「ラグビーができて幸せでした」天理v早稲田【第57回全国大学ラグビーフットボール選手権大会決勝】


早稲田は『荒ぶる』を取らなきゃいけないチーム。来年荒ぶるを取るために、上井草で練習を積み重ねこの場でリベンジしたい(3番・小林賢太選手)

後半になると、ある言葉がしきりにグラウンドから聞こえてきた。

「BattleだよBattle」

スクラムでもラインアウトでも。プレーが止まると、今年のスローガンである『Battle』の声が響いた。

相良監督は振り返る。「早明戦では『Battle』しきれていなかった。戦ってなかった。だからこの1ヵ月、1年間やってきたことを信じてやり切ろう、と『Battle』のマインドを取り戻した。」

『Battle』には、自分たちのこの1年間のアイデンティティが込められていたのだ。


後半28分に交代すると、4年生のプロップ・久保優選手は、ベンチから一際大きい声を出し続けた。「前出ろ!前出ろ!」「ワセダ、低く!」写真は交代時の一コマ(左:1番・久保選手、右:17番・横山太一選手)

無常にもシーズンの終わりを告げる笛が吹かれると、LOの下川甲嗣選手と桑田陽介選手は、肩を抱き合って涙を流した。

呆然と立ち尽くす選手、泣き崩れる選手。それぞれが様々な表情を浮かべる中、ひたすら笑顔を浮かべていたのは11番・古賀選手だった。

ずっと、ただひたすらに笑顔だった。バックスタンドに挨拶をしても、準優勝トロフィーを受け取っても、天理が優勝トロフィーを掲げても。いつもの、あの古賀選手の「ラグビーができることが楽しい」と言わんばかりの笑顔だった。

今シーズン、特に序盤は少し苦しそうな表情をグラウンドで見せる時もあった。でも、最後は。トレードマークの笑顔が、古賀選手らしくちょっと舌を出した笑顔が、戻っていた。

天理が優勝トロフィーを掲げる瞬間、河瀬選手に声を掛け、ビジョンを指さした古賀選手。「これを見ておいて。この悔しさを忘れずに頑張ったら、来年絶対日本一になれるからな」そう、声を掛けた。

前半ラスト、ホーンが鳴ってから取られたポール真横のトライ。コンバージョンゴールを狙う天理の松永選手(10番)にキックチャージに行ったのは、古賀選手ただ一人だった。

去年の荒ぶるは去年の先輩たちのもの。自分たちの荒ぶるは、自らで掴みに行く。そう体現しているかのような走り出しに、胸が熱くなった。


最後まで笑顔だった。「乾坤一擲」、アカクロを纏った伸るか反るかの大勝負が終わった

丸尾キャプテンはこの試合でラグビーの第一線から退き、留学を予定しているという。

「これまでのラグビー人生、辛いことも嬉しいこともあった。大学選手権で優勝することを目標にラグビーをしてきたが、それが叶わず競技から離れるのは心残り。いつか『この経験があったからこそ前に進めたんだ』と言えるような人生を歩みたい。」

不意に合点がいく。試合前、慈しむようにしばらくの間ピッチを見回していたのは、これが第一線で戦う最後の試合だったから、なのか。

終わりは新たな始まり。キャプテンとして、またこれまでの4年間アカクロを背負い続けた誇りを胸に、新たなフィールドでの活躍を願わずにはいられない。


バックスタンドに挨拶へ行くと、仲間一人ひとりをハイタッチで迎え整列した。その目に、涙はなかった

丸尾キャプテンとして最後の言葉は、謝辞で締め括られた。

「この一年、コロナで苦しいと思ったことはなかった。ラグビーが出来ることが幸せだった。協会関係者・全国のラグビー部員、最前線で奮闘している医療関係者の皆様含め、本当に感謝しています。ラグビーができて幸せでした。」


主務の亀井亮介氏。ノーサイドの笛が鳴る瞬間まで、部員137名全員で『Battle』するよう後押しした

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