記憶に残るキャプテン
埼玉県立熊谷高等学校 永嶋信一郎キャプテン
埼玉県予選3回戦から登場した、熊谷高校。
実は試合の1週間程前に、学校内で新型コロナの陽性者が確認されていました。
部活動が活動停止になったことはもちろん、学校自体も休校に。1週間後に控えた初戦を戦えるかすら、分からない日々でした。
ようやく練習を再開できたのは、試合のわずか4日前のこと。
肝心の試合は、横田監督が「出来過ぎ」と評するほど力強い60分間でした。
決戦直前の一週間、まさか練習ができなくなるとは思わなかった。それどころか、試合ができるかどうかも不透明な日々だった。「しんどかった一週間を本当によく乗り切った。メンタルの強い選手たちです。」闘将が選手たちを褒めちぎる、それが全てを物語っていました。
試合後、永嶋キャプテンは言います。
「試合が出来るかも分からず、みんな不安な一週間だった。3年生が『俺たちがやる』って言ってくれたから。3年生が下級生を励ましてくれたから、頑張れました。」
同期と支え合いながら乗り越えた1週間。優勝するまで泣かないつもりだったんですけど、と泣き笑いながらこの1週間の心情を教えてくれたことが、昨日のことのように思い出されます。
試合ができるか分からない不安。目に見えない敵との闘い。どれだけのプレッシャーを、主将として背負っていたのでしょう。
若干17、8歳。乗り越えた強さを感じました。
熊谷高校はその後、準決勝で正智深谷と対戦し、同点引き分けに。決勝への出場権を懸けた抽選が行われた結果、権利を得ることはできませんでした。
抽選後暫くしてロッカールームから出てきた永嶋キャプテン。大粒の涙を流しながらインタビュースペースの前に来ると「応援ありがとうございました」と、筆者に手を差し伸べてくださいました。
ラグビー部を引退することが決まった直後に、どうしたら他者に、しかも一介の記者に対して、気を配ることができるのでしょうか。
強いキャプテンだ、と心底思いました。
この難しい2020年度にキャプテンを務めたことを誇りに、これからの人生を歩んで欲しいと願っています。