先発30人全員が1年生。新人早慶戦を22-7で慶應義塾が制す「良い試合をしに来たんじゃない。勝ちに来た」

慶應義塾大学

勝ちに来た

新入生の練習が始まった2月・3月の頃には「新人早慶勝利」を目標に掲げ練習に取り組んできたという慶應義塾大学のルーキーズたち。

ゲームキャプテンを務めたのは、桐蔭学園高校を花園2連覇に導いた経験を有するFL申驥世選手。

「今日のテーマは接点でファイトすること。そして『ラインコネクト&スピード』と呼ぶ、早いセットからコネクトを切らさずにダブルタックルに入るということにこだわりました」

上手くて速い早稲田に勝つために、と設定したこの試合のテーマだった。

ディフェンスで魅せた60分間だった。

個のタックルにダブルタックル。出足早く、気持ちのこもったプレーをいくつも見せた。

とにかく体を張った。

「本当に全員がチームのためにやるべきことをやったし、それを60分間切らさずに体を張ってやり切れた試合だった」と申ゲームキャプテンは嬉しそうに言った。

試合前に、申ゲームキャプテンが仲間伝えた言葉がある。

「早稲田を相手に、良い試合をしに来たんじゃない。勝ちに来たんだ」

熱い言葉は、チームを一つにした。

「早稲田さんは、高校ジャパン組がケガでいなかったり、明日Aチームの試合に出る(平山)風希がいなかったりと、主力がいなかった面もあると思います。でも僕たちは(選手を)大きく欠くことはなかったので。その分自分たちは結束力が強かったんじゃないかな、と思います」

新人早慶戦勝利から始まる、4年間。楽しみな4年間が始まった。

「ここで勝てたのは嬉しいです。でも、ただ一つ勝っただけなんで。今日の成長を繋げていって、4年後に勝てるようにこの経験を繋げたいな、と思います」

監督含め、選手たちでさえ何年ぶりの新人早慶戦勝利か分からないという偉業を成し遂げてなお「ただ一つの勝利」と言い切る申ゲームキャプテン。

たくましい1年生たちが入部した。

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約束を果たす

埼玉県立浦和高校の先輩であり、慶應義塾大学では第125代主務を務めた山際毅雅氏に誘われたことがきっかけとなり、慶應義塾の門をくぐったのはLO山﨑太雅選手。

「慶應義塾大学のラグビーや組織に憧れを持ちました。一般受験で入ってやろう」と受験勉強にはげめば、一般入試で商学部へと進学した。

この日は、登録メンバー29人中最長身の189㎝を生かしてラインアウトにも飛んだ。

モールでは核となり、うち2つをトライゾーンまで押し込んだ。

入学して2カ月。その吸収スピードには、目を見張る。

「セットプレー、特にモールやスクラムで学ぶことが多いです。でも徐々に通用する部分が増えてきていると感じます。ただ15対15の場面では、自分のセットスピードやコミュニケーションにまだまだ課題がいっぱいあると感じます」

強みと課題を正しく理解することで、自身でも成長の伸びしろを見出している。

浦和高校でともにラグビーに取り組んだ仲間のうち、過半数は浪人中。「僕は現役で進学したので、ラグビーでも頑張って活躍する姿を見せたい」と目を輝かせる。

日本のラグビールーツ校に入学するにあたり、高校の先輩でもある山際OBから伝えられた言葉がある。

『自分は4年間、Aチームで出られなかった。おまえには頑張ってほしい』

その想いを果たしたい、と誓う。

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ありきたりな言葉。だけど、勝って恩返しをしたい

雨。ボールが動くよりも、よりコンタクトが重要な試合になる、と想定し挑んだ一戦。

「自分の強みはコンタクト。ふだん以上に体を張って、チームのために動こうと考えていました」

そう話したのは、CTB安西良太郎選手。

なんどもタックルに入り、なんどもボールを前に進める強き姿勢が際立つ60分間を見せた。

第50期高校日本代表に選ばれ、イングランド遠征へ出向いたのはわずか2カ月前のこと。

「実は僕、高校日本代表に選ばれるまで何も選ばれたことがなくて・・・」とは安西選手。

「国体も、コベルコも。本当に何も(代表関連のメンバーには選ばれて)ない中で、最後に選んで頂きました。チーム(慶應義塾高校)としても全国大会に出ていない中、スター選手たちを上に見すぎていたシーンがあって。でも高校日本代表に選ばれたことで、良い意味で『やれるんだぞ』と思えたし、それをチームメイトにも伝えられたのかなと思います」

この日の対戦相手・早稲田に対しても同じだった。

リスペクトはする。だが「上に見すぎなくていいんだ」と、付属校から進学した仲間には伝え、試合に挑んでいたという。

幼稚舎から慶應義塾に通う安西選手。

大学院に進まない限り、これが慶應義塾生活最後の4年間となる。

「小学生の頃からいろんな先生、指導者の方にお世話になりました。ありきたりな言葉ですが、早慶戦に勝つ、大学選手権に勝つ、という形で恩返ししたいと思っています」

まっさらな桜を経て、黒黄で頂点を目指す4年間が始まった。

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青貫浩之監督コメント

ーー勝利おめでとうございます。いつ以来の新人早慶戦勝利でしょうか?
記憶にないですね・・・。少なくともこの4年間は勝てていません。今日は1年生がすごく勝利にこだわってくれていました。2・3週間前から『この試合に勝ちに行こう』と1年生が自分たちの口から発してくれていたので、すごく良い雰囲気で練習できていて。それが結果となって表れて、良かったと思っています。

ーー監督から選手たちに求めたことは何でしょうか
3つあります。体を当てること。イーブンボールをセービングして、確保すること。キックチェイスに走ること。この3点を、1年生が一番できたんじゃないでしょうか。

ーー心強いルーキーたちですね
今年は一般受験組も多いです。流経大柏出身の西機大河は、1浪ののちに入学・入部しました。

また今年は春シーズンから意図的に1年生を上のグレードに入れ、積極的にメンバーを入れ替えています。上級生たちにとっても良い刺激になるし、良い緊張感が生まれていると感じます。

ーー今季、チームとして大切にしたいことを教えてください
今年は1年中競争すること。そして1年中成長し続けることが大事です。目標を日本一と掲げていますが、それはどこかで停滞したら絶対、慶應は(日本一に)なれないので。他の大学以上に成長を続けることが大事だと思っています。

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