後半1分、相手のオフサイドでゴール正面からPGを選択すると、3点を追加。まずは2点差まで詰め寄った。
10-12。
しかし、東福岡はそこからが強かった。
後半10分から重ねられた怒涛の4トライ。次第に、報徳学園の選手たちから、笑顔が消えいく。
それでも保ったのは、規律の高さ。
反則数は前半0。後半2つを数えたが、1つはノットリリースザボール。もう1つもオブストラクションと、ベーシックな部分は一切乱れなかった。
東福岡のペナルティー数6に対し、3分の1に留めたこと。敗者として最大の誇り高き点であろう。
26点差となった後半26分。報徳学園陣からは「まだあるよ、切らすなよ」の声が飛んだ。
5番・柏村選手も、最後まで「ホートク、エナジー!」の気持ちを仲間に伝え続けた。
だが、埋まらなかった点差。
最後は独走トライを決められ、ノーサイドを迎えた。
植浦キャプテンは言った。
「花園は、とても楽しい場所でした。やりたいことが全部出せて、憧れの舞台で戦うことができた。楽しかったです。」
ただ、この悔しい気持ちは「次の学年に託すことしかできない。優勝してもらいたい」と願う。
春の選抜大会決勝で戦うはずだった、3月31日から282日。
282日後の決着は、東福岡に軍配が上がった。
今季、ともに高校ラグビー界をリードしてきた2校が、戦うべくして戦った決勝戦。
力の限りに出し切った今、植浦慎仁キャプテンは「感謝の気持ちでいっぱいです」と言葉を絞り出した。
支配される時間も多く、楽しめたか、と言われればすぐには答えが出てこない。
だか、完結までに282日を要した、報徳学園と東福岡が紡いだストーリーの結末は、ありがとうの気持ちで迎えた。
「1年間、僕たちはずっとヒガシさんを意識してきました。名前も覚えるくらい、意識してきました。僕たちは感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。」
スポーツチームで在る前に、報徳学園の生徒として。
ラグビーを楽しむ、ラグビープレイヤーとして。
誰にも、どこにも真似のできない第71期報徳学園ラグビー部の空気は出来上がった。
率いた植浦キャプテンは「僕がキャプテンで良かったのか分からない」と涙を見せる一幕もあったが、そういう人柄だったからこそ、この個性豊かな集団をまとめあげ、そしてアットホームな雰囲気が魅力的なチームを作り上げることが出来たのだ。
たどり着いた2つの優勝と1つのシルバーメダル。
全てが、報徳学園史上最高順位だ。
「僕についてきてくれて、ありがとう。」
報徳学園の名が、またひとつ誇り高きものとなった。