後半
後半もNZU11番 アシ選手の力強いボールキャリーからスタートする。
ゴールポスト真下にトライを許せば、21-27。
続け様にゴール前まで攻め込まれたが、ここはモールディフェンスで粘った。
前半最後に許したモールトライ、それを修正した後半冒頭。
FWの面々が、喜びを表す。
すると後半最初のチャンスは11分。
マイボールラインアウトからボールを中央に運ぶと、逆目に振り戻す。
SH土永選手からのパスを軽やかなワンタップで次に繋いだのは、SO楢本選手。そのボールを受け取った14番・御池選手はすぐさま裏に蹴り込むと、バウンドした先で自らキャッチした。
ゴール目前に迫った所で捕まれば、サポートに入っていた6番・小林典大選手にボールを託す。受け取った小林選手は、体を翻しながらグラウンディングした。
「仲間が繋いでくれたボールを、しっかりトライに結びつけることが出来て良かったです。(小林選手)」
28-27、一進一退の展開は続く。
しかし後半15分、18分にはNZUに連続トライを許すと、あっという間にスコアは28-39。
11点のビハインドへと変わった。
これ以上引き離されたくないU20日本代表は、続々と選手交代のカードを切る。
全てのリザーブの選手を、後半21分までに投入した。
すると、フレッシュレッグたちが勢いをもたらす。
唯一大学1年生から『飛び級』でメンバー入りを果たした23番・矢崎由高選手が左ウイングの位置に入ると、鮮烈なファーストタッチを見せる。
早稲田大学の1学年先輩、野中健吾選手(12番)からボールを受け取ると、相手ディフェンスを1人交わした所で左足インサイドでグラバーキックを蹴り込んだ。
その一蹴りでまずは3人を抜くと、一度だけ相手の位置を確認してから低くバウンドする楕円球をもう一度ドリブル。
インゴールでボールを拾い上げれば、中央に寄りながら落ち着いてトライを決めた。
「(野中)健吾さんから良い状況でパスをもらって、内側も良いコンタクトをして良い状況を作ってくれていたからこそ、結果的に最後僕がボールを持ってトライできました。(矢崎選手)」
圧倒的なスキルに、会場に詰め掛けたラグビーファンも歓声を上げる。
35-39、まずは4点差に詰め寄った。
この日、会場が最も沸いたのは後半30分だったろう。
相手陣ゴール前で3度、マイボールスクラムを組むと、3度とももれなく押した。
2度目のスクラムでNZUの右プロップにイエローカードが提示されれば、3度目のスクラムでもポールにぶつかり押し切れない所まで16人の塊を動かす。
すかさずレフリーがポールの真下に回り込み、右手を上げ長い笛を吹けば、認定トライが認められた。
「サモア遠征でも、スクラムで勝てていました。この日もスクラムで優勢に立っていたので、ここはみんなで『押そう』と。押し切る、ということはみんなで意識していました」と話すは、後半2分から登場したLO佐々木柚樹選手。
スクラムの核を担うHO大本峻士選手も「ハーフタイム中にはリザーブのフロントロー3人で『一斉に交替したら、スクラムでまずは勝ちに行こう』という話をしていました。その中でのゴール前スクラム、押し切れて気持ち良かったです」と笑顔を見せた。
42-39。ついにU20日本代表が逆転に成功する。
勢いに乗ったジャパンは、続いて左サイドで連携を見せる。
12番・野中選手のボールキャリーから8番・宮下晃毅選手へと繋ぎ、内にステップを切りながらオフロードを放れば、大外に回り込んだ6番・小林選手へと託した。
後半32分、NZUを引き離すトライが決まった。
「(小林)典大が呼んでくれたので、これはパスせな、と放りました(宮内選手)」
その僅か3分後にも、U20日本代表はダメ押しのトライ。
10番・楢本選手が中央で蹴り上げたキックパスを受け取った14番・御池選手が、有終のトライを決める。
試合終了間際にはNZUに1トライ返されたが、最後はマイボールスクラムから落ち着いてボールを蹴り出しノーサイド。
U20日本代表が、52-46でNZUに勝利した。
御池蓮二、野中健吾。
速くて強くて巧い選手たちが、確実性を見せた。
小林典大、栗田文介。
高校日本代表候補として一昨年度のエキシビションマッチに参加していなかった選手もまた、大きく飛躍した。
試合後、ロブ・ペニー監督監督は言った。
「才能ある選手たちを選べる立場にいることは、贅沢な悩みです。」
このチーム最大の目標は、6月末から南アフリカで開催されるワールドラグビーU20チャンピオンシップでの勝利。
遠征メンバー30人入りに向けた争いは、混戦を極める。