11:20/スタジアム
プールD
サウスランド ボーイズ ハイスクール(ニュージーランド)73-0 ジェスイット ハイスクール(アメリカ)
11:20/フィールドA
プールD
國學院大學栃木高等学校(栃木)7-7 東福岡高等学校(福岡)
國學院栃木
東福岡の選手たちは高身長。190cm以上の選手がラインアウトのジャンパーに並ぶ。
國學院栃木としては、身長で勝てない。
だから「相手がラインアウトを取る想定」での対策を講じてきたという。
「最初の2度のモールでは、相手を引き倒しました。でもその後は、じゃんけん状態。相手がパーを出した時にはチョキを出して勝てていたのですが、グーを出された時にトライを取られてしまった」と振り返るは、LO笹本直希キャプテンだ。
國學院栃木としてこれまで積み重ねてきたことは発揮できたが、雨風強いコンディション下、ミスも起こった。
一番は、やはりボールを継続したのちの最後の一手。
トライへの一手が、あみだしきれなかった。
「決めきる力が、まだ不足していると感じます」
ボールを繋ぐことまではできているからこそ、個々の『コクトチベーシック』を更に向上させ、オフロードパスでのチャンスメイク、ピックゴースキルを磨いていきたいと笹本キャプテンは話した。
笹本キャプテンの突如現れるタックルは今大会でも連発。「ふだん対戦することのない海外の選手たちや九州のチームを相手に、楽しめています」とほほ笑んだ
大会2日目の夜には、全チームが勢揃いしたウェルカムパーティーが開催された。
各チームそれぞれに出し物を披露することが、この大会の習わし。
國學院栃木は、世界中でヒットした「カンナムスタイル」で勝負に出る。
だが披露順が最後から3番目だったため、既に韓国チーム、そして関東学院六浦と2度、同曲でのパフォーマンスをやられてしまう。
「自分たちの考えが浅はかだった」と苦笑いを見せたが、しかし「3度目だからこそ、みんなもノッてきてくれて。全選手の半数近くが檀上に上がってきて、ステージがぎゅうぎゅう詰めの中大いに盛り上がりました」と笑顔を見せた。
日常生活から少し離れた、だが日頃の成果を発揮する場。
何より、違う文化があることを受け入れる場。
貴重な時間を、過ごしている。
◆
雨中戦。
絶対的にボールが滑る環境下ゆえ、キーポイントをキックに定めたのは、SH下井田雄斗選手。
相手のミスから攻守交替が起こった時に、相手の裏に蹴ることを意識し挑んだという。
「最初のキックが成功したので、良いシナリオで良いゲーム展開ができたなと思います。でも東福岡さんは伝統あるチーム。勝ち切れませんでした。自分たちのミス、そして修正能力がまだなかったな、と思います」と話す。
國學院栃木は今大会「どのようにアタックプランを描くか」をテーマに掲げ挑んでいる。
「セットプレーからバックス対バックスの勝負になった時、いかにバックスで取り切るか、を考えています。僕たちはFWのチーム。いつもFWに助けられているからこそ、バックスが取り切りたい」というが、まだまだ課題は残る。
「スクラムから出たボールを一番最初に触るのが、僕。そこでスタンドオフにしっかりと良い球を放ることを意識しています」
今日はそのシチュエーション下でボールを落としてしまった。「良くなかった」と下を向いた。
9番、10番、12番。
ゲームをコントロールするポジションに、キープレイヤーが揃う。
3人が介し打ち合わせする姿も、試合中多く見られた。
「でも、その3人だけじゃ勝ち切れない。バックス全員が意思統一できるように、全員が力を発揮できるようにがんばりたいと思います」
兆しは見えた。
ニュージーランドとの試合で突破口を開いたのは、12番・福田恒秀道選手。通用する、起点にできる選手を擁すると改めて知った。
だが、福田選手はまだ2年生。
「ツネが抜けた後のサポートに、僕たち3年生が入らないといけない。コクトチにビッグスターはいません。2年生が切り拓いてくれた道を、泥臭くトライまで繋げたいです」
國學院栃木は大会4日目、イングランドのトルロ カレッジとの対戦に臨む。
東福岡
大会2日目に行われた、ニュージーランドとの一戦。
1歩、いや5歩前進したことを思わせる戦いぶりだった。
だが、2日後には後戻り。
試合後、選手・コーチ陣の表情は晴れなかった。
「そんな簡単だったら面白くないからね」と藤田雄一郎監督は話す。
「ニュージーランドとのゲームを良い形で終えて、この國學院栃木戦をターニングポイントと位置付けていました。でも上手くいかないことの方が多くて。簡単なミスが続いて、思うようなゲームができなかった。全国選抜大会1回戦のようなゲームになってしまった」と俯いたのは、No.8古田学央キャプテン。
U17日本代表であり、昨年の花園決勝戦にも下級生として唯一先発出場した深田衣咲選手は「ミスが続くと、立て直すことがまだできない」と話す。「一つのミスが起こっても、切り替えられるようにベーシックスキルを磨きながら、どんどん試合をして、試合経験を積んでいくしかない」と言った。
半田悦翔選手の強い縦を活かすため、深田選手がフルバックへとポジションを移したのは4月に入ってから。「僕の強みは、いろんなポジションができること」
大きな成長を見せた、4月のラストゲーム。
だが大会3日目の朝「慣れがダレになってしまっていないか」と藤田監督は選手たちに問いかける。
上向きの成長曲線を描く中、時にはスランプのような時間もやってくるだろう。だからこそマイナスに向かう角度と距離をいかに小さく抑えられるか、そしていかに早く上向きの矢印に変えることができるチームになるか。
実際、この日のゲームは、その影響が少し出てしまったかもしれないと古田キャプテンは言った。
「私生活がルーズになってしまったら、いつもしないようなミスもしてしまう(深田選手)」
「藤田先生がいつもおっしゃる『小事大事』に立ち返るしかない(古田キャプテン)」
試合中、藤田監督が選手たちを呼び寄せ、直接声を掛ける姿も多く見られる今大会。
「僕も気持ちが入っているんでしょうね」と藤田監督は言った。
それでも今大会だって、東福岡は東福岡だ。
大会1日目、試合を終えた古田キャプテンは、真っ先にベンチ横へと歩を進めた。
そこにいたのは、小学生の男の子たち。
「めっちゃキラキラした目で見てくれていました。一番、ベンチの近くで応援してくれていた。選手の一員でもあるクマも持っていてくれました」
知り合いだったわけではない。でも、「応援してくれていたから」当たり前のように駆け寄り、頭を撫で、お礼を伝え名前を聞き、最後に「ヒガシにおいでね」と加えた。
強い男は優しい、を当たり前のように受け継ぎ体現する選手たちの姿が、ここグローバルアリーナにはあった。
藤田監督は大会中、試合を見ていた子どもの、つぶやく声を聞いたという。
「やっぱり東福岡ってカッコイイな」
そのワンシーンを伝え聞いた古田キャプテンは、嬉しそうな表情を見せた。
ヒガシに入ってよかった。
地元の大会で、地元の方々、しかも小さい子たちからそう言われるのは嬉しい。
「応援されている分、勝たないとですね」
未来のフェニックスジュニアを悲しませないように、残り2日間もカッコイイ姿を見せたい、と話した。
◆
「昨季の花園決勝戦で敗れた後、3年生の先輩たちに『来年頼むぞ』と言われました。責任をもってやらなきゃいけないなと思っています」
そう話したのは、2年生のFL古澤将太選手。
春日リトルラガーズクラブの先輩でもある松﨑天晴先輩(現・青山学院大学1年)や、三木翼先輩(現・関西大学1年)から託された『来年頼むぞ』を胸に、東福岡のグリーンを着ている。
昨夏は次世代を育成するネクストの一員として、菅平合宿へと上がった。
国体が終わった10月辺りからAチームに昇格すると、1年生ながら冬の花園にも出場。
今季はチームの中心選手として、スタートから出場を続ける。
今大会でも、ボールを持てば残す強いインパクト。
特にニュージーランドとのゲームでは、当たり負けせず。相手を弾き飛ばすことさえあった。
フィジカルで負けなかったことが「自信に繋がった」と話す。
東福岡の一員として、ラグビーと向き合うために。
東福岡が大切にする『小事大事』を、私生活でもラグビー面でも「細かいことに意識を向け続けたい」と言った。