新人早稲田
「前半は戦えた。だけど後半、立て続けにポンポンとトライを取られて、崩れてしまいました」
この日はスタンドオフとしてチームをリードした山口滉太郎ゲームキャプテンは、苦虫を嚙み潰したような表情で言葉を紡いだ。
春季大会最終戦で、帝京大学を破った早稲田大学。
その時に光ったのが、ルーズボールへの反応、セービングにこだわる『早稲田プライド』だった。
その『早稲田プライド』を新人早明戦でも体現しようと、ルーキーたちは練習から声を掛け合い準備を進めてきたというが、明治の圧力はそれ以上だった。
「ここから目の色を変えて、死ぬ気でみんなでやっていかないといけない」
いつもは穏やかな山口ゲームキャプテンが、珍しく熱い言葉を発した。
後半、闘志を失わなかった選手たちがいたことは間違いなく一つの収穫だろう。
決して目をふさぐような結果ではない。
ここから、この悔しさから始まる4年間は、きっと大きな花を咲かせる。
「やっぱり、今日はスクラム」3年後への誓い
試合後。
人一倍の責任感を表情で表したのは、左プロップの石原遼選手。
明治に粉砕されたスクラムに「やっぱり、今日はスクラムですね」と呟き、肩を落とした。
相手プロップ陣が強いことは、十分すぎるほど理解していた。なにせフロントロー全員が、高校日本代表なのだ。
「原(悠翔)も佐々木(大斗)も強い。(石原選手とともに高校日本代表として戦った)彼らの特徴をチームメイトには伝えて、準備をしていたつもりなんですけど、やっぱり重かった。ヒットの瞬間に重かったです。ゴール前で何度もスクラムを選択されて、相当自信があるんだろうなと。僕たちのスクラムが弱いと認識されて、そういう選択されたことが悔しかったです」
ヒットの瞬間。FW8人のまとまり。「完全に負けたな」という印象だったという。
まずは何よりも体重を増やさねばならぬことを痛感させられた。
「やられました」
だが、ここで終わるわけではない。この試合が、4年間の始まりだ。
自身が最上級生になった時の早明戦で勝利を手にするためには、スクラムでも明治に勝利することが絶対条件。
「一つひとつを積み重ねたい。基礎からやり直したいです。3年後、平山と押します」
平山、とはこの日メンバー外だった、高校日本代表でもある身長180cm、体重127kgの平山風希選手。
右プロップの強くて重い、すでにアカクロデビュー済みの同級生とともにスクラムを押し込むことを宣言した。
座右の銘に『百の言葉より一の結果』を掲げる石原選手。
4年時の早明戦が、はやくも待ち遠しい。
前半には50:22を決めたが「それよりも今日はスクラム」と、ひたすらスクラムでの敗戦にこだわった