早稲田大学にラグビー蹴球部 女子部が誕生「自分たちがラグビーする場所を切り拓く」

2024年4月、早稲田大学にラグビー蹴球部 女子部が誕生した。

話が急速に動き出したのは、およそ1年前の2023年5月。

後にダイレクターを請け負うことになった栁澤眞氏(2003年卒)のもとに「早稲田大学で男子と同様にラグビーをしたい、という女子学生がいる」と伝わったことがきっかけだった。

当時の2年生に3名、1年生に1名。幼きころからラグビーを続けてきた女子学生4名が、早稲田大学でラグビーをしたい、と声を上げたのだ。

栁澤氏は言う。

「男子にとっては、私が学生だった25年前であっても『勉強もラグビーもできる環境』は当たり前でした。でも女子にとっては、高いレベルでの文武両道を目指す選択肢がない、ということを知った。私にとっての驚きでした」

これまでの女子プレーヤーは、勉強かラグビー、どちらに比重を置くかを選ばなければならず、その双方を『大学』という教育機関で叶えることは難しかった。

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8月以降には、ラグビー蹴球部との話し合いの場がもたれる。

様々な可能性を議論する中で、最終的には『男女別組織でスタートする』ことが決定した。

恩藏直人 ラグビー蹴球部部長をトップに、ラグビー蹴球部とラグビー蹴球部 女子部が並列する。

早稲田大学内で女子部が単独で部門認定されるには、相応の実績も必要だ。今後5年間で戦績を積み重ね、2029年度には早稲田大学から正式な体育部門としての認定を受ける算段を描いている。

女子部の練習グラウンドは、男子同様、上井草。初練習は4月11日に行った。

ラグビーボールや用具は男子のものを使用し、コーチもワセダクラブから派遣してもらっている。

早稲田大学ラグビー蹴球部の一員である以上、男子が大切にしているカルチャーやこれまで築いてきた歴史を、女子も大切にしなければいけない。

互いのリスペクトが、前提条件だ。

「日本のラグビー界にとって、女子がラグビーをすることは当たり前、を起こせればいいかなと思っています(栁澤氏)」

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ヘッドコーチは、全日本空輸(株)でフルタイム勤務を続ける元日本代表・横尾千里氏が務める。

自身も早稲田大学出身。だがラグビー蹴球部に所属することなく、4年間を過ごした。

「わたし自身が社会人となったいま、大学時代を振り返った時に『語れることがない、語れる仲間が存在しない』と思うことがあります。だからこの女子部に対して、うらやましさを感じているのが素直な気持ちです」と正直に話した。

そして、かつての自分を振り返る。

自身が大学生だった頃にも、ラグビー部に入りたいと何度も門を叩いた。そのさらに先輩たちだって、何度もチャレンジをしてきたことを知っている。

それでも、強固な門戸は開かなかった。

だが、チャレンジを繰り返し続けてきたこと。そして今年、トップレベルでプレーする選手が4人も集まったこと。

『個』として積み重ねてきた歴史が塊となって、高くて重き扉を動かした。

「やっと部になったことは、すごくうらやましいです。同時に、これまでの努力を続けた4人の選手たちに、尊敬の気持ちを抱いています」

横尾ヘッドコーチは嬉しそうな表情を見せた。

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もちろん、クラブチームでプレーするという選択肢はこれからも引き続き有する。

だが実績を出すことに重きを置くクラブチームではなく、教育機関である大学の部活動としてラグビーをする、という意義は大きい。

選手それぞれの目指す形によって、選択できる道が増えたことは、誠に喜ばしいことではなかろうか。

2022年。

早稲田スポーツが誕生し、125周年を迎えた。

これからの125年を担う一員として、初代キャプテンを務める千北佳英選手(スポーツ科学部3年)は2つの目標を掲げる。

一つは、日本一を獲ること。ワセダを背負う責任感をもって、楕円球を握りたい。

もう一つは、社会に出た時に女性として活躍できるような人材を輩出するチームとなること。

二兎を追うべく、2024年春、早稲田大学ラグビー蹴球部 女子部は誕生した。

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