大東文化大v関東学院大【関東大学リーグ戦1部 第4週】

後半

前半同様、後半最序盤は大東の風が吹く。コンディション不良から復帰した15番・鈴木匠選手が、強いランを見せポール右脇へトライ。21-5とリードを広げた。

関東サイドにとっては、前半終盤から引き続き我慢の時間帯が続いていた。5番・矢野選手の不意打ちノックオンにはじまり、スクラムで得た自陣20mでのフリーキックをダイレクトタッチにしてしまう。キックオフボールも、これまたダイレクト。なかなか、悪い流れを断ち切れない。

このまま大東ペースで試合が続くか、と会場にいた人の大半は思っただろう。ところが、そうならないのがラグビーの面白い所。大東が十八番とするスクラムで、幾度となくコラプシングを取られてしまうのだ。

なんとなく流れに乗り切れない大東の雰囲気が一転したのは、後半23分。先制トライを奪った大東8番サイモニ・ヴニランギ選手が危険なプレーでレッドカード、一発退場を受けてしまう。前半とは逆に数的不利となった大東、後半36分になる頃には31-26と、5点差まで追い上げられていた。

ロスタイムは2分。その2分を、大東は敵陣深くでフォワード戦に持ち込むことを選択する。ラックを作っては再びのラック、ポイントを作り続けてフェーズを重ねる作戦だ。

42分を少し経過した頃、短めの笛が響いた。試合終了か?いや、違う。大東のノックオンを告げる笛だった。まだ残っている、ラストワンプレー。関東ボールのスクラムだ。

数的優位を味方につけた関東は、とにかくスクラムを押す。いや、押しまくる、という表現の方がふさわしいかもしれない。スタート地点は、関東陣地の22m付近だった。しかし、重なるペナルティにスクラムを選択し続けた関東は、いつの間にか大東陣地の22m付近までスクラムだけで迫っていた。

トライで同点、コンバージョンゴールも決まると大逆転の5点差。観客も、その行方を固唾を飲んで見守る。

後半48分、レフリーのポケットに手が入った。度重なるスクラムコラプシングに対し、大東18番にシンビンを与える。これで、ピッチ上にいる大東の選手は13人となってしまった。

FW1列目は、特別な訓練を積んだ選手でなければならないのがラグビーのルール。後半24分に既に交代していた3番・藤井大暉選手を、大東は再投入しなければならなくなった。

実はこの藤井選手、高校時代にあまり試合経験を積んでいない。178cm/148kgの巨漢で名門・大東大学の門を叩き、2年目の今シーズン。前節の中央大学戦で初めて、リーグ戦に出場した。これが2試合目だった。

コロナ禍で春シーズンの体力作りが出来ていない影響は、選手層にも影響する。3番が交代してもなお、押しに押される、スクラムを武器とするはずの大東。そしてついにレフリーが、FWリーダーの2番・酒木選手を呼び、警告をした。次に反則をしたら、イエローカードだよ。ーーーそんな話がされたと推測される。

その様子を見ていた大東1番・小島燎成選手は、その横で3番・藤井選手に声を掛けた。そして藤井選手の両肩に自身の両手を置き、目を見て語り掛ける。こちらは、どのような言葉が交わされたか。ーーーきっと、自信を持たせるような言葉が投げかけられたに違いない。

バックスからも声が飛んだ。「大東、こだわれ!フォワードこだわれ!」司令塔を務める10番・青木選手が、最後尾からフォワードに檄を飛ばす。

そして組まれた、もうカウントすることすら辛いほど、40分を超えて組まれたスクラム。勝負のスクラム。

ーーー大東、耐えた。

スクラムからボールを出し、展開させた関東。大東陣22m付近でフェイズを重ね、意地と意地のぶつかり合いの勝負に出る。

数秒後か、数十秒後か。もしくは数分後か。方々から祈りにも似たサイレントエールが客席から届けられると、笛が音が響いた。レフリーの手は、大東側に上がっていた。

関東のノットリリースザボールで、試合終了。なんと、後半も54分を過ぎての決着だった。

喜びを爆発させる、大東フィフティーン。いや、13人。2人も数的不利な状況下で、今季初勝利を掴みとった。

スクラムで耐え抜いた末の勝利に、3番・藤井大暉選手(写真中央)の下へ駆け寄る選手たち

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