早明戦は4年生の責任と下級生の躍動でワセダ勝利。明治は「最後に勝ちたい」|関東大学対抗戦グループA|第11週|明治×早稲田

The Side of 早稲田大学

早慶戦で負傷した長田智希キャプテンが欠場した、2021年の早明戦。

まずはゲームキャプテンの1番・ 小林賢太選手が、続いて15番・河瀬諒介選手が先頭に立って入場した。


試合中、何度も河瀬選手と言葉を交わした小林ゲームキャプテン

この試合のテーマは『バトル』。

ピッチに立っている15人が『バトル』にコミットし続けたこと、それがこの試合の決め手になった、と話したのは小林ゲームキャプテン。

この日はディフェンスに割く時間も多かった。

だが、前半に1本、後半に1本決めたそれぞれのトライは、ディフェンスで耐えた後の一瞬の乱れを確実に仕留め奪ったものだった。

素早い集散で相手よりも早くディフェンスラインを築き、規律を守って自分たちのディフェンスシステムを遂行出来れば、ボールを奪い返せると信じていた。


逆転のトライを決め喜ぶSH宮尾昌典選手「いい勉強になった試合」

下級生のリーダーシップも光る。

小林ゲームキャプテンが負傷しタイムオフが取られると、真っ先に音頭を取ったのは司令塔の伊藤選手。

円陣の中で、まずは2年生の伊藤選手が。そして1年生の宮尾選手、佐藤選手と続き、そして最後に4年生の河瀬選手が言葉を発した。

これだけのプレッシャーが掛かる局面で、下級生たちが声を出すことのできるチーム。それが、今年のワセダである。

ただ、早慶戦の時にはそれが裏目に出てしまい、逆にチームがまとまらなくなってしまった、と小林ゲームキャプテンは振り返った。

「ピッチに立っている選手に、リーダーの素質を持っている人はいっぱいいる。だからこそ、上手く行かなくなった時に立ち返る場所をシンプルにしよう、と自分たちのFive Force(ファイブ・フォース:5つの力)について各リーダーを中心に事前に確認していた」という。

ファイブ・フォースとは、アタック、ディフェンス、セットピース、ブレイクダウン、そしてフィットネス。

自分たちが強みと考えるラグビーの中から、次に打ち出す手を自分たちで導き出した。


スクラムでターンオーバーされた時には「ワセダ落ちんな、切り替え!フォワード落ちんな!」の声が飛ぶ

力強いボールキャリーにターンオーバーに、とプレイヤーオブザマッチに相応しい活躍を見せたNo.8佐藤健次選手。

「今日は『1m、1cmにこだわる』ことを自身のテーマにしていた。ボールを持ったら絶対に前に出ようと決めていた」と話す。

だから、最初のコンタクトで「今日いけるな」と感触を掴んだことで、自分の流れを掴むことが出来た。

「ボールをもらう前に、首を振ってどこが空いているか前を見ることが出来た。ギャップ、穴が見えたことがゲインに繋がったと思う。」

ビックマッチにも怯まない強心臓は、大田尾監督からも「プレッシャーゲームで必ずやってくれるのが彼の一番の強み」とお墨付き。

「試合を楽しもうと決めていた、それがプレッシャーを受けないメンタルになったと思う」と、屈託のない眼差しで話す。


初めての早明戦。明治を応援する旗の多さにアウェーを感じたが、河瀬に「アウェーやな」と話し掛けてもらったことで緊張がほぐれた、と笑う

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後半35分過ぎにダメ押しの2トライ目を奪うと、小林ゲームキャプテンは両手を広げて仲間を迎えた。

そして最後にひとつ、大きく息を吐き出す。

「まだ終わってない!」「こっから!」

後半40分にベンチに下がっても、座ることなく立ったまま仲間に声を掛け続ける。

そして、ノーサイドの笛が吹かれた後には、手を叩き両手でガッツポーズ。

目には光るものが見えた。


交代時、長田主将に出迎えられた小林副将

最後尾で声を出し続けた河瀬選手は、試合後「率直にしんどかった」と吐露した。

「早明戦は毎年プレッシャーもあるし、秩父宮がアウェーになる。今日はキャプテンの長田がいないので、4年生としての責任、重圧もあった。そういう部分でもしんどかった。」

ノーサイドの笛が鳴り、仲間と喜びを称えあった後、大きく息を吐いた理由を垣間見た。

6勝1敗で、対抗戦2位。長田キャプテンは「これからが本番」と前を見る。

「この試合で出た課題を修正し、次に挑みたい。」

2年ぶりの大学選手権制覇に向けたワセダの挑戦が、始まる。

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