80分の物語
エリア取りを重視したロングキックでスタートしたこの試合。最初の得点は、すぐに生まれた。
前半3分、日大がラインアウトモールを一気に押し込むと8番シオネ・ハラシリ選手がトライ。フィジカルの強い関東大学リーグ戦を勝ち上がってきた様を見せ、5点を先制した。
直後のキックオフ、ボールを左端でキャッチしたのは日大13番フレイザー・クワーク選手。そのまま左サイドを駆け上がると、外からフォローに来ていた14番ナサニエル・トゥポウ選手にパスを出し、30mの独走トライ。リスタートからわずか20秒程の出来事だった。
福岡工大にとって、敵陣に入ることはおろか、ボールを持つ時間すらなかなか取れない苦しい展開。外国人選手をはじめとする強力なフィジカルが武器の日大に、どうしても個の強さで突破を図られてしまう。すると工大のディフェンスは内に寄ってしまって、タッチライン側、いわゆる「外」と言われるエリアにスペースが出来てしまう。そんな外にもフィジカルの強いウイングの選手たちが控えるもんだから、日大はワンプレーで取り切ってくる。
前半40分で福岡工大が獲得した唯一にして最大のチャンスは、敵陣22m付近の1stスクラムだった。
崩れそうになりながらも何とか8番・鎌田凌選手がスクラムからボールを出すと、11番・恵良寿季選手がピッチのちょうど中央で突破を図る。しかし、一瞬とまどった。真っすぐ走ろうか、ステップを切ろうか。
その躊躇いを、日大は逃さない。がっつりとタックルに入られてしまう。なんとか繋げたボールも、インゴールまであと数10cm地点でのサポートが一瞬遅れ、ノットリリースザボールを取られてしまった。
一瞬の迷い。一瞬の遅れ。大学選手権レベルでは、その一瞬が命取りとなる。
その後もトライを重ねる日大。前半だけで日大が奪ったトライは11本。最後は前半終了のホーンと共に、8番シオネ・ハラシリ選手がグラウンディングした。
後半も、日大の勢いが止まらない。両プロップと11番を入れ替えた日大は、開始5分で2トライを奪うと、後半も計7つのトライを取ってきた。