川越東がDF力と攻守の切り替えで昌平を圧倒し、今季2冠目。「絶対に妥協しない」決意を示す|第71回関東高等学校ラグビーフットボール大会 埼玉県予選決勝

川越東

前半、何度も自陣深くまで入り込まれた。だが、毎回守り切っては仕掛ける速攻。

「今日は雨。だからこそブレイクダウンで勝つこと、ディフェンスで圧倒することを目標としていました」と話すは、この日スタンドオフを務めた五十嵐舜悟選手。

ゴールラインを背負ったディフェンスでは人一倍体を当てた立役者が、チームをけん引した。


1トライ3ゴールの活躍を見せた五十嵐選手

川越東のディフェンスからは、トライを取られる気がしなかった。春、全国の強豪校と公式戦を重ねた自信がプレーに表れていた。

ボールをターンオーバーした瞬間の攻守の切り替えで、前半は圧倒する。


前半27分、15番・南雲優佑選手のトライでセーフティリードへと広げた

後半もこの勢いのままトライを重ねるかと思われた。

が、しかし後半はノースコア。

ハーフタイムには「0-0の気持ちで戦おう」と声掛けをしていたというが「疲労もあった。雨のゲームにおけるエリア取りなど、詰めが甘かった。(五十嵐選手)」と反省点を口にする。

それでも、許したトライは僅か1つ。自陣くぎ付けになった時間帯の方が多かった後半だが、昌平を1トライに抑えられた経験は大きい。

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今年は何人もの強いプレイヤーがボールを縦に運べるパワフルさが、アタック面での大きな武器だ。

強力なエンジンを搭載し、キックも使いながら機動力のある攻撃を仕掛ける。

現時点で、川越東が頭一つ埼玉の高校ラグビーをリードしていることは間違いないだろう。


13番・稲葉逸生選手は倒れない。3人に絡まれてもなお前に出て、体1個半分の陣地を最後に押し上げる

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もう一つ、アドバンテージがあるとすればそれは選手層か。

それは決して多くの選手がいる、ということではなく、一人の選手が複数ポジションをこなせる『ポリバレント』を意味する。

「いまの川越東の強みは、1人が2つ以上のポジションができること」と話すは望月雅之監督。どの試合も、全員が万全に挑めるとは限らない。だから誰かが怪我をしてもカバーできるように、1年間の成長を見据えたチーム作りを行っている。

決勝戦ロックとして出場した渡部開選手は、準々決勝ではプロップでプレー。この日ウイングとして先制トライをあげた髙橋新大選手は、通常No.8を担う。

12番で出場した水島晟仁選手は新人戦でフッカーを務め、力強いボールキャリーから得点機を生み出した1番・柴田陽選手は、No.8での出場経験も有する。

他のチームではなかなか考えられないような選手起用をできること、それがこのチームの強みなのだ。


FWであれば、どこのポジションでも対応可能な渡部選手。「色んなポジションに入ることで経験を積めた大会でした。」目標は、ビッグタックルでチームを元気づけられる存在になること

今春迎えた新入部員は27名。

うち半分以上の16人は、高校からラグビーを始める初心者である。

「僕たちの学校の特徴は、高校からラグビーを始める生徒が多いこと。(渡部選手)」

初心者が多いからこその気付きや学びが多いことも、好影響を与えている。一つにまとまるチームカラーの原点でもある。


スクラムハーフの髙橋淳良選手は中学までバスケットボール部。コンタクトプレー向き、とのアドバイスを受け、高校からラグビーを始めた

69名の大所帯となった川越東。まとめる2人の共同キャプテンは、川越東史上初めて埼玉県1位として挑む関東大会へ、モチベーションを高めた。

「関東予選で1位を獲れたことは大事な経験になる。絶対に妥協せず、関東大会でも(強豪校相手に)勝ち抜いていきたいと思います。(高尾将太キャプテン)」

「誰かひとりの成長ではなく、下級生含めたチーム全体が底上げされている。出場機会をなかなか掴めていない選手たち含め、全員の成長を実感しています。(寺山公太キャプテン)」

これで今年、埼玉2冠目。秋の花園予選では、第1シードを獲得した。

残るセブンズそして秋の花園予選と、埼玉4冠に向けた戦いは、まだ折り返し地点だ。

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昌平

「完敗です。」

そう口にするは、後藤慶悟監督。2月の新人戦で対戦した時と比べ、縮んだ川越東との差、開いた差を冷静に分析した。

「スクラムは(昌平の方が)伸びている。ラインアウトは変わっていない。フィジカルも変わっていないと思います。」

だが、新人戦で許したトライは2本。今回はその倍、4トライを取られた。

「Aゾーン(得点機エリア)に入ってからの決定力に、川越東との差がありました。前半、川越東はAゾーンで4回中4回、トライに結びつけています。逆に僕たちは3回中0回。」

だからAゾーンに入ってからのチームの動きを統一することから、初夏のスタートを切りたい。

「関東大会では、その落とし込みの進捗を確認しながら戦っていきます。」

秋に向けて、伸ばしていかなければならないことは明確だった。

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好材料は、ニューフェースが誕生したことではなかろうか。

1年生の宮本和弥選手がピッチに現れたのは後半10分。力強いボールキャリーで、トライをアシストした。

チーム唯一のトライを奪ったのは、2年生FB・山﨑祐吾選手。横山健人キャプテンから後半10分にバトンを引き継ぐと、川越東のディフェンスをこじ開けた。

キャプテンやエースらの負傷交代があっても戦えることを証明した。

前年度の埼玉王者が、今季ここまで無冠。

だがもちろん、このまま終わるわけがない。

会場を後にする時、口々に発していたのは「秋は勝つ」という決意。

そのために今は種を蒔き、育てている真っ最中なのだ。

フィジカル強化のために取り入れている新しい施策も、一つや二つではない。秋にはきっと、その芽は花開くだろう。

勝負の11月を見据えた強化策に、焦ることなく一つずつ愚直に向き合う日々は続いていく。


トライを決めた山﨑選手のもとに駆け付ける、昨年から主力として活躍していた選手たち

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