影響力のある人間になりたいと、はじまる4年間の道のりに目標を定めた。

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赤ジャージーに、恥じない自分でありたい

「高校時代は、基本ナンバーエイトでした。U17日本代表には、フッカーで呼んで頂きました」

スタンドオフとセンターを兼ねていた中学時代を経て、秋田工業高校ではNo.8としてプレー。ポジションの移り変わりだけで、三浦颯太という選手の非凡さを知る。

大学入学後、新たな挑戦を始めた。

「本格的にフッカーの練習を始めたのは、帝京大学に来てからです」

3月中旬から練習に参加し、わずか2カ月半で帝京のファーストジャージーを勝ち取るまでになった。

持ち味は、バックス出身らしいフィールドプレー。

この日も幾度となくラインブレイクを見せ、ロングゲインで観客を沸かせた。

ボールを持てば、一瞬で流れを変える。それが、三浦選手の強みである。

だが、その裏で見えてきた課題もある。

「スクラムはまだまだ。8人で組むということが、全然できていないです。強い1番・3番に助けてもらっています。スクラムは、正直・・・ほぼダメです(笑)」

苦笑いしながらも、現実をしっかり受け止める。

「ラインアウトスローイングも課題です。前に放るぶんには少し良くなってきたのですが、ロングは苦手。自分がオプションを減らしてしまっていると思うので、もっと精度を上げないと」

謙虚な言葉の中にも、自分の背負うものを理解する強さがある。

「1年生だから、というのは関係ない。2番をつけさせてもらっている以上、プライドを持って練習しないといけないと思っています」

そんな三浦選手にとって、先輩たちの存在は大きい。

「すごい先輩たちに、いっぱい教えてもらっています」

名を挙げたのは、日本代表活動にも呼ばれた経験を持つ3番・森山飛翔選手や、U20日本代表候補にも挙がったHO梶川尚能選手ら。

同じ目線でアドバイスをくれる先輩たちの支えに、感謝の気持ちは尽きない。

だからこそ、彼は誓う。

「赤ジャージーを着ても、恥じない選手になりたい」

その決意は春の陽を浴び、輝きを増す。

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