ラグビーを良く知る最強の初心者軍団、いざ花園へ【川越東高校ラグビー部(埼玉代表)】

ラグビー玄人な初心者たち

関東も急に凍えるような寒さになった、12月中旬。初めての花園出場を決めた、埼玉県代表・川越東高等学校のグラウンドを訪れた。

慣れない取材続きでどんな表情をしているのかと思いきや、リラックスした雰囲気が漂う。学年関係なく練習中にも溢れる笑顔は、チーム状態が良好なことを示していた。

昨年は県大会決勝で浦和高校に敗れ、惜しくも全国大会出場を逃した川越東。自分たちの目標を明確にするため、昨年末はサニックスワールドユース予選を蹴ってまで花園遠征を選んだ。

そこで目の当たりにしたのは、自分たちを破った浦和高校の快進撃。

「来年こそは、自分たちがこの舞台に立つ」そう誓い迎えた2020年シーズン。悲願の花園行きを決めた川越東の監督・選手たちに、大舞台を目前に控えた心境を伺った。


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はじめての1ヵ月半

各方面からの取材に遠征費用の計算、通常の学校業務(三者面談など)と目の回るような日々を過ごしている望月雅之監督。グラウンドにも、最低限しかいられない。それでも「全ては花園に行けるからこそ」と前向きだ。

いわゆる”ラグビー強豪校”のように豊富なコーチ陣を擁するわけではない。この日も、指導者は望月監督のみ。それから、数人のOBが練習相手に来てくれていた。

県内屈指の進学校なため、一般入試で大学進学を目指す生徒も多い。入試を控えた3年生たちからは、練習時間を1時間半に絞るよう相談があった。きっと、他の花園出場校と比べたら異例の短さだろう。だが望月監督は「自分たちで決めなさい」と快諾。生徒たちも「おかげで、ラグビーと勉強を上手く切り替えて共に集中出来ています」と話す。

望月監督に花園での目標を伺うと「確実に1回戦を勝つ」と断言。1回戦の相手・明和県央高校(群馬県代表)とは、隣県ということもあり9月に練習試合をしている。だからこそのやり辛さはあるが、1回戦に勝利し何としても2回戦で長崎北陽台高校と戦いたいという。

「実は長崎北陽台の品川英貴監督とは、大学の同期なんです。品川監督がキャプテンで、しかも同じポジションだったので僕自身なかなか出場機会がなく悔しい思いを味わった。だから、北陽台とやりたいですね。」

何としても花園で初勝利を掴み、長年のライバル・長崎北陽台高校に挑む。

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類まれなるキャプテンシー

望月監督が絶対的な信頼を置くのが、キャプテンである江田優太選手。「キャプテンは自分の分身だと思っている」という言葉どおり、コロナ禍を二人三脚で歩んできた。

江田キャプテンは言う。「3月に全国選抜大会の中止が決定した時、もしかしたら花園もなくなってしまうかもしれない、と望月先生から言われた。だから僕は『まだ半年先のことは分からない、花園があることを信じて取り組んでいきましょう』と先生に話したことを覚えています。」

望月監督は、「あの時は江田に励まされましたね。想像以上に、江田が選手としてもキャプテンとしても伸びてくれました」と目を細める。


全国トップレベルのスピードやフィジカルの感覚を肌で感じたい。そのために、1回戦だけでなく2回戦も勝って、シード校である東海大仰星高校に挑みたい(江田優太キャプテン)

中学時代はサッカー部に所属。高校でラグビーをする予定はなかったが、望月監督から熱心な誘いを受けてボールを楕円球に持ち替えた。

入学時から体重はおよそ23㎏増量。埼玉県予選では一度体重を落としたが、全国大会でのフィジカル勝負を見据えてまた元に戻した。「この1ヵ月半、パスやキックなどの精度を高めました。チャレンジャーとして伸び伸びと、今まで自分が磨いてきたプレーを出し切りたい。ウイングとしてフィジカルには自信がある」と語る。

花園で、川越東・江田優太という名前を全国区にするために。「力強くひたむきに、チームのためにボールタッチを増やして1mでもゲインを切っていく。そして憧れである松島幸太朗選手のように『自分で試合を作っていける選手』になって、チームを勢いづけたい。」

グラウンド内ではプレーで引っ張り、一歩外に出ればムードメーカーとして。江田キャプテンは、部員61人の中心に立つ。

最強のセンター陣


DFもATも体を張り、チーム全体を活気づけられるキックを蹴りたい(住吉慶音選手)

縦横無尽に動き回る川越東を攻守で支えるのが、柴田・住吉のセンターコンビ。2人一緒に話を聞こうと声を掛ければ、「最強のセンター陣ですね!」と返してきた。

しかし、あながち間違いではない。花園では間違いなく彼らの活躍が川越東の成績に直結する。望月監督も「キーマンは住吉です」と真っすぐに答えた。「いま一番研ぎ澄まされている、集中できている感じがしますね。」

そんな住吉選手は「県大会ではイージーなペナルティをしてしまった。全国レベルだとペナルティからモールで押し切られてしまうと思うので、しっかりと規律を守りたい」と話した。そして被せるようにインサイドセンターの柴田選手は「万が一ペナルティをしてしまったとしても、次のプレーで取り返せるように。マイナスに考えるのではなく、プラスに持っていきたい」と付け加える。さすが、最強のコンビだ。

自信をもって萎縮せずにプレーをできれば、きっと結果はついてくる。


自分にはタックルしかない。ディフェンスで活躍したい(柴田恵汰選手)

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