涙の早慶戦。100回目の早慶戦|早稲田×慶應義塾|関東大学ラグビー 対抗戦Aグループ

ふたりの『副将』

早稲田大学・岡﨑颯馬

100 回目の記念試合。

だが「いつも通り、と、とにかく自分自身に言い聞かせてプレーした」と話すのは、早稲田13番・岡﨑颯馬バイスキャプテンだ。

「やることをたくさん持ち揃えるのではなく、2つか3つに絞って試合ができたことがすごく良かったなと思います。」

自らの安定したプレーの所以を語った。

国立競技場は、昨季の大学選手権決勝で大敗を喫した舞台。

だが、気負いはなかった。1年間副将としてチームを下支えし、また仲間から集めた信頼が、自信となってあらわれた。

目の前にはもう、勝負の12月、そして1月がすぐそこにやってきている。

「日々、まだまだ成長できると思う。そしての日々の練習が、試合繋がっていくと思っています。先を見ることなく、1日1日を大事に過ごしていくことが早稲田大学としての成長、そして優勝に繋がるのかなと感じています。」

荒ぶるを掴み獲るその日に向けて。そして、早稲田大学ラグビー蹴球部副将として。

毎日の歩みを、変わらず進める。

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慶應義塾大学・山田響

試合前、大きな声で塾歌を歌う選手たちがいた。

コロナ禍には決して許されなかった『肩を組み、大きな声を出すこと』。

そんな時間が長くなると、いつの間にか塾歌を歌えない部員たちが増えた。昨年の夏合宿では、塾歌を練習する時間を取ったほどだった。

そして、2023年11月。

大きな声で、国立競技場の舞台で、歴史を繋いだ。

「100回記念。国立でやらせていただくという感謝がありました。今年は特にこの早慶戦をターゲットにしてきたので、今日は絶対勝つ、という一段と強い思いをもって挑みました。」

そう話すのは、慶應義塾10番・山田響バイスキャプテンだ。

フルバックでありスタンドオフ。スクラムハーフを担った時期もある。

今年は黒黄軍団の10番を背負い、チームに勢いを与える。

圧巻は前半23分。

自らが拾い上げられる高さにバウンドするよう、裏のスペースへボールを蹴り込めば、慶應義塾にとってのファーストトライを演出。

疑いようのないスキルの高さを見せつけた。

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チームの副将を務める今年、考え方も少し変わった。

自身が出場しない練習試合であっても、出場選手たちの近くに行き、声を送るよう努める。

「Aチームだけが頑張ればいい、っていうものではないと思っています。特に慶應というチームは、全員が頑張らないと勝てません。今日、試合の前にはノンメンバーの練習がありましたが、そこでの練習も今日の試合に大きく影響するぞ、とみんな練習に取り組んでくれています。やっぱり慶應は、下のチームあってこそです。」

試合後、MIPの表彰式では感極まった姿を見せた山田選手。思いを馳せたのは、これからも続く早慶戦の未来だった。

「早稲田さんはやっぱり勝負強い。取るところでしっかり得点したり、取られてはいけないところでしっかりとディフェンスがかたくなったり。そこをどう壊すか、後輩たちには試行錯誤しながら取り組んでいって欲しいなと思います。」

国立以上に観客の入る試合は、慶應にとってはおそらくない。これに比べればなんとでもなるだろう、という思いでやってほしい。

後輩に、慶應義塾の続く100年を託した。

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ふたりの『ルーキー』

早稲田大学・松沼寛治

この日、ラストトライを締め括ったのは1年生No.8の松沼寛治選手。
同じく1年生で先発を果たした11番・矢崎由高選手からボールを受け、ステップを踏みトライまで持ち込むと、ラストパスを放った矢崎選手と笑顔で指を指し合った。
大田尾竜彦監督は「寛治のアジリティは強烈」と評価する。
松沼選手本人も「自分が武器にしてるプレーの一つ。そこを評価していただけたのはすごい嬉しいです」と笑った。
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関西出身。地上波で唯一テレビ放映されていた、早慶戦・早明戦を見ては早稲田大学への憧れを抱いた。
「その舞台にプレイヤーとして出場できたことがすごく嬉しいです。」
春は怪我が続き、アカクロデビューは対抗戦初戦。その頃にはまだ、自分に求められているプレー、そしてワセダとして必要なプレーが、まだ少し曖昧だった。
だが試合を重ねるにつれ、自信は生まれる。先輩の前でも、自ら発信できるようになってきた。それでも「求められているものは、まだもっと上」と気を緩めることはない。
次週はいよいよ対抗戦最終戦、明治大学戦だ。舞台は同じく、ここ国立競技場。
「(春に行われた)新人早明戦に出場した時には、高校日本代表で一緒にプレーしたメンバーも多く出場していました。だけどそのメンバーですら、対抗戦には出られていない様を見ると、明治大学さんはタレント揃いで層が熱いことが伺えます。今以上にもう1個スイッチを入れて、1週間準備して臨みたいと思います。」

アカクロのNo.8が、だんだんと似合うプレイヤーになってきた。

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慶應義塾・吉村隆志

初めてのタイガージャージーが早慶戦となった選手がいる。

吉村隆志選手、3年生。

身長177cm、体重107kg。U17日本代表経験を有するプロップだ。

スクラムを武器に、本郷高校から慶應義塾大学へと加入したのは今から3年前。

しかし入学後2度、前十字靭帯の手術を経験した。

1年生の10月、そして2年生の2月。

「今年の2 月に手術をすると決めた段階で、この試合をターゲットにしてきました。だからまずは早慶戦に出られたことが本当に良かったです」。満を持しての舞台だった。


たどり着いた舞台に、仲間はこぞって喜び、エールを送った。「とにかくスクラムが強い。部内マッチをしたら、AチームBチーム関係なく吉村がいる方が勝つ」との逸話を語る同級生もいるほど

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そしてもう一つ、吉村選手はある思いを秘めてこの舞台に立った。

高校の先輩でもある、HO/No.8福澤慎太郎選手(4年生)。大学1年次からタイガージャージーをまとってきた選手だが、負傷のため今季これまでは未出場となっている。

「僕が慶應に来たのも、慎太郎さんに憧れていたから。大学で一緒に試合に出よう、と約束していたのですが、いままでその目標を叶えられていません。慎太郎さんの分もこの早慶戦で一緒に戦おう、という気持ちを込めてグラウンドに立ちました。」

福澤選手は、年を越したら復帰するかもしれないという可能性を残す。

だから。

「もう一つの目標である年越しをして、慎太郎さんが帰ってくるまで自分は戦い続けたいです。」

憧れの先輩と、同じジャージーで同じ舞台に立つ。そのために、負けられない戦いを続ける。

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