80分の物語
HISTORY of RICOH Black Rams
トライ・オブ・ザ・マッチなるものがあれば、間違いなくこれを選びたい。
「This is RUGBY」と思わずうなった、ラグビーの醍醐味が詰まったシーンだ。
激しい接点の連続に、客席からは何度も手拍子の応援が届いた
後半14分。自陣5mまで攻め込まれたリコーは、ラックから球を出そうとする神戸製鋼にプレッシャーを掛け、10番ヘイデン・パーカー選手の判断を遅らせる。
ここを勝負所とみたリコーは、何人もが塊になってパーカー選手にタックルに行くと、こぼれ出したルーズボールを確保。13番ロトアヘアアマナキ大洋選手から一気に右に展開すれば、大外に構えていた15番マット・マッガーン選手が自陣10m付近まで走り込み、そこからキックで一気に敵陣22mへ陣地を移した。
先にボールを手にしたのは神戸製鋼ながら、ここでも再び塊となってラックを捲るリコーフィフティーン。敵陣深くで、ボールを奪い返す。
10番、12番、5番と左に繋いでいき、最後は左の大外で待っていた4番ロトアヘア兄弟の兄・ポヒヴァ大和選手の手に渡ってグラウンディングした。
この間、じつに30秒。
グランドの端から端まで、右から左まで使って、一気にトライを奪う。
接点での攻防も、単純なスピード勝負も、キックによる楕円球ならではのボールの軌道も。このトライ1つで全てが堪能できる、そんなエキサイティングなトライをみせてくれた。
写真中央が3番・笹川大五選手
この試合先発を務めた15人のうち、25歳以下が5名と若いメンバー構成となったリコー。
トップリーグ初キャップを獲得した明治大卒のルーキー・笹川大五選手は、3番としてスクラムをけん引。ベンチからも「良いダイゴ!」と声を掛けられながら、後半27分に退くまでチームスローガンであるBIGGA(Back in Game, Go Again)を体現し続けた。
今シーズン初出場である11番・山村知也選手(23歳)は前半、頭部にテープを巻いて登場。何度もラックに頭を突っ込み、ディフェンス面、またアタック時のサポートとしてもチームに貢献した。
「グラウンドに立っている以上は、ベテラン選手たちとも競争してジャージを着ている。若い力をチームの中に入れて活性化したい」と語った神鳥裕之監督。
決勝トーナメントを見据え、チーム全体の底上げを狙う。
11番・山村知也選手は、セブンズでの活躍意志も持つ(セブンズ時のインタビューはこちら)
His story of Taira Main
メイン平、20歳。
センターを主ポジションに、フルバックやスタンドオフもこなすユーティリティバックスプレーヤーだ。
この日の対戦相手は、ディフェンディングチャンピオンの神戸製鋼。
日本代表のみならず、現役オールブラックスの選手たちもが先発メンバーに名を連ねた強敵だが、高校卒業後ニュージーランドで武者修行を積んだ12番は、全く怯まなかった。
ボールを持てば、力強いボールキャリーからほぼ全ての場面でゲイン。
神戸製鋼のディフェンスラインを後ろに下げながら、ポイントを作り攻撃の起点となる。
リコーのファーストトライは、そんな彼の「当たり仕事」から生まれた。
ピッチ中央付近でボールを手にしたメイン選手は、敵のディフェンスをこじ開けながら数メートル前進。そのままラックを作ると、すぐさまスクラムハーフが右に展開し15番・マット・マッガーン選手がトライ。メイン選手の数メートルのゲインが、効いた。
プレーの幅も広い。
ボールキャリアーとして当たりに行った直後、再びボールを手にすると今度は即放る。
最後尾からタッチにキックを蹴り出す場面もあれば、バックスラインに並ぶ時の大きなボディランゲージが目を引く。
全身から自信がみなぎるプレーの数々は、見ている者をいとも簡単に虜にする。
神鳥裕之監督は言った。「試合を重ねる毎に成長を感じる選手です。」
若干20歳。なにより、ルーキーイヤー。
これから猛者たちと対峙し、多くの経験を積んだ先には、桜のジャージが見えてくるはずだ。
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