ワンチームになった合同チーム
東京都中の高校から選抜された、オール東京スコッド。
佐賀の本国スポへと来ている23名の選手たちだけではなく、その裏には、大枠となった50名の登録選手たちがいた。
準決勝前日、戸田竜司監督(東京)は選ばれていない27名の選手たちに、あるお願いをする。
「東京から力を貸して欲しい」
我々は、勝つために試合をする。信じてくれ。
グループラインに続々と、応援メッセージが届いた。
動画でエールを送ってくれた、これまでともに合宿をした仲間たち。
関東ブロック大会ではメンバー入りしながらも、コンディション整わず本大会への出場が叶わなかった選手たちの姿もあった。
「選ばれていない選手たちの分まで、しっかりとプレーしようとマインドセットになれた」と話したのは、國學院久我山でキャプテンを務め、オール東京ではバイスキャプテンを担う齋藤航選手だった。
加えて前夜のミーティングでは、ある一つの動画がスタッフ陣から提示された。
先月、激しい豪雨に襲われた石川県の能登半島のニュース。自宅から150キロ以上離れた福井県の沖合で発見された、中学3年生の女子生徒のエピソードを伝えた。
「みんなは今、何も奪われていない。ラグビーに集中している今だからこそ、少し視野を広げてみてほしい。この環境が、いかにすごく恵まれているか。だから感謝して、準決勝に挑もう」(戸田監督)
ふだん所属するチームとは異なったアプローチでのミーティングに「感動しました」と話した齋藤選手。
「違う学校から集まった、コンバインドチームのオール東京。でもあのミーティングで、みんなで同じ方向を向けたことがこの結果に繋がったのかな、と思います」
仲間の信頼を背に、同じ頂を目指し戦う覚悟が備わったオール東京。
試合直前。戸田監督は、選手たちに伝える。
「ベスト4に残っているコンバインドチームは、東京都だけ。コンバインドチームの価値を示そう」
そして、続けた。
「もう我々はコンバインドチームではない。ここまできたら、最高のワンチームだ!」
だから自信もってプレーしてくればいい。
最後に大きく背中を押し、グラウンドへと送り出した。
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