青山学院大学
勝負所のセットプレー前には、FWが円を作り肩を抱き合う。
個の想いの強さとチーム力とが噛み合った時、青山学院のラグビーは観客を魅了した。
突破力が光ったのはNo.8辻村康選手。
14番・榎本拓真選手は、よもやピンチの場面で身を挺し相手をタッチの外に押し出すタックルを見せた。
高いハイボールを蹴り上げ、攻守の要として存在感を放ったのは13番・金澤春樹選手。今年のオールスターにも選出されたパワープレーヤーである。
そんな金澤選手は、プレー以外でもチームの中心でみなをまとめた。
チャンスの場面で10番・青沼駿昌選手がノックオン。両手を合わせ「ごめん」と仲間に伝えれば、青沼選手に真っ先に近寄り、頭に手を載せたのが金澤選手だった。
スターティングメンバー入りを果たしたルーキーの八尋祥吾選手(7番)にペナルティが告げられた際にも、金澤選手の手は頭に置かれる。
青山学院の温かいコミュニケーションが積み重なり、それがプレーで表現されると、観客席からは感嘆の声が漏れた。
待望のファーストトライは、後半ロスタイムに入ってから。
SO青沼選手が右サイドを駆け上がりインゴールに飛び込むと、会場に詰めかけた4,821人のラグビーファンは大きな拍手で祝福を贈った。
昨年戦った時には、48点差での敗戦。それが今季は30点差まで縮まった。縮めた18点が、28年ぶりの大学選手権出場を目指す気持ちの表れ。
「部員のマインドが大きく変わったと思います。自分たちが下級生の時は、上位校に対して気持ちの部分で負けていました。それが昨年から新体制となり、新しい戦術に取り組む中で、今年は春から良い感触を得られていた。自信を積み重ねられたことで、強豪相手にも『絶対勝つぞ』というモチベーションで挑めたことが、去年からの一番の大きな変化だと思います。(江金海キャプテン)」
今季のスローガンは『変革』。
持ち前の貪欲さを見せ続けた時に、最大の変革はきっと訪れる。
His Story is the HISTORY
花園ベスト4のチームを率いたキャプテン経験者として。八尋祥吾選手は対抗戦の舞台に立った。
背番号は7番。身長168㎝と小柄ながら、グラウンドの中では大きな働きをみせる。
得意なディフェンスで体を当てた感想を問われると「通用しないことはなかった」と好感触を口にした。
チームの輪の中で、1年生ながら恐れずに声を出すことの出来る選手。
相手選手にも笑顔でコミュニケーションを取り、試合中であっても気を配ることの出来る選手。
形容する言葉は、たくさんある。
この日は後半25分に危険なプレーでイエローカードが提示され、ピッチを後に。
「反則を多く出してしまい、ピッチに居続けられなかったことが反省点です。」ほろ苦いデビュー戦となった。
それでも「次の試合では自分の強みを活かしてチームに貢献したい」と気持ちを切り替える。
デビュー戦でのシンビンも、後の良い思い出とするには、これからの働きが大切だ。
「僕自身は東福岡高校出身で、強豪と言われる学校でした。青山学院は対抗戦の中でもチャレンジャーとされる位置付け。一勝ごとに『歴史を変える』という言葉がついて回ります。しっかりと『歴史を変える』を起こせるように、と思っています。」
歴史を変えるチャレンジは、始まったばかりである。