見つけたのはパラダイス。東洋大学が大学選手権へ進んだ7つの理由

理由7:恩返し

いよいよ訪れる、1年ぶり2度目の12月11日。

チームは、試合のテーマを『自分の名前で勝負する』と定めた。

相手は早稲田大学。高校時代から活躍している選手も、数多くいる。

そういう名前にのまれず、自分を、仲間を信じて。自分たちの力で戦って勝とう、との願いを込めた。


1部で戦ったことすら初めて。思い通りにいかないこともあったが、一緒に戦った仲間全員がお互いを信じて全力で戦った結果が大学選手権に繋がった。だから、もっと強い気持ちを持って。東洋らしく戦っていけたら、必ず結果は残せると信じる。(齋藤キャプテン)

遡ること3週間前、リーグ戦最終節となった立正大学戦。

勝てば大学選手権出場が決まる大事な一戦を前に、一つのキーワードが提示された。

「感謝のディフェンスをしよう」

ゴールラインの後ろには、自分たちの家族がいる。だから、このラインは絶対に守る。

そのためにも、一つ一つのタックルが「恩返しのタックル」であってほしい。


試合を重ねる毎に、東洋大学のフラッグを掲げる観客は増えている

キャプテンは言う。

「自分ひとりの力でここに居る人はいない。いろんなご縁や協力があって、今この場所でラグビーしているんです。

みんなに話を聞くと、ちょっと人生違ったらラグビーやっていなかった人、このタイミングでここにいなかった人がたくさんいます。だから、そのご縁に感謝する。支えてくれた人たちに恩返しする。

自分たちがラグビーを頑張ることが、一番の恩返しになると思っていて。そのためにラグビーやってるんだな、と感じています。」


4年生として、後輩たちに「もっともっとすごい舞台で出来るんだぞ」というメッセージを、試合を通して伝えたい。(土橋副将)

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パラダイス

コロナに翻弄された3年間だった。

グラウンド上での自主練習すら許されない日々が続いた。

そうなった時に初めて「ラグビーが出来ないことが一番辛いんだ」ということに気が付いた。

「今までだったら、『今日も練習かよ』となってしまう時もあったと思うんです。でもそれすら奪われてしまうと、普通に練習できること、普通にハードワークできることがどれだけ幸せなことか。しかも仲間と一緒に話しながらラグビーができるんですよ。

確かに、外出制限などで外に出られない日も続きました。だけど『この中に閉じ込められている』と思うのか、『この中で好きなことだけやらせてもらえている』と思うのか。そもそもここが楽園だよね、という考え方に気付いたんです。(福永監督)」

地獄の夏合宿も、大好きなラグビーを大好きな仲間と好きなだけできる。

リハビリ組だって、太陽の下、パーソナルトレーナー付きでトレーニングできるんだ。

3食ご飯が出て、友だちと暮らして、大好きなラグビーができるこの場所。

「そんな暮らしをしているのは、セレブリティぐらいだぞ」が、福永監督の口癖となった。

 

だから、今季掲げたチームスローガンは『パラダイス』。

楽園とは、苦しみや痛みのない世界。

選ばれし者だけが辿り着く場所。

「今度の秩父宮、痛みなんか感じないですよ、きっと。」

なぜなら掴み取ったこの場所は、我々にとっての楽園だから。そう、福永監督は笑った。

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1人ひとりが『パラダイス』に込められた意味を理解しているからこそ、生み出された今年の東洋大学体育会ラグビー部の大躍進。

入替戦に勝ち、1部で戦ったこの環境が既にパラダイス。

これから先は、もっとパラダイスに。

来たる12月11日、日曜日。

秩父宮ラグビー場にて、日本一を目指す戦いが幕を開ける。

「指先、足の先まで、選手たちの想いを見届けてください。(福永監督)」

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