拓殖大学
何度もトライを許した。
前後半合わせて、計16本。
それでも闘志を失わなかった選手がいた。
2番・古川太一選手。
2年生ながら、誰よりも声を出した。
1年次から試合に出場し続けているがゆえ、「引っ張っていくのは自分」だと強く認識する。
なかなか切り崩せなかった相手ディフェンス。
あっという間にポゼッションは奪われ、如何様にでもボールを繋がれた。
前半、32点差をつけられた時のこと。
ひと際大きい声で、叫んだ。
「ミスしても、何度でも組んだるから!何度でもスクラム組むから、継続だけはさせんどこ!」
視線の先には、4年生たちバックス陣。メッセージを込めた。
「4年生は最後。だから思い切ってやって欲しいんです。僕は、どれだけ苦しくてもあと2年ある。」
悔いを残さず出し切って欲しい、という後輩としての想いは言葉に、そして姿勢に溢れた。
チームが唯一手にしたトライは、後半18分。ペナルティからのクイックスタートでチームメイトが繋ぎ、古川選手が左外で仕留め切ったもの。
「有難かったです」と謙虚に言葉を紡いだ。
残すは入替戦。
昨年は1部昇格を目指して、今年は1部残留を目指しての80分が待ち受ける。
「去年勝てたんで。今年もあと3週間、やり切って、楽しんで頑張りたいと思います。」
役目を果たす覚悟だ。
***
試合中の円陣で、戦術面の指示を出していたのは1年生No.8のハーダス・ロスマン選手。
トライを取られた後、少し離れた所で会話をしていたバックス陣を呼び寄せ、口火を切った。
「もっとドミネートタックルしないと!」
別のトライ後には、最上級生にも物怖じすることなく意見を述べる。
なかなかトークを開始しなかったゲームキャプテンに向かって「リーダーなら、リーダーらしくリーダーシップを発揮してくれ」と語気を強めた。
そして「小さなミスでやられている」と、修正点を仲間に指示を送る。
その行動の理由について問うと「リーダーがリーダーシップを取らなかったら、誰かがやるしかない。だから僕がリーダーシップを取りました」とさも当たり前のように話した。
キャプテン経験は豊富だ。
南アフリカからやってきたロスマン選手は、9歳から18歳まで各学年におけるキャプテンを務めた。
日本でプロラグビー選手に、そして運が良ければ日本代表へ、との野望を抱き来日し、1年目。
「南アフリカとは生活スタイルが全く違います(笑)まだ慣れている途中です」と愛らしい一面ものぞかせるが、プレーは一級品。
キックオフボールを蹴り上げることもあるが、それはセブンズ経験に由来する。
またプレーできるポジションも、FW第2列・第3列、そして12番・13番にウイングと幅広い。
「チームとしては今厳しい状況ですが、来年も1部で戦えるように。入替戦頑張ります。」
プレーと姿勢で、これからもチームを牽引する。