80分の物語
先制を奪ったのは、筑波だった。
開始3分。筑波15番・松永貫汰選手がスルッと抜けると、右サイドで並走していた14番・植村陽彦選手にパス。そのまま走り抜くと、7点を決める。
一方の流通経済大は、ディフェンスをしながらも陣地は前に進んでいく出足の早さを見せる。ディフェンスで、自分たちのリズムを作る。
そして巡ってきたチャンスは、前半20分。
一体何フェーズ重ねたのだろうか、という程にゴールライン目前で幾度も体をぶつけながら、最後は右に展開し5番タマ・カペネ選手がグラウンディング。7-7、試合を振り出しに戻した。
流経のキャプテン・坂本選手はこの試合、筑波のノックオンを誘う魂の込められたタックルを見舞えば次はジャッカルに、とフランカーらしい運動量で仲間を鼓舞する。
偉大なる先輩、故・湯原祐希さんのためにも、リーグ戦優勝しようと決めた。しかしながら、東海大に敗れ結果は2位。だからこそ、いまここで負けるわけにはいかない。
更に畳みかける流経。
前半27分。マイボールスクラムを組む前、9・12・13・15番の選手たちがFW後方に集まってなにやら打ち合わせをした。そして、9番以外は全員、左のショートサイドに立ち位置を決める。
スクラムからボールを出したのは、8番。9番が内に走り込んでデコイ(おとり)になると、8番はショートサイドで待つ12番にパス。13番-15番と繋いだ先で、15番は思い切った長めのグラバーキックを蹴って走り込む。
ちょっと長すぎたか。一瞬デッドボールラインを割ってしまったようにも見えたが、判定は流経15番・河野竣太選手のトライ。12-7、流経はこの試合初めてのリードを奪う。
一方の筑波には強力なバックス陣、とりわけバックローには大学界屈指の逸材が揃っている。
11番・仁熊秀斗選手、15番・松永貫汰選手が絶妙なスペース感覚でゲインラインを切ってトライの機会をうかがうと、前半33分。12番・岡﨑航大キャプテンがハーフウェイ付近で抜け出し、内に走り込んでいた仁熊選手にパス。そのまま走り抜けて、トライ。12-14、筑波らしいトライで再びリードを奪い返し、前半を折り返した。