見つけたのはパラダイス。東洋大学が大学選手権へ進んだ7つの理由

理由2:齋藤キャプテン

このチームにとって最大のめぐり合わせは何か、と問われたら、真っ先にキャプテンの名を挙げよう。

何を伝えるべきか、冷静に見極める能力。

それを言葉にする力。

稀代のキャプテンシーを持ち合わせるのが、齋藤良明慈縁キャプテン(ロック、4年生)だ。

そもそも齋藤キャプテンが東洋大学に導かれたのも、運命的なものであった。

高校時代は怪我が続き、なかなか出場機会を得られず。ようやく出ることのできた試合に、たまたま訪れたのが福永監督だった。

その試合で、齋藤キャプテンは1つのタックルを決める。しかも、福永監督の目の前で。

「それで充分でした」とは福永監督。

たった一つ、目の前で繰り出されたタックルだけで、東洋に誘った。

 

齋藤キャプテンにはチームメイトも絶大な信頼を寄せる。

「小さいことを丁寧にやり切る人」とは神田選手談。

私生活では人一倍、寮生活や感染対策に気を配り、プレー面では言わずもがな。恐れず厭わず、全力でチャージに走る。

きついプレーをサボらずに、頑張ることのできるプレイヤー。

「尊敬しています」と、仲間は口を揃える。


「大学選手権では全員がキーマン。だからこそ、特別1人を挙げるならラミン(齋藤キャプテン)。ラミンがいるから大丈夫だろう、って思っています。今までやってきたことを信じれば、大丈夫。(山内智一コーチ」」

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理由3:福永監督

そんなキャプテンが「あの人はすごい」と感嘆するのは、チームを率いて5年目。福永昇三(ふくなが しょうぞう)監督である。

「人としても、ラグビー選手としても成長させてもらいました。昇三さんの教えがなかったら、こういう状況にはなっていなかった。

昇三さんは、自分たちが入学した時からこのシチュエーションを想定して、日本一になることを考えていてくれたんです。だからこれはもう、恩返ししないとなー(笑)と思っています。(齋藤キャプテン)」

チームの司令塔、土橋郁矢バイスキャプテン(スタンドオフ、4年生)も「尊敬する人」と話す。

「昇三さんには、挨拶や掃除など、当たり前のことを当たり前にやることを教わりました。間違いなく全員が尊敬していると思います。」

 

2020年から東洋でコーチを務める山内智一氏は、現役時代を三洋電機で福永監督とともに過ごした経験を持つ。

いつか一緒にやりたい、と話していた夢が叶ったのが3年前。

「僕からすると、出会った時からずっとそのままです。プレイヤー時代から変わらず、自分をしっかりと持っている人」と表現した。

「今年のチームは、これまでに作ってきた土台が水面上に現れただけ。やっていることも目指しているものも、これまでと何ら、変わっていない。(山内コーチ)」

だからこそ求心力は増し、信頼が生まれる。


「寂しいです。卒業されるのが、もう嫌なんです。今年は特に、高校の頃から知っている初めての学生たち。口説いて連れてきた子もいるんですよね。1日でも長く、一緒にやりたいです。(福永監督)」

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理由4:波動

そんな福永監督には、一つのリクルートポリシーがある。

『波動』。

上手い選手を獲るのではなく、同じ波動を生み出せる人。同じ波動で頑張れる人、に主眼に置く。

会って、話して、一つひとつのプレーを見て。感じる波動を、監督自身が大切にしている。

たった1つのタックルによって東洋へやってきた齋藤キャプテンは、福永監督と「発想、価値観の根っこが近い」と感じている。

実は今季はじめ、福永監督の考え方に対し他の選手たちが賛同できないシチュエーションが生じた、という。しかし齋藤キャプテン自身は「自分は監督と似たような感覚でいた」と振り返る。

「だからその時に思ったんです。この人は、自分の先に立っている人だな、って。」

監督とキャプテンが同じ方向を見ているからこそ、チームは一つにまとまった。

 

スクラムハーフの神田選手は、スタンドオフの土橋選手とは見ている景色が同じだと話す。

「彼とはラグビー観が一緒。行きたいタイミングが分かる時もあります。」

ゲームメーカーの2人の波動が合うからこそ、生み出される阿吽の呼吸がある。


いつも涙を流しながら応援してくれるノンメンバーもいる。そういった選手のためにも、期待を裏切らないプレーをしたい。(神田選手)

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1年生ながら今季5試合に出場。キャプテンも「大和魂の持ち主」と評するNZ出身のステファン・ヴァハフォラウ選手(フルバック、1年生)は「東洋はワンファミリーで楽しいです!」と満面の笑みを見せた。

一方で、自分が最上級生になる3年後を見据えて今から頑張らないとこのチームは強くならない、と早くも覚悟をのぞかせる。

「自分が強くならないと。みんなに伝えて、引っ張って、みんなで強くなりたい。」

同じ波動でハードワークをするからこそ、見える景色が色鮮やかになるのだ。


初めて迎える大学選手権は「ちょっと緊張している(笑)だけど楽しみです。4年生とラグビーできるのもあと少し。日本一になるために4年生たちは練習しているので、自分も頑張りたい。(ヴァハフォラウ選手)」

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