クボタが一体感を体現した80分。サントリーは、プランを遂行した80分|TL2021準決勝

HISTORY of KUBOTA Spears

クボタスピアーズには、勝ちたい理由があった。


各選手にとって縁のあるジャージと、クボタの歴代ジャージをスタンドに飾った。ノンメンバー(通称『ボルツ』)は全員、今季ファンに配布されたオレンジのベースボールシャツを着用

今シーズン、クボタの試合から強く感じるキーワードがある。

それは、チームとしての一体感。

ピッチ上の選手たちの一体感はもちろんのこと、チーム全体、そしてファン(通称『オレンジアーミー』)も含めた『チームクボタ』の一体感は、16チーム随一だった。

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そんな一体感を感じるシーンが、この試合中いくつもあった。

後半28分。この日7本目のペナルティゴールをボーデン・バレット選手が狙うと、ライアン・クロッティ選手はバレット選手に背を向け、じっとポールを見つめた。

そしてゴールが外れると、チームメイトに手を合わせながら次のプレーのポジションについた。


試合前グラウンドに姿を現すと、ボルツがいるスタンドを見上げ、笑顔で手を挙げたクロッティ選手

度々の円陣もそうだ。

スクラムが中々組めず、レフリーがフロントローを呼んで話をしている間にも、残りのFW5人は肩を組みあって小さな小さな円陣を作った。

ノンメンバー席で感じた一体感もある。

準々決勝でレッドカードを受け、3試合の出場停止処分となったバーナード・フォーリー選手は、インカムをつけながら試合を観戦。度々コーチ席へ足を運び、フラン・ルディケHCと話し込む姿が見受けられた。きっと、何かアドバイスを送っていたのだろう。

試合には出られなくても、自分に出来ることを全うする。それが、チームクボタだ。


左手にインカムを持つフォーリー選手

試合は、前半から渋い展開が続く。

思ったように攻められず、ペナルティも重なりボールをキープ出来ない。

サントリーが描いた、キッキングゲームの術中にはまったような時間が過ぎていく。


立川キャプテンは何度もレフリーの元に足を運び、丁寧に80分を作り上げた

しかし、ラスト7分間に渡る敵陣深くでの攻防は、クボタの『勝ちたい理由』をひしひしと感じるものだった。

この試合、ほとんど踏み入れられなかった敵陣22mに居続けた、最後の7分。

組み直したスクラムも、何度も何度も体を当て続けグラウンディングを目指した姿も。

全ては、オレンジ色に染まる秩父宮に帰るため。

それでも届かなかった、あと数センチ。いや、数ミリ。

試合後。

ボルツの面々はスタンド下段まで降りると、激闘を終えた仲間を出迎えた。

そこに、涙はなかった。

多くのオレンジアーミーの気持ちを代弁するかのように。

満面の笑みで、空高く、手を掲げた。

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