14:40/スタジアム
プールC
セント オーガスティンズ カレッジ(オーストラリア)29-14 東海大学付属相模高等学校(神奈川)
東海大相模高校
今大会のターゲットは「もちろん、優勝。予選リーグを1位通過して、日本勢初の優勝を獲りにいこう」と目標を立てたと話すは、三木雄介監督。
だが「簡単ではないですね」
今大会屈指の強さとオーガナイズ力を誇るオーストラリアチームを相手に、悔しい敗戦を喫した。
選手層のボトムアップも同時に狙う。今大会、入学間もない1年生を複数人メンバー登録した。
1日目に先発した6番・細田大和選手、この日の20番・加賀谷太惟選手、23番・青野龍樹選手は1年生。
「出せるタイミングがあれば経験させよう、と思っていました。次世代への投資です」
フッカーも、キャプテンの矢澤翼選手ではなく金澤壱樹選手を先発させた。
「いまは金澤を鍛えるタイミングかな、と。矢澤と同じく3年生ですが、矢澤の方が経験値が高いので」と理由を説明する。
不安定だったのは、セットプレー。「コンテストできなかった」と三木監督は振り返った。
「懐に潜らされた感がありました。腰を折った時の、頭から腰までの長さが全然違う。スクラムでヒットに行こうとしても、相手は出てこず、すれ違って落ちてしまったようです。全てのサイズが日本の規格外で、相手の高さにアジャストできなかった」と世界規格を学んだ。
それでも、成長著しい選手たちの姿を強く感じ取った大会2日目。
「今日は『本気で勝ちに行こう』という気持ちを作っていました。その姿勢に、成長を感じました」と目を細めた。
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「自分のランからトライを奪えた。自分の強みだと思って良い、と思えた」と自信をのぞかせたのは、不動の11番・恩田暖選手。
1年次からレギュラーメンバーとして花園に出場し、満を持して最終学年を迎えた。
センセーショナルな1トライ目だった。
前半21分、相手が蹴り返したボールをキャッチすれば、何人も置き去りにしながら鋭いステップと世代屈指の加速力で前進した。
ゴール目前まで進むと、15番・五島悠翔選手に託し、トライ。
世界への名刺代わりとなるトライアシストを決めた。
キックカウンターは、関東新人大会でも見せた得意プレー。
このシーンにおいても「ボールをキャッチする前に、相手のディフェンスにギャップを見つけました。そこを突こう、とキャッチする前から決めていた」という。
年始には、セブンズユースとしてフィジー遠征を経験。海外勢との試合はこれまでにも経験あるが、15人制では今大会が初である。
「コンタクトレベルが違った。体が硬くて、一発で倒せず繋がれてしまいました。2人目の寄りも早かった」と舌を巻く。
そんな中でも、通用したと感じたのは東海大相模のフォワード。
「うちのFWのコンタクトレベルは、世界でも通用すると肌で感じることができました。自信をもってこれからの大会に挑める」と経験を自信に変える。
最も印象的だった一場面は、後半も深い時間帯。
恩田選手が全速力でキックチェイスに走り込むと、相手の足を刈る。
すぐさま追いかけてきたのは、HO矢澤翼キャプテン。その僅か数秒後には、FW6人が大きな塊を瞬く間に作り上げ、ボールを守った。
疲れの見える時間帯にこれができるのが、今年の東海大相模なのだ。
三木監督も「狙ってやっていること」と日頃の成果を語る。
もちろん、目立ったのはFWだけではない。
13番・岩崎倫也選手がインターセプトしビッグゲインを決めれば、14番・福岡遼選手は相手のキーマン、SOジョー・ウォルシュ選手をマンマークのごとく追いかけた。
ボトムアップが確実に図れている姿を示した。
一方、試合後に神妙な面持ちを見せたのは矢澤キャプテン。
カルチャーショックを受けた。
「相手の方が、ラグビー楽しんでたな、って思います」
その最たるシーンが、試合後の一コマ。
全員で輪になり、勝利ソングを歌う姿を見て「自分たちにとってはあり得ないこと。チームが一つになって、ラグビーを考えて楽しんでいるんだな、って感じました」と感銘を受ける。
「良いラグビーを教えてもらいました」
ラグビーに対するマインドの、新たな側面を知った。
年始に行われた予選会では、御所実業に敗退。全国選抜大会での4強入り以上で本大会への出場が決まるため、自力での出場権獲得を目指したが、準々決勝敗退に終わった。
今大会には推薦枠として参加しているからこそ、チャレンジすることがこのチームの主軸。どれだけ強みのFWを活かせるか、どれだけ海外の大きい選手たちに低く刺されるか、をテーマに挑んでいると矢澤キャプテンは言った。
「15人それぞれに役目があります。圧倒的に強いNo.8藤久保陸のような選手もいれば、クレバーな人間も必要。だから僕は、全体を俯瞰して見られる役目を買って出たいと思います」
全国選抜2回戦・常翔学園戦では、チームが始まって以来初めて「チームが一つになれた」と涙を流した矢澤キャプテン。
だがこの試合を経て「まだまだだった、と現実を教えられた」と表情を引き締める。
まだ、上を目指せると知った大会2日目だった。