1点ビハインドで迎えた後半。
後半4分のトライでまずは逆転をすると、相亮太監督は5番・中川功己キャプテンを呼び寄せ、落ち着いた声色で言葉を掛けた。
「お前に掛かってる。『俺についてこい』って見せる所だぞ。」
そして中川キャプテンが円陣に戻ると、「あいつが成長するチャンスだ」と相監督はつぶやいた。
役職が、人を作る。
それはラグビーだけでなく、どんな環境にも通ずるだろう。
「チャンスだと思った」とは相監督。「キャプテンがキャプテンたる、っていうところで、彼がこの大会を通してキャプテンになれるチャンスだった。」
本当はユーモアのある選手。だがどちらかというと仏頂面で、なかなか一歩前に出られない性格でもあった。
だから今日は「キャプテンらしく『俺について来い』っていうようなプレーができれば、あの子自身も変わるかな、と思って。」
中川キャプテンは奮起した。
「監督にああやって言われた以上は、キャプテンとして自分から行かないと、と思った。」
後半の苦しい時間帯、誰よりも早い出足でDFラインを押し上げ、思い切りの良い強烈なタックルを見舞った。
「いやー、良かったですね。今までは『もうちょっとやってくれたらな』っていう部分があった。それが厳しいところをプレーでブレイクしていってくれました。(相監督)」
中川選手を主将に据えた意味について、相監督は「今年は能力があって、主張出来るタイプの選手が多い。だからこそ責任の所在を明示し、誰かに決定権を与えてあげないといけない。旗を振り続けられるキャプテンが必要だった」と話す。
下級生の頃からレギュラーとして出ていた他の選手たちにはリーダーグループとして別の役割を与え、もう少し自由にラグビーをさせるようにした、とも加えた。
監督がキャプテンを託した意図を、そして「俺についてこい、って見せる所だ」と掛けた言葉の意味を、中川キャプテンは1年掛けて理解していくことだろう。
「今年のスローガンは『必至』。やってきたことが必ず試合で出る、偶然はない、という意味です。監督がつけてくれました。」
キャプテンとなり、監督とコミュニケーションを取る機会も増えた。「冷静だけど、士気が上がる言葉を掛けてくれる方。頼られるキャプテン、『こういう時は自分が!』というキャプテンになりたい。」
流通経済大学付属柏高等学校ラグビー部第36期キャプテンとして、中川功己らしい色のチームを作る。
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