帝京大学
「最後の最後まで、涙見せやんとこ、って思っていたんですけど。(前日の)ジャージー渡しの時もそうでした。かなわなかったですね。」
みんなの顔を見た時、全て出てきました、と江良颯キャプテンは笑った。
彬子女王殿下から授かったトロフィーを愛おしそうに眺めた
この1週間、仲間の表情や行動を見れば、緊張が見てとれた。
自身は比較的緊張するプレイヤーではない、というが、それでも昨晩はよく寝付けなかったという。
「僕自身緊張しているなら、みんなはもっと緊張しているんだろうな。」
相馬朋和監督曰く「ピンチになればなるほど、疲れれば疲れるほど、江良と奥井(章仁)はイキイキとする。」
この試合を決定付けるラストトライを決めたのは、江良キャプテンだった。
その幾ばくか前から足を伸ばす仕草を見せていたが、最後は両足を攣りながらインゴールへ飛び込む。
ノーサイドの瞬間はベンチで迎えた。
配分を考えずに80分間プレーし続けられるフィットネスをつけてきた、と自信を持ってはいたが、この日のイレギュラーなコンディションは想像以上に体力を奪った。
『One Heart』を掲げ、歩んだ1年間。
帝京大学ラグビー部でプレーできる、1秒1秒を大切に。最後の80分間を戦い終えると、涙と笑顔とが入り混じった。
「仲間と共に歩んできたプロセスは間違いじゃなかった、と。幸せやな、と実感が沸いてきました。(江良キャプテン)」
味わったことのない幸せを噛み締め、「仲間に感謝しかない」と何度も繰り返した。
江良キャプテンにとって、『仲間』とは。
「しんどい時、苦しい時。どんな時でも常に支えてくれる、助け合えるのが仲間としての理想形。その理想が、帝京大学ラグビー部の伝統であり、4年生の力です。仲間の力を常に感じていました。本当に感謝しています。」
12番・ 大町佳生
先発のインサイドセンターに名を連ねたのは、2年生の大町選手。
「センターは争いが激しくて、シーズン最後の最後までどうなるか分からなかった。大学選手権は準々決勝・準決勝とメンバーから外れましたが、そこでマインドを切らさずにしっかりと準備ができていたので、決勝に出ると決まった時にはマインドの部分で整っていました」と諦めぬ闘争心をのぞかせた。
今シーズンはU20日本代表として、初めて海外へ。桜を胸にするチームの主将として、幾段階もの経験値を駆け上がった。
それでもこの大学選手権決勝には、また少し異なる緊張感が。だからこそ後半23分に交替するまで「自分のプレーができたことを嬉しく思います」と胸を張った。
来年からは上級生になる。帝京には、見本とすべき先輩も多い。
「1年生の時には(現・東京サントリーサンゴリアスの髙本)幹也くんが、今年は(江良)颯くんや(奥井)章仁くん。試合に出ている身として、自分もこれからはチームを引っ張っていかなければならないという自覚があります。来年の4年生たちとしっかり関わりをもって、来年もここで優勝できるチームを作っていきたいなと思います。」
20番 カイサ・ダウナカマカマ
第3列のインパクトプレイヤーは、1年生のダウナカマカマ。ジュニア選手権のリザーブから、秋シーズンはスタートした。
チャンスを掴めば、しっかりと活躍。ジュニア選手権決勝では、スタートメンバーに名を連ねた。
「ジュニア選手権で優勝したら、もう一つ上、この大学選手権にも出場したくなりました。」
ターゲットを、ここ大学選手権決勝でのメンバー入りに据えた。「日本一になりたい。」
この日は後半9分から出場。ボールキャリアーとして大きなインパクトを残した。
来年こそは先発出場を、と狙う。
「バックロー、そしてロックも練習しています。ポジションはどこでもいい。ラグビーがしたいです。先発で出たい。」
新たな1年は、すでに始まっている。
試合後コメント
相馬朋和監督
明治大学さんの厳しいプレッシャーを受けながらも、ただやってきたことを信じて、学生たちが1秒を積み重ねる姿を誇らしく、楽しく嬉しく見させてもらいました。
素晴らしいチームだなと思いました。
ジュニア戦で明治さんにやられましたが、最後笑って終わることができた。良いチームをキャプテンが作った、という気持ちです。
試合後は自ら明治・神鳥監督のもとへ足を運んだ
江良颯キャプテン
部員全員の姿を見て、『One Heart』になれた、1年間積み上げてきたものは間違っていなかった、と思えました。
今まで味わったことのない嬉しさです。みんなの顔が嬉しくて、幸せで、噛み締めながら過ごせました。