「勝たせてあげたかった」とキャプテンが流した涙。|第23回全国高等学校選抜ラグビーフットボール大会 國學院大學栃木×城東

試合後、夕日に染まる中、四国代表・城東高校ラグビー部(徳島県)は涙を流した。

登録メンバーは17名。

ラグビー部員14名、うち1名怪我で出場できず。

3名は、他部から「助っ人」としてグラウンドに入ってもらった。

 

年度が替わるこの時期、珍しいことではない。

背番号6、11、16の選手たちは、ラグビーではない競技で普段部活動を行っている。

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県予選決勝ではピック&ゴーでトライを取った、6番の宇都宮大和選手。

元々ソフトボール部だが、1月からの約3ヵ月間、仲間とともにラグビーに興じた。

「僕が言うのもなんですけど、この3ヵ月でもチームが凄く成長する姿を感じられた。」

トライを取った瞬間の気持ち良さ、そして仲間の存在が、ラグビーを頑張る原動力となったという。


試合途中まで相手に全く気付かれない程、FWとして体を張った。「最後はバレたな?」と監督とともに笑う

今日が実践デビューだった選手もいる。

それまで不安そうな表情を見せていたが、グラウンドに入った瞬間ラグビー仕様に切り替わったのは成せる技。

 

トライの度に水を選手たちに運んだのは、2人のマネージャーと顧問の先生。

まさしく『全員』で誇りを持って60分を戦い抜いた。


横瀬悠乃さん(写真左)と坂東留璃さん(写真左から2番目)はともに1年生。坂東さんは城東ラグビー部のマネージャーになりたくて入学した。「みんな優しい。普段とラグビーする時とのギャップがたまらんのですよ」と顔を綻ばせる

決して、部員数が少ないことを言い訳にしない。

埼玉に入ってからの数日でも、毎日毎時間貪欲に探究し、スポンジのように吸収する姿を監督も見てきた。

 

指を差し、ノミネートして、仲間の声を復唱すること。これはつい1週間前、熊谷でリーグワンの試合を見てから意識するようになったことだ。

試合終盤、浅尾至音キャプテンが叫んだ言葉は「城東、ALL OUT!」

チーム全員が「ALL OUT!」と繰り返し、苦しい時間帯、最後のひと踏ん張りに力を込めた。

11番の選手に代わり、ウイングとして入った16番の選手がDFラインを上げ大外で抜かれた。

他の選手が「しおん、裏!」とキャプテンの名を呼べば、センターの浅尾キャプテンはそれを聞いてか聞かずか、16番の位置を確認しながら全速力で下がり、ウイングのカバーに入った。

インゴール間際で追いつけば、一旦プレーを遅らせることに成功する。

だが相手は僅か数か月前の花園で決勝に進出したチーム。

前半は10点差に抑えたが、最後はトライを重ねられてしまった。


前半8分、14番・戸田新選手がトライを決め仲間も笑顔で駆け寄る

監督に試合の出来を聞くと「80点」と答えた。

「敗戦の中にも収穫があった。そういう意味でも80点ですかね。」

だが「そうすると、5段階評価で5になっちゃうな。4ぐらいがいいな」と言うと、隣でキャプテンは笑った。

 

城東高校ラグビー部がこれほどまでに好成績を収めている理由の最大の理由は、伊達圭太監督の柔軟さと彼らに適した指導力にあるのだと実感する。

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試合後、浅尾キャプテンは目頭を押さえながら言った。

「これだけ体を張ってくれた3人に、勝たせてあげたかった。」

 

「勝ちたかった」ではない。

「勝たせてあげたかった」なのだ。

 

なぜ、接点で負けないのか。なぜ、これほどまでに体を張れるのか。

不思議に思っていると、チームトレーナーは教えてくれる。

「それは、自分より外側にはラグビー部員じゃない選手がいるから。自分の所で止めないと、彼らの方に回ってしまうから。」

 

涙の理由が、誰かのためのものであること。

誰かが、誰かのために体を張れること。

それこそがラグビーの真髄。

 

夕日のオレンジと、城東カラーのオレンジ。

あいまったきれいな橙色が映し出した涙は、花園年越しに向けた礎となる。

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