80分の物語
HISTORY of SUNTORY Sungoliath
「良いゲームでした。良い前半のディフェンス。」
試合後の記者会見を、ミルトン・ヘイグ監督は日本語で切り出した。
この日のゲームプランについて、中村亮土キャプテンは言う。
「簡単にゲイン出来ないと思ったので、アンストラクチャーを作って自分たちのゲームに持っていこう、というプランでした。」
もう少し、分かり易い言葉に置き換えてみる。
「クボタのディフェンスが堅くなかなか前に進めない(=ゲイン出来ない)と思った。だから、”次のプレーを予め準備しておき易い”スクラムやラインアウトから始まる攻撃(=ストラクチャー)よりも、サントリーが得意とする”その場の状況判断によってプレーを決める展開”(=アンストラクチャー)にしようと、キックを多用するゲームプランを用意して挑んだ」ということだ。
その言葉通り、試合序盤から長短織り交ぜたキックをいくつも蹴り込んだサントリー陣。
蹴ってエリアを伸ばすと、ボールをキャッチしたクボタの選手目掛けて素早くプレッシャーを掛ける。
そのままブレイクダウンに人員を割き、敵陣でペナルティを奪えば、ボーデン・バレット選手の右足で3点を稼ぐ。
幾度となく目にした光景である。
前半33分にこの日初めてのトライを奪い、スコアを8点差に広げた直後。中村キャプテンは、円陣で仲間に声を掛けた。
「もう一回、ここからリスタート。集中。」
切れない集中も、サントリーの強みだ。
今シーズン、1試合あたりの平均トライ数は約9本。
それが、準決勝ではわずか1トライに留まった。
それでも勝ちを手にしたのは、鉄壁のディフェンスがあったから。
「クボタさんをノートライで抑えられたことは、自信になりました。今日はベストなゲームが出来て良かったです。(中村キャプテン)」
ラスト7分間にも及ぶ、自陣インゴール目前でのディフェンスを物にし、トライを与えることなく試合を締め括ったサントリー陣。
次戦はいよいよ、3シーズン振りの頂点を手に入れるための80分。
中村キャプテンは言う。
「サントリーとしてアタッキングラグビーを掲げるためにも、トップリーグで一番のディフェンスチームになろう、とシーズンのはじめに話をした。決勝では、これまでサントリーが積み上げてきたものをしっかりと出せるようにしたいと思います。パナソニックさんもアタック力があるので、(今日の結果は)良い自信を持って臨めそうです。」
試合終わり。
選手が引き上げた、静かなメインスタンドで、両チームのスタッフが言葉を交わした。
「また、来年やろうぜ。」
好敵手との戦いは、新リーグへと続いていく。
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