26人のBrave Blossoms to be.|2022年度 第48期高校日本代表アイルランド遠征

初めて身に着けた桜のジャージ。桜のエンブレムが入ったポロシャツにアウター。

リュックにももちろん桜のマークが入っており、その傍らには手作りの御守りがたくさんぶら下がっていた。

日本で、一番最後まで高校生としてプレーできた26人の選手たち。

そしてそんな彼らを支え、1,456日ぶりに高校日本代表のテストマッチを実現させた10名の大人たちを紹介したい。

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プロップ1

1 木村 陽太

「楽しく」

高校:國學院大學栃木高校
大学:青山学院大学

後半の要所で回ってくる出場機会。それまで築いたチームの良い流れを崩さぬよう、体を張った。

もちろん、得意なスクラムでも見せ場を作る。

1戦目ではアイルランドのモールを止めたこと、スクラムも互角以上だったこと。自信に繋がる出来だった。

一転、アイルランド側がほとんどのメンバーを入れ替えた第2戦目では、よりフィジカルゲームを挑まれる。「すべてが大きかった」と、世界の大きさ・強さを肌で感じた。


写真右上。1番の位置にいるのが木村選手

2 檜山 蒼介

「バクハツ」

高校:尾道高校
大学:明治大学

花園で最もサプライズを起こした選手のうちの1人が、檜山選手であろう。

世界を相手にしてもその能力は変わらず、先発のタイトヘッドプロップを確実に務め上げた。

言葉の端々から賢さを漂わせ、冷静に分析する能力は逸品。一方でフレンドリーさを併せ持ち、人との壁を作らない能力もこれまた一級品だった。

大学以降の伸びしろが楽しみでならない選手である。

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フッカー

3 大塚 壮二郎

「HARD」

高校:関西学院高等部
大学:関西学院大学

テストマッチでの出場機会は得られなかった。

その分、チームの変化を誰よりも間近で見てきた。

「1戦目を越えて、チームが一つになったと思います。」

2戦目、逆転されはした。だが、このチームが築き上げたラグビーは唯一無二だという自信があった。

チームの成長を誰よりも嬉しく、そして悔しく思う姿を見せた大塚選手。

スローインする時、表情は決まって優しい。ラグビーが本当に好きなんだ、と思わせる笑顔が印象的だった。

4 清水 健伸

「愚直」

高校:國學院久我山高校
大学:早稲田大学

フッカーながら1戦目・2戦目とフル出場。ワークレートの高さは折り紙付きだ。

試合写真を見返す度、清水選手が鋭い視線で相手選手をノミネートする絵が繰り返される。スクラムでもFWの中心となり、チームトークでは大川キャプテン・白丸FWリーダーを支えた。

第2戦目のノーサイドの笛が吹かれると、誰よりも先に涙を零したのが清水選手だった。涙を拭うその左手首には、中学時代に所属していた柔道部の恩師の名が。

「高校では柔道かラグビーかを選択しなければならず、ラグビーの道に進むと決めた時に掛けてくれた言葉は『日本代表になれよ』でした。」

まずは掴んだ、一つの目の桜のジャージ。きっと空から、見守ってくれていたに違いない。

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プロップ3

5 森山 飛翔

「頑張って頑張りましょう」

高校:京都成章高校
大学:帝京大学

間違いなくスペシャルな選手。森山飛翔というラグビープレイヤーの能力を遺憾なく発揮したアイルランド遠征だった。

これだけ強い3番が、これだけ強いランナーだとは。間違いなくアイルランドが受けた衝撃の1つであろう。

正真正銘の唯一無二。プレーを見るだけで森山飛翔と分かる、そのことが何よりものスペシャルだった。

一方でグラウンドを離れると、お茶目な一面をのぞかせる。ムードメーカーになれるスーパープロップ。やはり、強い。


写真右下。4番の位置にいるのが森山選手

6 山口 匠

「必至」

高校:流通経済大学付属柏高校
大学:明治大学

2戦目を翌日に控えた、キャプテンズランの最後。意気込みを聞くと、「1戦目の時に言い尽くしちゃいました」と笑顔を見せたのが山口選手だった。

そして宣言する。「スクラム全部押します!全部ターンオーバーするんで!」

その言葉通り、2戦目でもスクラムを押した。後半最後の勝負所で、相手ボールスクラムをめくり、まさしくターンオーバーした。

だが吹かれた笛は、日本側のスクラムコラプシング。

これが世界基準だと知った。

もっと強くなる理由ができた。

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ロック

7 石橋 チューカ

「impact」

高校:報徳学園高校
大学:京都産業大学

プレー中はひたすらにひたむき。試合写真で最も多く映り込んでいた選手が、石橋選手だった。

ピンチの時には必ず現れ、連写していても一コマ後にはなぜか枠外からブレイクダウンに加わっている。『リーチマイケル2世』との呼び声高いが、&rugby的には『日本のマロ・イトジェ』を強く推したい。

課題はフィジカルだと自身でも認識する。大学で大きく強く進化し、その先へと羽ばたく姿が待ち遠しい。

一方、人懐っこい愛嬌はどうかそのままで。カメラを向ければ、いつもかわいらしい笑顔でピースサイン。NY生まれだが、生まれただけで日本育ち。英語は話せないものの、英語組(トゥポウ選手、カイサ選手、エロニ選手)に自ら混ざりにいく姿はどうしても「かわいい」と形容したくなった。

そしてとにかくド天然のいじられキャラ。唯一無二の石橋チューカであり続けてほしいと願う。


写真左が石橋選手。右3人で写真を撮っていると「僕も一緒に入っていいですか」と自ら加わった

8 白丸 智乃祐

「鉄になる」

高校:長崎北陽台高校
大学:筑波大学

日本代表メンバー26人が発表された時、各人が様々な組み合わせを予想したのではなかろうか。

第1戦目のメンバー表を目にすると、確信した。「このチームは強い。」白丸選手がリザーブに控えることほど、心強いことはない。

FWリーダーがフィニッシャーを務める。本人曰く「やっぱりスタートで出たい」と心の内を明かしたが、この安定感こそがチームには必要なピースだった。

なぜ、このチームはこんなに強くなったのか。白丸選手に問うと、当たり前のように、間髪入れず即答する。

「それは僕たちがファミリーだからです。」

アイルランドに来てもなお、まとまらなかったこのチーム。しかし一つの出来事をきっかけに、僅か1週間であっという間に家族を作り上げたリーダー陣の手腕は大きい。


写真左。遠征中常に一緒だったカイサ選手(111kg)をお姫様抱っこして

9 物部 耀大朗

「体を張る」

高校:中部大学春日丘高校
大学:明治大学

春日丘、オール愛知ではひと際そのサイズが目立ったが、世界に出てこれが『当たり前』だと知った。

「アイルランドは強いし上手い。」

間違いなくこれからの日本ラグビー界に必要な、そして先頭を走らなければならない存在が、サイズ+αを狙う重要性を実感した遠征となった。

しかしグラウンドを離れれば一転、笑顔がチャーミングな物部選手。初対面であっても人との間に壁を作らず、最初から同じレベルで話をしてくれる貴重な存在だ。

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フランカー/NO.8

10 大川 虎拓郎

「ハードワークする」

高校:東福岡高校
大学:明治大学

東福岡のコーチ陣に問うたことがある。なぜ、大川選手がキャプテンだったのか。

「大川以外に、誰がいる?」

最も納得する回答だった。

この日本代表チームのキャプテンも然り。大川選手でなければ、この成績は成しえなかったであろう。

各高校のリーダーが集まるチームにおいて、十人十色の即席コンバインドチームをまとめ上げる絶妙なバランスは、大川虎拓郎ゆえに成り立った。

長年、個人的に憧れライバル視していた存在がいる。同ポジションの松沼寛治選手。日本代表で初めて同じチームとなり、初めて味方としてピッチに立った。

その心強さは、筆舌に尽くしがたい。

「体は強いし、ボールを持ったら必ずゲインしてくれる。運動量も豊富で、タックルもすごい。一緒にプレーして、学ぶことが多かったです」。その言葉だけで、十分だった。

第2戦目を終えると、監督の前で涙を溢れさせた大川キャプテン。

「このチームでキャプテンができて楽しかったです。」

そして26人を代表して誓った。

「僕たちは、日本に帰って強くなります。また桜のジャージを着て世界と戦っていきます。」

いま、世界へのスタートラインに立った。

11 亀井 秋穂

「BAKUHATSU」

高校:長崎北陽台高校
大学:明治大学

出場機会は得られなかった。だが、熾烈なバックロー争いを制して日本代表の座を勝ち取ったことで、覚悟も決まった。

「U20に選ばれたい。」

そのために、まずは体作り。世界のフィジカルを間近で見たからこそ、自らに矢印を向けられるようにもなった。

「世界と戦っていきたいと思いました。」

腹を括ったその先に、どのような成長曲線を描くのだろうか。

12 カイサ・ダウナカマカマ

「HARD WORK」

高校:大分東明高校
大学:帝京大学

2戦目のノーサイドの笛が鳴ると、真っ先にレフリーのもとへと赴きいくつも言葉を交わした。

スタッフが「もういいよ、カイサ」と声を掛けるまで、どうしても納得することができなかった。

自らの手から零れ落ちた、最後のキックオフボール。取られたノックオンオフサイド。

強くて、力持ちで、ひょうきんで、だけどシャイなフィジー人。

1年前は、自らが抱く感情を日本語で説明することが難しかったが、いまでは冗談まで言える。もちろん漢字も使いこなす。

桜のマークが、とても良く似合う選手になった。

13 藤井 達哉

「勝つ!」

高校:東福岡高校
大学:明治大学

パワフルな他のNo.8をものともせず、勝ち取った先発のジャージ。

1戦目はアタックで。2戦目はディフェンスで存在感を示した。

「日本代表を目指して体作りをしてきた」という藤井選手。

第1戦目では2度、絶妙なタイミングでラックの真上を越えていく。その判断力と、それを叶えるフィジカルは世界を舞台にしても武器であることを証明した。

それでも課題が残ったのは、コンタクト力。

要所で決め切れる選手になるために。長い階段を、駆け上がっていく。

14 松沼 寛治

「Second」

高校:東海大学付属大阪仰星高校
大学:早稲田大学

何から書けばいいか迷うほど、松沼寛治に溢れた時間だった。

1戦目の勝利後、真っ先に握手を交わしたのはベンチメンバー。2戦目の敗戦後には、誰よりも早くアイルランド選手に手を伸ばした。

敗れ涙に暮れる仲間の背中にそっと手をやり、円陣にいざなったのも松沼選手。試合中、時折レフリーと話をするシーンもあった。

この年代誰もが中学生の頃から知るスーパースターは、しかし誰よりも仲間に目を配れる、素晴らしいキャプテンシーの持ち主だった。

試合が終わった直後に振り返る的確な反省点と、いまの日本の立ち位置を冷静に捉えられる能力。誰よりも泣きたいであろう悔しさを堪えながら、見据える未来には希望しかなかった。

取材の最後には、必ず「ありがとうございます」と口にする。このチームで任されたセカンドリーダー(タックルをしてから2秒後には再びタックルに入れる姿勢につくこと)という役職も、紛れもなく全うした。

世界に出れば、決して高くはない身長。だがそれを上回る体と心の能力は、これからどのように変貌を遂げるか楽しみにしたい。

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