熊谷工業
「激しくやろうという気持ちは伝わってきた。でも、冷静さがなかった」
日大明誠との試合を終えた橋本大介監督は、そう振り返った。
感情の高ぶりが、判断を曇らせた前半。チームに必要だったのは、“ただの激しさ”ではなく、“正しく激しく”だった。
「ラック周りでターンオーバーしようという意識はあったが、出過ぎてしまった。正しくできていなかった」と紡いだのは、今季のキャプテンを務める1番・林蒼太選手。
ハーフタイムに指揮官が与えたキーワード『正しく、激しく』を胸に、後半は修正を施してピッチに立った。
「冷静に、落ち着いてやろう」
後半8分には林キャプテン自らがスコアラーとなって、左中間にトライを決めた。
試合後の橋本監督の表情は柔らかかった。
「日大明誠さんとは、3月20日に練習試合をしていました。関東予選を勝ち上がるべく組んだ練習試合の一番最初のゲームが、日大明誠さんだったんです。日大明誠さんも同じようにスタートして、互いに勝ちぬいて、関東大会の舞台で戦うことができました。だから『どっちが成長したかな』と、そんな話もしていました」
だからこそ相手は、スカウティングもしっかりとしてきていた。
「そういう戦いのなかで勝ちきれたことは大きい」
36-17とダブルスコアをつけた橋本監督の語り口には、確かな成長への手応えがにじんだ。
Dブロック決勝戦の相手は、早稲田実業。
林キャプテンは腰を痛めており、万全ではない体ながら「声でチームを支えたい」と強い眼差しで語る。
できる範囲の中で、できることを探し、実行し続ける姿勢はまさに“正しく、激しく”の体現者そのもの。
ブロック優勝をかけ、名門・アカクロに、熊谷工業らしい強みを生かしたラグビーで挑む。