「強い関東学院を復活させたい。」大東文化からスクラムトライを奪った関東学院が競り勝つ|大東文化×関東学院|第12回関東大学ラグビー春季交流大会

大東文化大学

試合終了後、選手たちの挨拶が一通り終わると、観客席に向かってマイクを握ったのは監督に就任したばかりの酒井宏之氏。

この日が4年ぶりのホームグラウンド有観客試合。

観客席に入り切らないほど集まったラグビーファンに向け、謝意を述べた。

「現役の子たちは、今日が初めてホームグラウンドでの有観客試合。コロナ禍で、ずっとできなかったんですよね。嬉しかったと思います。(酒井監督)」

今年度のキャプテンは、1年次から背番号9を着続ける稲葉聖馬選手に決まった。4年連続、御所実業高校出身者が主将を務める。

監督をはじめ、コーチ陣も新しい顔ぶれが増えた今季。稲葉キャプテンは「練習から良い雰囲気でトレーニングできています」と日々の充実を口にした。

新チームになってから、公式戦は連勝街道。だからこそ今日の敗戦も「必ず次に活かしていきたい」と意味あるものとして受け止める。


写真右が稲葉キャプテン

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そんな大東文化が、今年力を入れているのは「フィットネスとディフェンス」だ。

「大東と言えばアタック。ですが今年は、ディフェンスも注目して見て頂けると嬉しいです。(稲葉キャプテン)」

まだ、春。

チャレンジしているからこそ、上手くいかない試合で得られるものも大きい。

コロナ時代に入り、初めてのホーム有観客。

グラウンドの入り口にはノンメンバーが立ち、観客を誘導しながらメンバー表を配ること。

駐車場の整備に当たること。

すべてが、今の学生にとっては初めての経験だった。

メンバー表の片隅に監督名で書かれた「皆様の熱いご声援よろしくお願いいたします。」の文字通り、会場には温かい空気が漂った。

「思ったよりたくさんの方に来ていただけた。だからこそ勝ちたかったです。次、もう1試合ホームゲームがあるので、次は勝利で終われるように頑張りたいと思います。(稲葉キャプテン)」

酒井監督も言う。

「大学選手権に出て、正月を越えれば国立ではこういう雰囲気にもなる。その中でも勝ち抜ける癖をつけたいですね。」

まずは2年ぶりの大学選手権出場へ。志は、高い。


交替する関東学院6番ラリー・ティポアイールーテル選手に「お疲れ様」と声を掛け手を伸ばしたのは、FB伊藤和樹選手。高校時代、全国セブンズで一度対戦し仲良くなったそう。「ラグビーは繋がりを大事にできる素晴らしいスポーツです」とティポアイールーテル選手も喜んだ

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試合後コメント

酒井宏之監督

春、最も注力していることはチームの規律とディフェンス。

(選手たちの中には)怪我やアクシデントなどもありましたが、途中から出場した選手たちにもう少し頑張ってほしかった。

誰かが抜けた後、頑張れる選手にもっと出てきてほしいなと思います。

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関東学院大学

春季大会の試合会場が対戦相手校である場合、試合メンバーに関わる選手だけが会場に赴くことがほとんどだ。

だがこの日、関東学院は140名の全部員が、およそ90㎞離れた大東文化大学のグラウンドまで足を運んだ。

「学生に聞いたら『全員で行きたいです』と言うので、じゃあ行こうか、と。家族みたいなもんですからね。」

そう話すは、今季から監督に就任した立川剛士氏である。


キックオフ前、選手を送り出すノンメンバーたち。列の先頭には立川監督が立った

今年はダブルキャプテン制を敷いた。

ともに佐賀工業高校出身で、1年生の頃から試合出場経験を持つSO立川大輝選手、そしてハードタックラーのFL宮上凛選手を主将に据える。

だがこの日は2人とも、教育実習に怪我にと出場叶わず。ゲームキャプテンを担ったのは、3年生のFL由比藤聖選手だった。

「今年のリーダーグループは、2年生から4年生までを巻き込んでいます。4年生だけのリーダーグループにすると、実質7か月程度しかチームに関われなくなる。代が変わったら、全部変わってしまうことが嫌だったんですよね。そこで、2年生以上をチーム作りに加えることにしました。(立川監督)」

良いものを受け継ぎ残していこう、と今年から取り入れた新たな試みだ。


先発15人中4年生は5人。だが、姿勢の部分で手綱を締めたのは4年生たちだった。試合終了間際には「最後までちゃんとやり切ろう」と後輩たちに声を掛けた11番・淡野福選手(4年生)

期待通り、3年生ながら由比藤ゲームキャプテンはピッチの上でもリーダーシップを発揮した。

プレーが止まる度に選手たちに声を掛け、チームのベクトルを揃える。昨年よりも目に見えて明るくなった、その雰囲気を先導した。

「今日の勝ち方は最高でした。昨年までだったら同点に追いつかれた時に落ちてしまい、そこからどんどんトライを取られ引き離される展開になっていた。だけど今日は同点になった時にみんなでトークをして、まずは1トライを取って、というプロセスを踏めたことが一番の勝因だと思います。(由比藤ゲームキャプテン)」

昨年度の反省を活かし、『トライを取られても落ちない』を意識し続けた成果が表れた、と喜んだ。


主はFWリーダー。高校ではバイスキャプテンを務めた。「最終的に一部に上がる、それだけ。毎日、入替戦だけを意識して練習しています。」

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試合後、「めっちゃ嬉しい」と繰り返したのは2年生のFLラリー・ティポアイールーテル選手。

ポジションに合わせ、体重をコントロールできる意志の強さを兼ね備えるアイランダーだ。

「昨年は入替戦で敗れ、本当に悔しい思いをしました。この春のスタートも、青山学院に敗れた所から始まっています。そこからチームみんなでもう一度一つに団結して今日勝てたこと、本当に嬉しいです。」

仲間からは「誰よりも日本人のマインドを持っている」と称されるプレイヤーは、この日も攻守に大貢献した。

その原動力は、ただ一つ。

「強い関東学院を復活させたい。」


ブレイクダウンでペナルティを奪うと、雄叫びをあげた。チームへの愛着心は人一倍強く、ベンチに下がった後も声を出し続ける。1年次には、関東学院が強かった時代の動画を見てはチームの歴史を学んだ

ティポアイールーテル選手の高校の1学年後輩で、倉敷高校を卒業したばかりのNo.8丸尾瞬選手もまた、この日何度もタックルに刺さった。

小学1年生からラグビーを始め、FW畑を歩みながらも高校時代はスタンドオフやセンターも経験。

「倉敷高校の監督が、どこのポジションでもできるようにした方が良いという方針の方。その経験がとても活きています」と肥やしの源を語った。


「1部に上げよう、という思いが先輩たちはとても強い。そこに自分もついていけるよう、ひたむきにプレーします。(丸尾選手)」

怪我人も多い、春シーズン。教育実習のため、長期でチームを離れることだってある。

由比藤ゲームキャプテンは言う。

「試合に出ているメンバーがベストメンバー。このメンバーで勝ち切れたことに、チームの底力が上がってきたと感じます。」

今季のチームスローガンは『トラスト』。

いかに、自分たちを信じ切れるシーズンになるだろうか。

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試合後コメント

立川剛士監督

春、最も注力していることはチーム作り。オフフィールドでの人づくりも含めて、取り組んでいます。

今日の試合は、1年生のNo.8丸尾瞬くん、2年生のFLラリー・ティポアイールーテルくんが良かったですね。二人とも倉敷高校出身です。

もう一人1年生で頑張っている楠田祥大くんは、身長197㎝。試合に出しながら、4年間掛けて成長させようと思っています。

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