記憶に残る一戦
深谷高校v浦和高校(埼玉県予選 準決勝)
花園での試合ではなく埼玉県予選から選んだのは、両校の想いをより深く取材することが出来たから、です。
今シーズンは新型コロナの影響で、高校に限らず大学も試合前後に直接お話を伺う機会が非常に限られました。
そんな中、埼玉県ラグビー協会の皆様が工夫を凝らしながら我々メディアに取材スペースを与えてくださったことで、落ち着いて、選手や監督たちの心の内を伺うことができました。これには、感謝してもしきれません。
もちろん、ベテラン記者の方々はそんな事情を物ともせず、変わらず素晴らしい記事を書いてらっしゃいます。ですが未熟な、駆け出したばかりの&rugbyにとっては「選手たちの気持ちを知る」ことが大きなエネルギーになっていたのです。
選手たちの試合に懸ける想いを知ると、その分試合への没入感が増します。より深く、より細かく。フィールド上の変化に気を配ることができました。
浦和高校にとってこの試合は、単なる準決勝ではありませんでした。
2年前の準決勝。深谷に敗れた浦和は、花園行きを逃します。昨年は悲願の花園出場を決めたものの、深谷と対戦することなく埼玉県王者まで登り詰めました。
現在の3年生たちは、2年前の1年生。当時の3年生たちが悔し涙を流す姿を間近で見た彼らは、誰に聞いても「自分たちが深谷を倒す」と答えます。
一方の深谷高校にも、長年培ってきた歴史があります。埼玉県の高校ラグビーをリードしてきた、プライドがあります。
実は昨年、16年続いた県大会決勝進出記録を途切れさせてしまいました。就任3年目の山田監督はその責任を感じながら、今シーズン強化を重ねたと言います。
2年連続で準決勝止まりにさせるわけにはいかない。2年連続で花園を逃すわけにはいかない。
そんな両校の気持ちがぶつかり合った試合は、後半ロスタイムまでどちらに転ぶか分からない非常に熱く白熱したゲーム展開に。会場の温度が3℃くらい上がったような感覚を覚えました。
ノーサイドを告げる笛が鳴った後も、いや次の試合が始まってもなお、どこか余韻が残ってたその熱さは、間違いなく今年一番でした。