何よりこのチームを盛り上げたのは、試合中誰よりも大きな声で仲間を鼓舞し続けた松岡キャプテンだった。
トライに繋がる一連のプレーに絡んだ選手たち一人ひとりにハイタッチをしようと、足を引きずりながらインゴールに駆け寄った稀代のキャプテン、松岡大和選手。
大舞台だからこそいつも通りの、いやいつも以上に力を出し切るには、少しアイディアが必要だ。そのアイディアを「キャプテンの気合い」に託した天理は、120%の力を出し切ることに成功した。
喜ぶ時も気合いを入れる時も。誰よりも大きな声で「よっしゃー!」と雄叫びを上げるその姿に、心を奪われた人も多いのではないだろうか。
屈託のない笑顔とキャラクターで今年の天理大学を率いた松岡キャプテン。唯一無二のキャプテン像を作り出した
小松監督は言う。「優勝の瞬間、『日本一や』と。今までうちのチームは、東京で行われる大一番でなかなか実力を発揮できなかったんです。だから今日こそは、と送り出しました。強い早稲田のアタックに崩れかけても、ディフェンスでプレッシャーをかけられたことが勝利に繋がったと思います。」
優勝し涙に暮れる選手たちを見ても、もらい泣きはしなかった。「本当に幸せです」と、喜びを噛みしめた。
声を出さず、手拍子でスクラムの後押しをする天理応援サイド
最後に、関西リーグで戦う各校への想いも口にした小松監督。
「36年前に同志社さんが優勝して以来、関西勢は全く優勝できていなかった。決勝に行ったことですら、9年前の天理で2校目です。関西の優勝校2校目になりたいという思いと、決勝に行けども準優勝止まりのチームが東海、筑波、天理の3校。なんとかそこから抜け出したいと思っていた。
ラグビーは伝統校が強く、優勝経験校は多くありません。優勝するハードルの高さを実感しました。関西勢として2校目の優勝校になれたことは嬉しいですし、何より『関西のチームでも優勝できるんだ』ということですよね。関西勢の目標・励みになれれば、と。関西全体のレベルが、これで上がっていくのではないでしょうか。」
悲願の初優勝。全員で勝ち取った優勝トロフィ。漆黒のジャージを身に纏った仲間想いの選手たちが、大学ラグビー界に新たな歴史を刻んだ。
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