HISTORY of SUNTORY Sungoliath
やはり、オールブラックスは異次元だった。
左の大外に構えるウイング目掛けてキックパスを蹴り上げたかと思えば、10秒後にはショートパントを自らチェイス。ボールは東芝サイドに渡るものの、獲得した東芝選手の足にタックルを見舞い、絡みつく。
そのまた数十秒後には、地面を這うようなグラバーキックを転がした。
3度のボールタッチ全てで、ボーデン・バレット選手は異なるキックを繰り出す。
しかし彼の素晴らしさは、それだけではない。
何度も体を当てられる強さだ。
後半、危険エリアに攻め込んできた東芝14番ジョネ・ナイカブラ選手に対し、迷いなくタックルに入る。ノックオンを誘い、ボールを奪い返すタックルに、会場からも感嘆の声が上がった。
自ら体を張ってくれる、なんとも心強い10番。
大切な時間帯と勝負のエリアで、どんなプレーをしなければならないか。バレット選手から、学ぶことは多い。
後半に入ると、昨シーズンまでキャプテンを務めていた9番・流大選手から「ブレイクダウン、リアクションもっと」と声が聞こえた。
この時既に、45点差。
ブレイクダウンで何度となくペナルティを獲得してもなお、自分たちのスタンダードを求める。
キャプテンの中村亮土選手はその理由について「先週、中断が発表されるまで待ってくれていたファンのためにも、良いプレーをしたいと思った」と話した。
「急な再試合になっても、ファンの方々が大勢来てくれた。自分たちのためはもちろん、そういうファンのためにも良いプレーを見せたかった。」
その強さが、サントリーがサントリーたる所以だ。
次節はいよいよ、トヨタ自動車ヴェルブリッツとの全勝対決。3シーズン振りの王座奪還を目指し、戦いは続く。
スクラム前、雄叫びを上げた3番・垣永真之介選手。会場からは拍手が沸き起こった。写真は、相手ボールスクラムでペナルティを獲得し喜ぶ垣永選手
His story of Naoto Saito
コロナ禍のラグビー観戦で良かったことがあるとすれば、「グラウンドレベルの選手たちの声がとても良く聞こえる」ことにある。
昨年、主将として早稲田大学を日本一に導いた齋藤直人選手は、今年度サントリーに加入。
開幕戦はリザーブ登録、第2節では先発を務め、MOMを獲得した。順調なルーキーイヤーを歩み出した齋藤選手は、この府中ダービーで21番を背負って後半11分に登場する。
良く通る高めの声が、会場中に響く。
「慎太郎、右!」「オフサーイ!」「左プレッシャー!」
スクラムハーフらしく、周りを動かす声が絶え間ない。
ブレイクダウンでボールを奪取すれば、すぐさま手を叩いて自身の位置を仲間に知らせる。
目玉は後半16分。敵陣10m付近でペナルティを得ると、その瞬間にタップキックでクイックスタート。左に飛ばした長めのパスは少し乱れながらも、2手で大外のテビタ・リーに繋がりトライを演出した。
スペースを瞬時に把握し、トライコースをイメージしながら行動に移す判断力を持ち合わせているルーキー。
ブレイクダウンでペナルティを獲得すれば、FWを讃えに拍手をしながら駆け寄る優しさも併せ持つ。
もっと、この選手のプレーが見たい。
フォトギャラリーはこちら