試合概要
第103回全国高等学校ラグビーフットボール大会埼玉県予選 準決勝
【対戦カード】
川越東高校×深谷高校
【日時】
2023年11月11日(土)13:35キックオフ
【場所】
熊谷ラグビー場Aグラウンド
試合内容
川越東高校 51 – 0 深谷高校
今季3冠中の川越東と、準々決勝での激闘を勝ち抜いた深谷の一戦。
深谷ボールで試合が始まると、先制は川越東。
積極的にボールを動かし、最後は15番・南雲優佑選手がトライを奪った。
その後両チーム互いに1本ずつPGを狙ったが、スコアできたのは川越東のみ。
8-0で迎えた前半ロスタイム、川越東はラインアウトから2番・鈴木一ノ心選手が押し込み追加点を決めた。
13-0と川越東のリードで前半を折り返す。
対する深谷はこの日、これまでとは戦い方を変更した。
川越東に勝つためには、相手FWの体力を奪う必要がある。大きなスペースにボールを運ぶよりも、まずはFWが痛いことをしよう。
自らの体力が奪われるリスクを承知の上で、それでも「喜んでやります」と深谷のFW陣は受け入れた。
この日掲げたテーマは『20分間ファイトし続ける』。
見事プランを遂行しきった深谷フィフティーン。前半30分まで、僅か8点差で食らいついた。
だがその代償は大きかった。
後半1分、川越東4番・小泉諒人選手が鮮やかなトライを決めると、徐々にグラウンドを支配し出すは川越東。
1番・寺山公太キャプテンの公式戦初トライを含む計5トライと、12番・五十嵐舜悟バイスキャプテンのドロップゴールなどで次々に得点を決めた川越東が、さらに引き離した。
51-0。
川越東が、2年連続の決勝進出を果たした。
昨年、花園最有力と謳われ挑んだ決勝戦。
川越東は7-14で昌平に敗れた。
試合終了間際に1トライ返したのは、現在3年生のWTB・石本瑛(いしもと はゆる)選手。
「あの時のハユルの涙を忘れることができない」と話すは、川越東でマネージャーを務める齋藤成那。
望月雅之監督は言う。
「なぜ負けたかを模索した1年でした。」
あっという間の1年だった。
リベンジを果たす時はきた。
今季3冠という自信を胸に、堂々と決勝戦の舞台に立ちたい。
「とにかく勝ちたい。勝ってリベンジしたい。(望月監督)」
同校史上初となる全冠制覇を目指し、18日(土)、決勝戦の60分間を戦う。
最後のノーサイド ~深谷
最強のチャレンジャーになるため、ハイリスクを選択した深谷陣営。
「めちゃくちゃしんどいし、自分たちも同じようにダメージを食らう。それでもやる覚悟はあるか。」
山田久郎監督の投げかけに、FW陣は「喜んでいきます!」と答えた。
王者・川越東戦に向け、成長を続けた1週間だった。
セットプレーではいち早くセットしたこと。
キックオフも、間髪入れずに蹴り込んだこと。
相手に背中を見せない、という意思を体現した60分間だった。
チームを率いた馬場健太キャプテンは言う。
「この1週間本当に、1年の中でも一番伸びた1週間だった。それでもこの点差で跳ね返した川越東には、自信に思って欲しい。」
自らの成長を選手たち自身が感じ取るほどの濃い時間を過ごした。
後半31分、川越東に7トライ目を取られると、円陣の中で涙を流したのは馬場キャプテンら3年生たち。
馬場キャプテンの左隣にいた飯塚祐真バイスキャプテンは右手を伸ばし、笑いながらキャプテンの頭を叩いた。
そして円陣が解かれれば、一瞬、2人で肩を組む。
とびきりの笑顔だった。
大学では、別のチームのジャージーを着ることになる。
同じエンブレムを再び胸にする、その日まで。
「チームみんなで一緒になって、今日の試合も最後まで顔を上げて戦えた。すごく楽しい3年間でした。(飯塚バイスキャプテン)」
深谷で過ごした時間を、次のステージへ。そして次の代へと、引き継ぐ。
試合後、会場前では多くの友人や家族らが選手たちを出迎えた。
例年よりも多いその数に「3年生の力だな」と、あるスタッフは呟いた。
その中には、準々決勝で敗退し、3年間をライバルとして戦った仲間たちの姿も。
準々決勝で戦った熊谷高校キャプテンの姿を見つけると、深谷・小島悠輔部長は「ごめん、熊谷高校の分まで戦うって言ったのに」と手を差し伸べた。
熊谷高校のキャプテンは、右手拳で胸を叩き「気持ちは伝わりました」と答えた。
埼玉でともに戦った3年間。
高校ラグビーに、幕を下ろした。
SIDE STORY ~試合を終えて