東洋大学
昨季、初めての大学選手権出場を果たした東洋大学。ゆえに今年の春季大会では、チャレンジの日々を送った。
「春は初めてAグループで戦いました。すごくやられた。」
そう話すは、タニエラ・ヴェア キャプテン。強豪揃う春季大会Aグループでは、勝ち星がないどころか、勝ち点を0から動かすことができなかった。
「だけどそれでチームが落ち込むことはなかったです。何を直すか、とみんなで考えることができた。それを夏に試して、秋に結果として出せているかな」と、この半年の歩みを振り返る。
この日は2人の先発1年生が活躍した。
開幕戦メンバー入りするも出場機会なく、この日がリーグ戦デビューとなったのはCTB浅尾至音選手。ボールを持てば、何度もゲインラインを突破した。福永監督は「十分、プレイヤー・オブ・ザ・マッチと言われてもおかしくない活躍をしたんじゃないかな」と評価する。
バックスを束ねるバイスキャプテンの杉本海斗選手も「前半は緊張もあったと思うが、ハーフタイムで切り替え、後半は持ち前の度胸と気の利くプレーを見せてくれた」と浅尾選手の活躍を喜んだ。「本人は緊張していたと思いますが、しっかり試合中はプレーに集中できていて、良いキャリーも出来ていた。1年生らしいフレッシュなプレーでトライも取ってくれて、助かりました。嬉しかったです。」
振り返れば杉本バイスキャプテンも、1年次から試合に出続けている。同じ道を辿る後輩だからこそ、その気持ちを誰よりも理解し、エールを送ることができるのだ。
「1年生の時には、正直何も考えなくていいというか。自分の好きなプレーを気持ちよく出来たな、と今振り返れば強く思います。学年が上がるにつれてチームのことを考えないといけなくなるんです。1年生は自分のことだけをしっかり考えて、プレーで出せればいい。もっとのびのびとやって欲しいな、と思います。」
もう一人の1年生、坂本琥珀選手は14番で2戦連続のスターティングメンバー入り。キックオフボールをキャッチした相手選手へ一目散に駆け寄り、球出しを遅らせる。小柄ながらも確実なタックルで、この日も次々と相手プレイヤーを仕留めた。
小学生の頃には『寝技のある空手』とも表現される空道で日本チャンピオンに輝いた。「だからタックルとか全く怖いと思っていないと思います」と福永監督は笑ったが、きっとその通りなのだろう。どのプレーを切り取っても、恐怖心は全く伝わってこない。
「彼の最大の強みです。そしてスピードも本当に武器。そこを全面に出して、強みをもっと強化してほしい。(杉本)海斗にも、1年生の時にはそう伝えていました。強みを伸ばせばいい、と。」
1年生だからこそ、できることを真っ直ぐに。素直に、そして恐れずに。チャレンジの日々は、始まったばかりである。
昨年、東洋大学が1試合も手にすることができなかった、勝ち点5。今年は開幕から2戦続けて、満額回答を手にしている。
「これは大きいです。でも本当に1試合1試合、やるしかない。毎回、毎日、毎練習。目の前の練習に全力です。(福永監督)」
大学選手権初出場を果たした昨季。だが今季は目標を問うても、一言すら『大学選手権』と口にしない。
今年、試合日に着用するチームTシャツには、スローガンである『MOTHER』の下に6か国語の『ありがとう』を記している。
日本語、フィジー語、サモア語、トンガ語、英語、そしてアフリカーンス語(南アフリカの言語)。
東洋大学ラグビー部とは、チームであり、世界中から集まる一つの集合体。そしてひとりの『マザー』から生まれる、家族である。
家族だからこそ、大事にしなければならない『ありがとう』を背に。
全力を出し切ったその先に、もう一度チャレンジしたい場所は訪れる。
試合後コメント
福永昇三監督
(先週末も試合があったため)今週は準備期間が短かったですが、学生中心にしっかりと準備してくれました。そしてその準備したことを、リーダーの2人、そして4年生を中心に出せた試合だったと思います。学生たちを称えたいと思います。
タニエラ・ヴェア キャプテン
1週間準備してきたことを試合にそのまま出せたことが嬉しいです。
杉本海斗バイスキャプテン
FWがモールなど強いプレーで取り切れたこと、バックスはスピードを活かして外で取り切れたこと。今日、準備してきた中でそれぞれ出せたので、非常に良かったです。