「80分間みんなが笑顔で戦えたことが素晴らしかった」狼軍と、ニューメンバーが躍動した日本代表|リポビタンDチャレンジカップ 2021

2nd Half

シオサイア・フィフィタ選手の強烈なラインブレイクで幕を開けた後半戦。

「出たら全力で、と思っていた。」

その言葉通り、思い切りの良いランで大きなゲインをみせる。

後半躍動したのは、初めて日本代表ジャージに袖を通した選手たち。

徐々に足が止まってきたサンウルブズに対し、早いテンポでパスを放ったのは、ユース等を除きこの試合が桜のジャージデビューとなった齋藤直人選手だった。

「試合前、ホテルでのミーティングでジェイミーから『ニューメンバーはこのジャージをリスペクトしてプレーするように』と話があった。ラグビーを始めた頃から日本代表としてプレーすることを目標としていたので、このジャージを着てプレー出来たことを光栄に思いました。」

そして生まれた日本代表最初のトライ。齋藤選手のパスがアシストとなった。

「FWが良いプレッシャーを掛けていた。良い所に直人が放ってくれて、ごっつぁんのようにトライが取れました。(中村亮土選手)」

目立つニューメンバーの活躍。

力強いボールキャリーを見せたのは、小澤直輝選手。ジョセフHCが日本代表入りを切望したスーパーサラリーマンは、幾度もタックルとリロードを繰り返した。

ジャック・コーネルセン選手の運動量に、クレイグ・ミラー選手の安定感も。

パワーとスピードを兼ね備えたテビタ・タタフ選手は、左サイドを駆け抜けてトライを奪った。


トライ後、マフィ選手に抱きしめられるタタフ選手

声でチームをエナジーアップしよう。

その気持ちが伝わる程、後半響き続けた齋藤選手の声。

最後のモールトライ時には、グラウンディングの直前、頭を密集に突っ込んだ。

「とにかく勝ちたかった。」

代表初勝利は、自らのエナジーで手繰り寄せた。

 

勝ち切れたこと、後半に修正し巻き返せたことは日本代表にとっての収穫である。だがしかし、決して喜ばしい勝ち方ではない。

リーチキャプテンは改めて、欧州遠征への決意を口にした。

「ライオンズ戦で日本代表がやらなければならないのは、『Win the race』。ムービングスピードやボールキャリーなど、全ての局面で勝たなければなりません。そういう所の意識をもう一度、上げていきたい。」

日本ラグビー史上初めて迎える、ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズとの一戦に向け、準備は整った。

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時計の針が80分を回った、ラストプレーのコンバージョンキック。

サンウルブズは全員が、全力でチャージに走った。

キッカーから一番遠いサイドにいたバックスリーは、クラウチングスタートを決める。

楽しそうな、だけど真剣な表情で走り出すと、最後は笑顔で狼の遠吠えをあげた。

「80分間を戦い抜きたいという気持ち、そして静岡・エコパまでジャージを着て応援に駆けつけてくださった皆様に、最後の最後まで楽しんでプレーしている姿を伝えられたらいいなという意志でした。最後までみんなでプレーしよう、という言葉がカークキャプテンや布巻選手からあったので、みんなでプレッシャーを掛けにいきました。(竹山選手)」

後半もボールを動かし続けた山沢選手は、試合後に一言「やりたいこと、できました」と朗らかに答えた。

「チームとしてやることは少なからずあったが、一週間という短い準備期間だったので、全部が全部突き詰められていない。個々の判断にチームとして反応していくという所が、この試合のキーポイントでした。自分だけでなく、色んな選手が個々の良さを発揮した試合だったと思います。」

交代選手を迎え入れるため、ピッチサイドでも動き続けたカークキャプテンは笑顔で言った。

「80分間、みんなが笑顔で戦えたことが素晴らしかった。」

この一言が、全てだった。

After the match

試合後には、両チームの選手たちが入り混じって、あちこちで言葉が交わされた。

ベン・ガンター、ジャック・コーネルセン、長谷川崚太、坂手淳史、竹山晃暉のパナソニックグループ。

稲垣啓太と布巻峻介が真剣な表情で言葉を交わすことろに、坂手と山中亮平も合流した。

エドワード・カーク、田村優、荒井康植 、アマナキ・レレイ・マフィのキヤノン組もあれば、齋藤直人・中嶋大希の2人が熱心にスクラムハーフトークに興じる姿もあった。

日本代表の面々は、笑顔で会場を一周すると、ファンに手を振り声援に応えた。

「お客さんがこれだけ入ってラグビー出来ることは幸せなこと。温かい声援を送ってくれるのは本当に嬉しい。モチベーションも変わるし、今後もお客さんがいる中でプレーしたい。(中村亮土選手)」

来たる秋の代表シーズンには、日本でもテストマッチが行われることを願ってやまない。

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この日詰めかけた18,434人の観客に向かって、サンウルブズは最後に深く、一礼した。

先頭で誰よりも深いお辞儀をしたのは、カークキャプテン。

「ロッカールームに戻った時に改めて感じました。色んなチームから集まり、異なる文化背景を持った選手たちが笑顔でハイタッチをしている。これがサンウルブズだ、と。(That’s what the Sunwolves has always been about.)」

世界一楽しもう、という標語がよく似合うチームだった。

そして間違いなく、サンウルブズのアイデンティティを継承したチームだった。

今はまだ、近くて遠い日本代表。

だけど近い将来、きっとジャージの色が変わる選手も多いだろう。

試合後に見せた選手たちの満足気な表情は、そんな予感をも感じさせた。


プレータイムは14分程だったが、全力でキックチャージに走り気持ちを表した中嶋選手

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