Aブロック
流通経済大学付属柏高等学校(千葉)×國學院大學栃木高等学校(栃木)
「面白かったなぁ」
流通経済大柏の相亮太監督は、試合後開口一番、そう声を漏らした。
奇しくも昨年の関東大会Aブロック決勝カードとなった、流経柏ー國學院栃木。その時は國學院栃木が19-0と完封勝ちし、冬の花園でも再び対戦が実現すると27-7と國栃が再度の勝利。
流経柏は「リベンジ」と燃えた一戦だった。
先制は流経柏。しかしその後3トライを立て続けに奪われ、一度は流れを手放しかけた。
「絶対いける」「引きずんなって」と互いに声を掛け合い、気持ちまで引っ張られないよう自らで引き締めた。
最大12点差。
2トライ2ゴールで逆転出来る点差は、逆にチームの結束力を高める。
今まで自分たちがやってきたことを信じれば、絶対に逆転出来る。だから最後まで諦めないで、ただやり切るだけ。
中川功己キャプテンは、仲間たちに伝えた。
今日は、勝利の予感を持っていたという相監督。
「俺、予言者だよ。」
これで負けたら、俺の戦術がいけない。だから気にしなくて良いよ、と伝え送り出していた。
だからこそ最後まで自信を持ってプレーし続けることが出来た流経柏の選手たち。
後半9分、15分と2トライ2ゴールで逆転し、試合を決めた。
試合終了の笛が吹かれると、膝をつき、両手を上げ、喜びを表した。
しかしベンチに戻るや否や「明日が勝負!絶対に勝つぞ!」と既に気持ちは決勝戦へと向く。
「僕が多分、このチームを一番好きだなと思います。」とは相監督。
ラグビーを好きでラグビーを楽しむ中にも、向き合う姿勢に高校生らしさを少し超えた紳士らしさがあるという。「大人としてラグビーを扱っているなと思います。」
戦術や見る目は与えているからこそ、最後は姿勢が大事になるラグビーという競技。
トライを取られた後は「今のはここが悪かった」「ポッドをこうしよう」と即座に修正点を挙げられ、ベンチメンバーも外からずっと声を掛け続けることが出来る。
「何かやってくれそうな感じは、ありますよね。」
2年連続でAブロック決勝に進んだ流経柏。
「桐蔭学園に育ててもらっている」という感情が強いからこそ、「連続優勝していた桐蔭学園から、國學院栃木を経て優勝を引き継ぐのはオレたちだろ」っていう気持ちで挑みたい、と相監督は話す。
中川キャプテンも「日本一を獲りたくて、みんなこの学校に入っています。だから勝ちたい。」
選抜大会の時に比べると見違える程に自信をつけたその表情は、力強さを増していた。
「選抜の時にはまだ自分自身幼かったな、と。嫌なことから逃げていたので、ここ数か月はキャプテンとしてどうあるべきか考えながら過ごしていました。だから、ここぞという場面で自分が一歩前に出てチームのために体を張ることが出来る。そんなキャプテンで在りたいと思います。」
それは奇しくも、選抜大会の時に相監督が求めていたキャプテンとしての姿勢と重なる。僅か2か月程で身につけた、監督が求めるキャプテン像。
Aブロック決勝で戦うは、東海大相模。目指すはもちろん優勝、『必至』だ。
***
逆転された直後、國學院栃木のハドルから掛けられた言葉は「こんな所で負けるチームじゃないんだから!」
自分たちを信じれば、自分たちのラグビーが出来れば勝てる。そう信じていた。
だが、最後に逆転を狙って蹴り込んだゴール正面からのPGは、ポールの右側に逸れてしまう。
ノーサイドが告げられると、膝から崩れるように頭をついた國栃の選手たち。
グラウンドから離れる時もまた、一様に涙に暮れた。
「負けるべくして負けた」とは、國學院栃木・吉岡肇監督。
「昨年の関東大会、そして花園と流経柏のリベンジの想いが表れた試合だった。この悔しさ・敗戦を、明日、そして今後どう生かしてくれるのか注目したい。」
どれだけ相手からマークされてもチームの求心力で在り続けた國學院栃木10番・伊藤龍之介キャプテン