9月13日に幕を開けた関東大学ラグビーリーグ戦1部。
10月25日(土)には川越運動公園陸上競技場で立正大学 対 東洋大学の一戦が行われ、立正大学は16-26で今季4敗目を喫した。
Pick Up Players
「なんか、飛んでくるんですよね」
笑いながらそう話したのは、立正大学のナンバーエイト・舛尾緑選手。
この日、何度ハイボールを胸で収めただろう。本人はさらりと冒頭の言葉を口にするが、実際には相手の動きを察知し、細やかにポジションを変え続けていたからこその軌道。
人の動きを観察して、自らの動きに結びつける感性は、高校時代から磨いてきた大きな長所である。

2004年生まれの、大学2年生。
下級生だからといって、一歩引くことはない。トライを奪われた後のハドルでは「できている部分」を仲間に伝え、前を向かせるチームの中心的役割を担う。
この日もラインアウトジャンパーにボールキャリー、セカンドマンと攻守に奮闘し、文句なしのモストインプレッシブプレーヤー賞を受賞した。
だがここでも「自分のペナルティもあったし、前半できたことが後半はできなくなって・・・」と決して満足する姿を見せない。

「10点差」という壁
チームはこれで開幕4連敗。そのうち3試合が、10点差前後での敗戦と惜しい試合を続けている。
だが「点差よりも大きな差を感じる」とは舛尾選手。
あと10点、されど10点。
接戦で勝ちきれない現実に、もどかしさを隠さない。

この10点の壁を乗り越えるためには「やり抜くことじゃないですかね」と突破口を示した。
ディフェンスのシステム、タックル、アタックの組み立て。シンプルだが「一瞬一瞬を全員が80分間やり抜くこと」こそが、勝利に直結すると言葉を重ねる。
課題は決定力にもある。
「東洋大学ならモール、流経大なら留学生、とかそういう『トライの型』がある。でも立正にはまだない」と胸の内を明かす。
4試合を戦っても確たる「トライを取り切る形」が見えず、それが勝ちきれない一因にも繋がっていると分析した。

一方で、ディフェンスには進化がある。
埼玉パナソニックワイルドナイツで活躍した梶伊織氏がディフェンスコーチに就任し、守備改革に着手したのは今年の夏のはじまりのこと。
「意識のところはもちろんですけど、ミスしたときにどこが悪かったのか、すぐ分かるようになりました」と舛尾選手は手応えを語る。
どこでタックルが機能しなかったのか、どこで抜けられてしまったのか。原因を即座に共有できるようになり、チーム全体のナレッジが向上した。
単なるシステム変更にとどまらず、選手一人ひとりが「気づき」を得て次につなげる力をチームとして養い始めた。

写真右から2人目が梶コーチ
満足を拒む向上心
この日手にした、モストインプレッシブプレーヤーの称号。
周囲から賞賛されることも多いが、舛尾選手自身は「試合で満足したことは一度もない」と首を振る。
「ペナルティやミスを減らしたいし、もっと強いプレー、もっとワークレートを上げたい」と、飽くなき向上心を抱く。
「まだ、もっとやれる」と何度も繰り返した。

ブレイクダウンではボールをもぎ取る一幕も
リーグ戦も折り返し地点を迎え、残り3試合。
勝ち点が5に留まっている現状に「もう負けられない。入替戦に行くことなく、勝って終わりたい」と舛尾選手は力強く言った。
オレンジ色のジャージーを纏う誇りを胸に、戦う覚悟。
立正大学のナンバーエイト、舛尾緑。
「10点差」の壁を、越えていく。

