先発30人全員が1年生。新人早慶戦を22-7で慶應義塾が制す「良い試合をしに来たんじゃない。勝ちに来た」

早稲田大学

早稲田として負けられない、というプライド

ゲームキャプテンを務めたのは、早稲田実業出身のCTB山口滉太郎選手。

「1年生にケガ人も多い中、僕は上のカテゴリーでプレーさせて頂いていること、プレーで引っ張るということを評価されてゲームキャプテンを任されたのだと思っています」と理由を説明した。

言葉どおり、ダウンボールに対するリアクション含め、キャプテンとしての姿勢を背中を示す。

「雨のコンディション下で、チームとしてやると決めたことをやり切る一貫性を大切にしていました。1対1のタックル、ブレイクダウンにボールキャリー、ボールセキュリティの部分。それでもすべての面で相手が上回っていたな、と思います」

練習期間は、1週間。

だが、ふだんから同じカテゴリーで練習をしているため、チーム力に対する心配はなかったという。

「ルーズボールへの反応にこだわってきましたが、上手く立て直すことができなかった」と振り返った。

1ヵ月後には、明治大学との新人戦を控えている早稲田の1年生たち。

あと1回訪れるチャンスに「もう一回自分たちを見つめ直したい。早稲田として負けられない、というプライドがあります。もう一回、基礎の部分から。今年1年間、ルーズボールへの反応、セービングにチームとしてこだわることを『早稲田プライド』と呼んでいるのですが、そこにもう一度立ち返って、やっていきたいと思います」と前を向いた。

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ここから1年生全員で這い上がる

富山県は砺波高校出身。

中学までは柔道に打ち込み、高校でラグビーと出会ったLO宮川侑大選手。

これが初めての団体競技。もっと言えば、初めての球技。

「始めた当初からずっと、ラグビーが楽しいです。ラグビーはコミュニケーションが必須。コミュニケーションを取るうちに仲間と仲良くなれること、練習以外の部分でも多くの人と関わることができること。それが楽しいです」

高校入学時と比べ、身長は5㎝伸び、体重は20㎏増えた。

現在191cm 107kg。大型ロックとして今後の活躍が期待されている。

高校時代は、合同チームを経験した。

部員数は12人。だが高校2年時にはU17北信越選抜としてコベルコカップでプレーし、そのままU17日本代表へと駆け上がった。

早稲田大学への進学を志すようになったのは、ちょうどその頃。

「大学では、高いレベルに挑戦してみたいと思った。高いレベルってどこかな、と思ったらやっぱり早稲田を目指したいと思いました」

総合型選抜III群(スポーツ自己推薦入学試験)の狭き門をくぐり抜けた。

この日、早稲田フィフティーンで最も声を出し、最も熱い気持ちをグラウンド上で表したのが宮川選手。

「自分からエナジーを出して、チームを盛り上げようと意識していた」という。

強いボールキャリーに、気迫のスティール。何より、声でも仲間を熱く励ました。

ここから始まる4年間。

「今日負けたことを次に繋げることが一番大事。ここから1年生全員で這い上がることが必須です。1年生全員、心を入れ替えて少しでも早稲田の荒ぶるに貢献できるよう頑張りたいです」


前半のスティールシーン

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めちゃくちゃ悔しい

「今日の試合は、めちゃくちゃ悔しいのひとこと。早慶戦という伝統ある試合に初めて出させてもらって、先輩たちも勝ちにこだわってきていた中で、今日負けてしまった。悔しいの気持ちでいっぱいです」

第50期高校日本代表の9番をつけたスクラムハーフ・川端隆馬選手は言った。

現在、早稲田ではDチームでのプレーが続く。

「大学に入学して、このグラウンドに立った時にレベルの違いをとても感じました」

正直に言えば、高校日本代表も経験した自分であれば「すぐに上のチームに行けるんかな」と思っていた節もあったと正直に明かす。

でも「全然、そうじゃなかった」。

パスのスキルにスピード、精度。

「どの選手も、どの先輩もみんなめちゃくちゃレベルが高くて、とても良い環境に恵まれているなと改めて実感しました」

下のチームにいるという自身の実力をしっかりと受け止め、イチから謙虚に努力し、早くアカクロジャージーを着られるよう努力している最中だと続けた。

意識していることがある。

「自分が一番、下手くそ。でも自分に自信は持って、毎日の練習でプレーしています」。

謙虚さと、自信のバランスを模索している最中だ。

「今日も負けてしまいましたし、(自分はAチームでなく)下のグレードだし。悔しい環境ですが、全然マイナスに捉えていなくて。自分のプラスに繋がる、とずっと前向きに、ひたすら上を向いて全力でやっています。上に上がろう、という前向きな自分がいます。先輩は本当に上手い。トップレベルの選手たちが周りにいる環境は恵まれています」

アカクロの9番をつけ、荒ぶるに貢献したい。

はやる気持ちをおさえながら、「毎日、一つひとつコツコツと」目の前の一歩と向き合う。

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大田尾竜彦監督コメント

ーー試合の評価について
よく戦っていたな、という印象です。ゲームを作るコンタクトの部分、要は彼らの代の特徴である『体を張る』部分は非常に良かったな、と思います。これからはああいうボールをどう点に繋げていくか、というところ。現時点では慶應義塾の1年生が強かった、ということですね。

ーー1ヵ月後には、明治大学との1年生ゲームを迎えます
ケガ人が戻って来たり、メンバーも変わってきたりします。今日点を取られた所に関しては、個人のタックルやディフェンスのエラーだったので修正していけるかなと思います。

ーー『早稲田プライド』を定めたと聞きました
早稲田として曲げてはいけない部分を大事にしよう、と学生たちから自発的に出てきた言葉です。キャプテンがそういう言葉を使って、選手を鼓舞しています。学生たちから発信されたということに非常に意味があると感じます。『この子たちはこういうことを大事にしたいと思っているんだ』と。自分たちで大事にしたいものしか、最後はプライドとして表れてこないと思うので。自分たちが大事にしたいものを大事にすることが大切です。

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