ラグビーの季節がやってきた。
花園出場を目指し、青春をかけて戦う選手たちをレポートする。
試合概要
【対戦カード】
埼玉県立草加高等学校v 埼玉県立熊谷工業高等学校
【日時】
2021年10月30日(土)14:30キックオフ
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試合結果
草加 7 – 27 熊谷工業
試合展開 ~熊谷工業高校~
悪い所が全部出た試合だった、と橋本大介監督は言った。
「横綱相撲をしてしまった。緩慢な試合、気持ちの部分です。」
新人戦王者として選抜大会に出場した今春。
しかし関東大会予選では昌平高校に苦杯を喫し、今回の花園予選で決着をつけるべく鍛え上げてきた。
だが、草加高校の勢いにプレッシャーを受け、自分たちのラグビーが出せない。
ハーフタイム中には、タックルの高さを指摘する声と、1対1で合わせすぎたという反省点が飛び交う。
そんな熊谷工業のムードを変えたのは、ゲームキャプテンを務める13番の橋本選手。
ボールを持つ度に、全て違う独特のテンポでボールを繋いだ。
もちろんキックを蹴る時もあれば、ゲインラインを突破し30m程走った時もある。
圧巻は、4本目のトライ。
味方のパスが乱れボールがこぼれそうになった所、寸での所で拾い上げたのが橋本選手。相手のタックルを受けながらオフロードパスを放れば、受けた11番・塩原選手がハンドオフをしながらトライを決める。
スコア上は、4トライ差での勝利。
だが、後味は苦い。
準決勝では「自分たちの強みを、強い相手にも貫き通せるラグビーをしたい」と話した今井キャプテン。
控えるは、県北勢としてともに切磋琢磨してきた深谷高校。
今年のスローガンである『グラウンドゼロ(地面に寝ているプレーヤーがいないこと)』が体現されることを、楽しみにしたい。
最後のノーサイド ~草加高校~
33年ぶりにベスト8進出を果たした草加高校。
試合前、小林剛監督は草加高校ラグビー部のホームページにこう記していた。
『誰も、草加高校が勝つとは思ってないかもしれないけど、少なくとも、私は、勝つことを信じています。』
※引用元:https://soka-h.spec.ed.jp/blogs/blog_entries/index/page:2?frame_id=202&page_id=181
全ての人が、勝利を信じて闘った60分間だった。
小林監督は草加高校赴任前、浦和高校を率いて花園に出場した経験を持つ。
浦和高校と草加高校に共通するのは、高校からラグビーを始める選手たちが多いこと。
だから試合中、小林監督は1分たりとも静かになることはなかった。
ダイレクトタッチになってしまった選手には「悪くないよ!次ディフェンスから!」
オフサイドを取られた時には「立ち位置の反則やめよう!」
アドバンテージをもらった時には「アドバンある時は思い切っていこう!」
他の誰よりも大きな声を会場中に響かせながら、ワンプレーワンプレーに指示を届けた。
呼応するかのように、グラウンドに立つ選手たちも右に左に駆け回る。
相手ボールスクラムでは、No.8の選手がそのまま持ち出すことを完璧に予測。ボールが出た瞬間に体格の勝る相手にタックルに入った、スクラムハーフの佃選手。
プレッシャーが掛かるエリアと時間帯で、敢えて選択したラインアウトのオプションはロングスロー。
新人戦王者に対して果敢に攻め続ける選手たちを、観客席から応援した選手の家族は手拍子で後押しした。
獅子奮迅、攻めたプレーが続く。
そして訪れた、後半22分。
マイボールラインアウトからモールを組めば、しっかりと押し切って念願のトライを決めた。
ボールを地面に置いたのは、13番の遠藤選手。バックスの選手がモールに入る、全員の気持ちがこめられた7点だった。
望んでいた結果は得られなかった。
だが、選手たちが60分間で見せてくれたエネルギーの一つ一つは素晴らしかった。
出場した選手、ベンチ外だった選手、そして監督・コーチ陣に加え、試合中黙々と役割を全うし続けたマネージャーたち。
彼ら彼女らが生み出した会場の空気は、決して全てのチームが作り出せるわけではない。
客席に座る保護者、そして試合の一週間前に学校へ駆けつけてくれた数々のOB・OGたちの想いを受け止め、グラウンドで表現した張替組だからこその60分間だった。
「みんなのこと、愛してます。」
涙で目を真っ赤にした張替キャプテンは、しっかりとした口調で、最後に仲間への気持ちを伝えた。
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